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川野芽生さんの物語 10月17日

 

先日お知らせいたしましたオンライン展覧会

「ニコラス・カルペパーの窓」展が公開されています。

 

この展覧会では作品の出品作家ひとりと

コラムや物語をつける作家ひとりを組み合わせて

作品と文章を同時に楽しんでいただくというコンセプト。

わたしの小箱8点に、川野芽生さんが

物語ふたつを付けてくださいました。

 

▲すべて画像は展覧会より

 

川野芽生さんといえば、歌人でもあり

小説は芥川賞候補にもなった新進気鋭の作家さんです。

今回は大きな小箱(変な表現)4つには「星を仕舞う」という作品を

 

 

小さい小箱4つには「函(はこ)のかなたの世界を見る」

という作品を書いてくださいました。

 

 

不思議で深遠で少し怖くて、想像がどんどん膨らむ物語です。

わたしが作った小箱ですが、なんだかもう、どこか遠くの国の・・・

もしかしたら違う星のもののように感じるのでした。

小箱にこんな素敵な物語を添えていただけて、なんて嬉しいこと!

この展覧会を企画してくださった「桐とリボン」の方々へ

感謝申し上げます。

 

「ニコラス・カルペパーの窓」展覧会場は

下記のリンクからどうぞご覧ください。

「星を仕舞う」

「函のかなたの世界を見る」

 

 

テルマエ・イタリアエ 10月14日

 

先日イタリア人の友人と話していましたら

「ねぇ、今度あなたがイタリアに来た時には

温泉に行こうよ」と言うので、

それはもちろん喜んで!と答えました。

 

イタリア半島はご存じのように活火山もあり

ローマ時代には温泉や大衆浴場の文化もあった場所です。

今も「Terme テルメ」と呼ばれる温泉保養施設というか

スパというか・・・はイタリア全国各地にあります。

 

 

上の写真、濁ったプールのように見えますが

これはトスカーナ地方にある「バーニョ・ヴィニョーニ」

という村に残る古い温泉です。

現在は入浴禁止ですが今も温泉は湧き続けていますし

となりの建物(白いテントのある)はホテルで

ここには温泉を使ったスパがあります。

 

▲朝の様子はただの溜池風ですが

 

▲夜には湯気があがって、暖かそう・・・入ってみたい。

 

ちなみにイタリアのみならずヨーロッパの温泉は

ほぼ混浴で水着着用です。温度も低め。

ぬるいプールに泳がず浸かる、といった感じです。

 

イタリア人との会話に戻ります。

その人が「わたし、日本の温泉にも行ってみたいんだよね~。

ムフフ。でもどうしよう、緊張しちゃう!」

などと言うものですから、

内心何を緊張するのだ?と思いつつも

「そうね、日本の温泉はイタリアの人には少し熱いかもね」

と適当に答えましたら、この人ったら

「え、日本の温泉って水着を着ないんでしょう

裸で混浴なんでしょ?キャー♡」

などとひとりで喜んでいるのでした。

いったい何時の時代の話なんだい・・・?江戸時代かな。

どこで仕入れた話やら。

 

「あのねぇ、確かに裸で入りますよ。

でも男女別だからね。特別な温泉に行けば

混浴もあるけれど、お年寄りが多いんじゃないかな」

と答えましたら、「なぁんだ・・・そう・・・。」と

大変にがっかりした様子でした。

・・・あなたはいったい何を期待して緊張していたんだい?

色々想像して笑ってしまいました。

 

 

小箱とニコラス・カルペパーの窓 10月10日

 

2021年の春に初めて発表した小箱は

おかげ様で今年2024年の秋~冬には

3つのグループ展に参加、そして個展を

開催させていただけるところまでたどり着きました。

そのグループ展のひとつ目は10月13日から19日まで開催されます。

 

「植物の香りのネセセールvol.2

~ニコラス・カルペパーの窓」というタイトル。

そしてオンライン展示会という形です。

オンライン展示・・・初めてです。

わたしは下記写真7点の小箱を出品いたします。

 

 

ニコラス・カルペパーとは

17世紀イギリスの植物・薬草学者にして占星術師。

 

オンライン展覧会って・・・?と最初は戸惑ったのですが

主催の方にお話しを伺いました。

展示期間中はオンラインの会場にて作品と

同時に発表されるエッセイと共にお楽しみいただき、

会期終了後20日から展示作品は

オンラインショップにてご購入いただける、

というシステムだそうです。

 

 

今回の展示・・・ネット上ですので

つまり写真をPCやスマホ等の画面でご覧いただくのですけれど、

写真も美しいものになりますし、オンラインならではの楽しみ方も。

いつでもどこでも誰とでも、ご覧いただけます。

 

▲これらの写真はいつも自分のスマホで撮っております・・・

 

上記写真の小箱はもちろん、参加作家のみなさんの作品も

ぜひお楽しみいただければと思います。

どうぞ下記リンクのご案内をご覧ください。

よろしくお願い申し上げます。

 

植物と香りのネセセールvol.2〜ニコラス・カルペパーの窓|オンライン展覧会のご案内

 

 

黒ツバメが来た町 10月07日

 

皆さんは、黒いツバメの物語をご存じですか。

古い古いお話です。

 

 

昔々のある日、町の教会に真っ黒なツバメが巣を作りました。

町の人々は全身が黒いツバメを見たことがありませんでしたし

黒い生き物は不幸を運ぶという言い伝えを信じてしまう人もいて、

黒ツバメの巣を3つの卵ごと壊してしまいました。

 

可哀そうな黒ツバメは涙を流しながら

教会の周りをぐるぐる飛び続けました。

町の人々も教会の神父様も、その様子を毎日見ていました。

そして3日3晩飛び続けた黒ツバメは

とうとう力尽きて教会の回廊に落ちてしまったのでした。

 

回廊の壁には、ずっと昔に描かれた美しいフレスコ画がありました。

天使が楽しそうに飛んでいて、そこには森の小鳥たちも

描かれているのでした。

倒れた黒ツバメはこの絵を見上げながら

「こんな風に楽しそうに生きたかったなぁ」と思い、目を閉じました。

 

明くる日の夜明けに神父様がこの絵を見ると、

あの黒ツバメが絵の中で生き生きと

飛んでいる姿が描かれているではありませんか。

昨日までは無かったはず、不思議なことがあるものだと

絵の中に生まれ変わった黒ツバメの話はあっという間に町中に広まりました。

町の人々は絵を見ながら

「ああ、なんて可哀そうなことをしてしまったんだ」と

黒ツバメと同じように涙を流しました。

 

そうして、町の人々は今ではツバメを大切にしながら、

黒ツバメの伝説を子供たちへ伝えているのでした。

でも真っ黒なツバメは、二度とこの町に巣を作ることは

ありませんでした。

 

 

・・・なんちゃって。

こんな物語があったような無かったような。

黒ツバメの小箱、いかがでしょうか。

 

 

カフェオレの香りがする額縁は有りか無しか 10月03日

 

古典技法で金箔を貼るには

磨いた石膏地の上にボーロと呼ばれる箔下地材(粘土)を

ニカワ液で溶いたものを塗り乾かします。

そこに普通の水、つまり水道水ですけれど

水を塗って箔を乗せます。

 

そんな風にして作業をするとき

飲み物を横に置いていることがあります。

なかなかに神経を使う作業ですので、リラックスする為に。

 

▲散らかった机は見逃してください・・・

 

上の写真、右のマグカップは箔用の水

左がカフェオレです。

 

そうです、ご想像の通りでございます。

筆をカフェオレに突っ込みました。

いつかやるだろうと思っていた失態、

とうとうやりました。

 

筆を入れた瞬間に「ギャッ」と気づいたので

幸いにもカフェオレで箔を貼ることにはなりませんでした。

ほんのりとカフェオレの香り漂う

額縁になったのかもしれない・・・と想像します。

 

でもでも、牛乳はカゼインでしょ、接着剤にもなっているでしょ

もしかしてもしかしたら水より牛乳で箔を貼った方が

より丈夫に仕上がったりして!

・・・水貼りで十分頑丈ですし

虫やらカビやらが寄ってくる方が心配ですね・・・。

 

▲大切なマグカップ、欠けてしまったので道具として更に活躍。

 

古典技法の長い長い歴史の中で

同じ失敗をした職人はぜったい、いる。

なんならワインだったかもしれないし!

そんなことを考えながら、そっとカフェオレを飲み干しました。

筆を突っ込んだことはすっかり忘れていました。