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同じ気配の物たち 10月31日

 

先日ご紹介しました、昭和風味に加工した

キャンドルスタンドですが

オリジナルの商品に実はあと2種類が販売されています。

もう少し背が低くて上部のお皿が広いキャンドルスタンド

それからコンポート皿のような形のもの。

味を占めまして、のこる2種類も購入して同様に加工しました。

 

 

上の写真、左が前回に加工した背が高いものです。

中央がコンポート、右が低いキャンドルスタンドです。

どれもオリジナルの姿はナチュラルで爽やかな印象なのですが

 

▲加工前のオリジナルの姿。写真はショップよりお借りしました。

 

ふたつにもちょっと削ったり塗ったり磨いたり

コッテリ仕上げにしました。

 

 

コンポートには小さな箱なら3つ並ぶ感じ、そして

 

▲相変わらずお供え感が強い・・・

 

低いキャンドルスタンドには中くらいの箱が

すっかり収まるサイズです。

ピンクと金と茶色の組み合わせも可愛らしい。

 

 

古色をつけた金や黒との相性も良いようです。

なにせどれもこれも古色コッテリですので

発している気配が同じなのですね・・・。

 

こんな感じで今年は展示してみようと思います!

 

イタリアの人からコーヒーを取り上げたら 10月28日

 

先日、父が渡してくれた新聞の切り抜きです。

 

▲10月5日の日経新聞

 

イタリアのバールでのエスプレッソコーヒーの値段が

最大60%値上がりの恐れですって。いやはや。

 

世界中、もはやどこでも何もかも値上がり一方ですけれど

その原因は様々。コロナ禍後の変化、気候変動、戦争・・・

この記事によると「気候変動によってコーヒー豆の

国際的な供給が混乱」とあります。

豆が採れなくなっているのでしょうか。

日本のスーパーで買うコーヒー豆も高くなりましたよね。

 

イタリアの人からコーヒーを取り上げたら

もはやイタリア人では無くなってしまうかも!と思うくらい

飲む人は朝昼晩と何度も飲んでいますから

(飲まない人は全く飲まない。差が激しい。)

これは大変に切実な問題です。

 

▲お砂糖を入れて混ぜたところ。まだ飲んでいませんよ。

 

上の写真は今年2月にフィレンツェのバールで立ち飲みした時のもの。

レシートには10%の税金を含めて€1.30とあります。

日本円でおおよそ210~220円くらいです。

 

この「SCUDIERI」というバールは

ドゥオーモのすぐ傍にある観光客も沢山訪れるようなお店で、

住宅街に行けば€1.20とか、場所によっては€1なんてお店もあります。

仮に60%上がったとして€2.16、日本円で350円。

立ち飲みのエスプレッソだけで350円かぁ・・・。

た、高・・・もごもご・・・大変だぁ!

 

その後、イタリア人の友人にこの記事について聞いてみたところ

「エスプレッソ€2・・・高すぎ。

もうバールで飲まないで家だけで飲むかも。」とのこと。

(家で飲むにしても、やっぱり豆も値上げでしょうけれど。)

 

イタリアの人たちにとってエスプレッソは

パンと同じくらい「生きるために必要なもの」でしょうから、

値上がりは致し方ないにしてもせめて20~30%程度だったら

と思ってしまいました。どうなるんだろう。

 

 

ヴェロッキオ先生に許しを請うて 10月24日

 

今年もまた、この季節になりました。

暮に開催される「小さい絵」展への出品準備です。

今年はヴェロッキオ作の聖母子像から部分

天使の顔をアップで模写しました。

いつものように卵黄テンペラです。

「小さい絵」展に出しますので、絵のサイズは8.5×6センチ

名刺くらいの大きさでしょうか。

 

▲どうだどうだ、どうなんだ?影が強いような気がするが・・・

 

模写をすると毎度のことですが、止め時が分からない。

いじくり続けるとドツボにはまってどんどんずれてしまう・・・

という経験から、心身が「わぁ!もうだめだ!」と叫んだ時に筆を置く。

・・・ヴェロッキオ先生、お許し下され。

ヴェロッキオは、かのレオナルド・ダ・ヴィンチのお師匠様

そしてなんとなんと、我が額縁師匠マッシモ&パオラの

額縁店兼工房はヴェロッキオ工房の跡ということが判明しております。

そんな訳でわたくし、ヴェロッキオには勝手に親近感を持っているのです。

 

さて、今年の額縁は15世紀、ヴェロッキオが活躍していた時代に

フィレンツェで流行したプレッツェーモロスタイルです。

木地にボローニャ石膏、黒色はアクリルガッシュですが

金の模様は模写同様に卵黄テンペラで彩色しました。

古色をつけて擦り切れた印象に仕上げています。

 

▲木の形が「典型的プレッツェーモロ「」と違うけれど、模様は伝統的に。

 

オリジナル作品「聖母子と2人の天使」(ロンドン・ナショナルギャラリー所蔵)

には全面金箔の額縁が付けられていますが

わたしの模写はちょっと地味に仕立てました。

 

▲納品用に白ボール紙でカブセ箱を作ります。

 

 

ううむ、ちょっと地味すぎましたかしら・・・。

でもまぁ、金だと絵が負けそうですし(わたしの技術不足ゆえに)

まぁ良しでしょうか。

 

▲右下の青い部分は、マリア様の衣なのです。青空じゃないのですよ。

 

いままで「小さい絵」展に出して頂く模写の額縁は

絵に比べて簡単に作って(市販の額縁を使ったこともあり。)いましたが

去年からは額縁も絵と同等程度に心を込めて作ることにしました。

何枚も描いて簡単な額縁を付けていたこともありますが

1枚入魂(念か?)の方が良いのではないかしら、と

最近は思うようになりました。

 

 

ええと、まぁ何と言いますか、はい、こんな感じで。

12月に東京・池袋の東武デパート美術画廊にて開催予定の

「小さい絵」展に出品いたします。

詳細はまたご案内させてください。

 

悶えて唸りつつも、やはり卵黄テンペラの模写は楽しいのです!

 

 

令和から昭和に加工 10月21日

 

今年も11月末から12月にかけて

谷中の箱義桐箱店谷中店の皆様のお世話になりながら

展示会を開催予定なのです。

そして毎度のことながらディスプレイに悩みます。

 

なにせ小箱と言うくらいですから

ひとつひとつが小さい。

ぽっちらぽっちら並べても

「なんのこっちゃ」という印象ですし

凹凸がありません。

額縁をお盆のようにして(平面を区切って)

小箱の集団をいくつか作ったりしました。

でもやっぱり何か高さが出るものが欲しい。

軽くて小さくて、安全な什器・・・。

 

そんなことを考えておりましたら

木製のキャンドルホルダーなるものを発見しました。

パイン材ですって。

▲写真はショップからお借りしました

 

上部のお皿がφ80mmなら小箱を

ひとつ置くのにちょうど良さそう!

という事で、さっそく注文しました。

届いた商品は薄い塗装にニス仕上げで

シンプルで可愛らしい。

・・・小箱展示にはもう少し、なんというか

コッテリ感が欲しい!

 

まずはニスを溶剤で剥がし、カーブを好みに削って、

ついでに柱中央の丸部分を簡単に彫っちゃって、

色も濃くしてワックス塗って、ふぅむ・・・どうだろう?

▲白い部分が削ったところ。

 

▲ステインで着色して、お得意(笑)のワックスコテコテ仕上げ

 

 

うむ。イタリア風味は感じないけれど

古臭くはなりました。よしよし。

 

▲ちょっとお供えっぽいのは気のせいですか。

 

もしかしたら小箱よりも最中やお饅頭のほうが

似合う仕上がりかもしれませんけれど、

そしてなぜか昭和を感じますけれど、これはこれで。

昭和生まれのわたしが作るものを乗せるのですからね、

昭和風味で結構なのでございます。

・・・開き直って。

 

楽しい工作でした。展示が楽しみです!

 

 

川野芽生さんの物語 10月17日

 

先日お知らせいたしましたオンライン展覧会

「ニコラス・カルペパーの窓」展が公開されています。

 

この展覧会では作品の出品作家ひとりと

コラムや物語をつける作家ひとりを組み合わせて

作品と文章を同時に楽しんでいただくというコンセプト。

わたしの小箱8点に、川野芽生さんが

物語ふたつを付けてくださいました。

 

▲すべて画像は展覧会より

 

川野芽生さんといえば、歌人でもあり

小説は芥川賞候補にもなった新進気鋭の作家さんです。

今回は大きな小箱(変な表現)4つには「星を仕舞う」という作品を

 

 

小さい小箱4つには「函(はこ)のかなたの世界を見る」

という作品を書いてくださいました。

 

 

不思議で深遠で少し怖くて、想像がどんどん膨らむ物語です。

わたしが作った小箱ですが、なんだかもう、どこか遠くの国の・・・

もしかしたら違う星のもののように感じるのでした。

小箱にこんな素敵な物語を添えていただけて、なんて嬉しいこと!

この展覧会を企画してくださった「桐とリボン」の方々へ

感謝申し上げます。

 

「ニコラス・カルペパーの窓」展覧会場は

下記のリンクからどうぞご覧ください。

「星を仕舞う」

「函のかなたの世界を見る」

 

 

テルマエ・イタリアエ 10月14日

 

先日イタリア人の友人と話していましたら

「ねぇ、今度あなたがイタリアに来た時には

温泉に行こうよ」と言うので、

それはもちろん喜んで!と答えました。

 

イタリア半島はご存じのように活火山もあり

ローマ時代には温泉や大衆浴場の文化もあった場所です。

今も「Terme テルメ」と呼ばれる温泉保養施設というか

スパというか・・・はイタリア全国各地にあります。

 

 

上の写真、濁ったプールのように見えますが

これはトスカーナ地方にある「バーニョ・ヴィニョーニ」

という村に残る古い温泉です。

現在は入浴禁止ですが今も温泉は湧き続けていますし

となりの建物(白いテントのある)はホテルで

ここには温泉を使ったスパがあります。

 

▲朝の様子はただの溜池風ですが

 

▲夜には湯気があがって、暖かそう・・・入ってみたい。

 

ちなみにイタリアのみならずヨーロッパの温泉は

ほぼ混浴で水着着用です。温度も低め。

ぬるいプールに泳がず浸かる、といった感じです。

 

イタリア人との会話に戻ります。

その人が「わたし、日本の温泉にも行ってみたいんだよね~。

ムフフ。でもどうしよう、緊張しちゃう!」

などと言うものですから、

内心何を緊張するのだ?と思いつつも

「そうね、日本の温泉はイタリアの人には少し熱いかもね」

と適当に答えましたら、この人ったら

「え、日本の温泉って水着を着ないんでしょう

裸で混浴なんでしょ?キャー♡」

などとひとりで喜んでいるのでした。

いったい何時の時代の話なんだい・・・?江戸時代かな。

どこで仕入れた話やら。

 

「あのねぇ、確かに裸で入りますよ。

でも男女別だからね。特別な温泉に行けば

混浴もあるけれど、お年寄りが多いんじゃないかな」

と答えましたら、「なぁんだ・・・そう・・・。」と

大変にがっかりした様子でした。

・・・あなたはいったい何を期待して緊張していたんだい?

色々想像して笑ってしまいました。

 

 

小箱とニコラス・カルペパーの窓 10月10日

 

2021年の春に初めて発表した小箱は

おかげ様で今年2024年の秋~冬には

3つのグループ展に参加、そして個展を

開催させていただけるところまでたどり着きました。

そのグループ展のひとつ目は10月13日から19日まで開催されます。

 

「植物の香りのネセセールvol.2

~ニコラス・カルペパーの窓」というタイトル。

そしてオンライン展示会という形です。

オンライン展示・・・初めてです。

わたしは下記写真7点の小箱を出品いたします。

 

 

ニコラス・カルペパーとは

17世紀イギリスの植物・薬草学者にして占星術師。

 

オンライン展覧会って・・・?と最初は戸惑ったのですが

主催の方にお話しを伺いました。

展示期間中はオンラインの会場にて作品と

同時に発表されるエッセイと共にお楽しみいただき、

会期終了後20日から展示作品は

オンラインショップにてご購入いただける、

というシステムだそうです。

 

 

今回の展示・・・ネット上ですので

つまり写真をPCやスマホ等の画面でご覧いただくのですけれど、

写真も美しいものになりますし、オンラインならではの楽しみ方も。

いつでもどこでも誰とでも、ご覧いただけます。

 

▲これらの写真はいつも自分のスマホで撮っております・・・

 

上記写真の小箱はもちろん、参加作家のみなさんの作品も

ぜひお楽しみいただければと思います。

どうぞ下記リンクのご案内をご覧ください。

よろしくお願い申し上げます。

 

植物と香りのネセセールvol.2〜ニコラス・カルペパーの窓|オンライン展覧会のご案内

 

 

黒ツバメが来た町 10月07日

 

皆さんは、黒いツバメの物語をご存じですか。

古い古いお話です。

 

 

昔々のある日、町の教会に真っ黒なツバメが巣を作りました。

町の人々は全身が黒いツバメを見たことがありませんでしたし

黒い生き物は不幸を運ぶという言い伝えを信じてしまう人もいて、

黒ツバメの巣を3つの卵ごと壊してしまいました。

 

可哀そうな黒ツバメは涙を流しながら

教会の周りをぐるぐる飛び続けました。

町の人々も教会の神父様も、その様子を毎日見ていました。

そして3日3晩飛び続けた黒ツバメは

とうとう力尽きて教会の回廊に落ちてしまったのでした。

 

回廊の壁には、ずっと昔に描かれた美しいフレスコ画がありました。

天使が楽しそうに飛んでいて、そこには森の小鳥たちも

描かれているのでした。

倒れた黒ツバメはこの絵を見上げながら

「こんな風に楽しそうに生きたかったなぁ」と思い、目を閉じました。

 

明くる日の夜明けに神父様がこの絵を見ると、

あの黒ツバメが絵の中で生き生きと

飛んでいる姿が描かれているではありませんか。

昨日までは無かったはず、不思議なことがあるものだと

絵の中に生まれ変わった黒ツバメの話はあっという間に町中に広まりました。

町の人々は絵を見ながら

「ああ、なんて可哀そうなことをしてしまったんだ」と

黒ツバメと同じように涙を流しました。

 

そうして、町の人々は今ではツバメを大切にしながら、

黒ツバメの伝説を子供たちへ伝えているのでした。

でも真っ黒なツバメは、二度とこの町に巣を作ることは

ありませんでした。

 

 

・・・なんちゃって。

こんな物語があったような無かったような。

黒ツバメの小箱、いかがでしょうか。

 

 

カフェオレの香りがする額縁は有りか無しか 10月03日

 

古典技法で金箔を貼るには

磨いた石膏地の上にボーロと呼ばれる箔下地材(粘土)を

ニカワ液で溶いたものを塗り乾かします。

そこに普通の水、つまり水道水ですけれど

水を塗って箔を乗せます。

 

そんな風にして作業をするとき

飲み物を横に置いていることがあります。

なかなかに神経を使う作業ですので、リラックスする為に。

 

▲散らかった机は見逃してください・・・

 

上の写真、右のマグカップは箔用の水

左がカフェオレです。

 

そうです、ご想像の通りでございます。

筆をカフェオレに突っ込みました。

いつかやるだろうと思っていた失態、

とうとうやりました。

 

筆を入れた瞬間に「ギャッ」と気づいたので

幸いにもカフェオレで箔を貼ることにはなりませんでした。

ほんのりとカフェオレの香り漂う

額縁になったのかもしれない・・・と想像します。

 

でもでも、牛乳はカゼインでしょ、接着剤にもなっているでしょ

もしかしてもしかしたら水より牛乳で箔を貼った方が

より丈夫に仕上がったりして!

・・・水貼りで十分頑丈ですし

虫やらカビやらが寄ってくる方が心配ですね・・・。

 

▲大切なマグカップ、欠けてしまったので道具として更に活躍。

 

古典技法の長い長い歴史の中で

同じ失敗をした職人はぜったい、いる。

なんならワインだったかもしれないし!

そんなことを考えながら、そっとカフェオレを飲み干しました。

筆を突っ込んだことはすっかり忘れていました。