diario
今にして分かること 8月19日
小箱制作では、ある程度まとまった数の小箱に
石膏下地を施しています。
ボローニャ石膏を塗り重ねて乾かしておけば
いつでも思い立った時に装飾作業が出来るという流れ。
今日もウサギ膠にボローニャ石膏を溶いて石膏液を作りました。
そしてふと、フィレンツェ留学時代に
弟子入りしていた額縁工房でのことを思い出しました。
午後に工房へ行くと、同じころに来たパオラがひとこと
「あ!今日の石膏液は良い感じにできてるねぇ!」
それを聞いたマッシモが
「でしょ?午前中に作っておいたんだ。フフフ・・・」と
2人でホクホク喜んでいました。
わたしはその「良い出来」の石膏液を
混ぜたり触ったりして「へえぇ」と思いつつ
今ひとつ「何が良いのか分からない」のでした。
そして今日、小箱用に作った石膏液は、とても良い出来でした。
トロリとなめらか、少しふんわりとしている・・・
とても美味いポタージュのような。
あの時、ふたりが言っていた「良い出来」の石膏液は
きっとこんなだったのかな、と思い出していたのです。
そうして振り返ってみれば
今のわたしは当時の2人の年齢に近づいて来ました。
結局、そういう事なのですよね。
制作をずっと続けて、ああでもないこうでもないと経験しつつ考えて
ようやく積み重なって、石膏液の良し悪しだとか
「どうして今日の石膏液が良くできたか」が理解できるようになった。
しみじみと感慨にふけった午後でした。