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ふたつ並べば 4月29日

 

先日完成しました点々打ち装飾の水箔小箱です。

 

隙間時間に制作しましたので

着手から完成まで思いのほか時間がかかりました。

 

 

水箔(金と銀が半々くらいの合金)は

いつも磨き上げて終わっていたのですが

今回はじめてアンティーク調の古色仕上げにしてみました。

 

 

箔の表面を擦って下地を出し

ワックスで少し汚しをかけた仕上げなのです。

反射が抑えられてワックスの色味が加わって

落ち着いた表現になりました。

いつものキラキラ輝く美しさも良いけれど

今回の落ち着きもとても良い感じ。

なんで今まで水箔の古色仕上げをしなかったのかな。

・・・我ながら謎です。

 

さて、この小箱は実は双子というか姉妹でして

先に金箔小箱が生まれていました。

 

 

 

ふたつとも同じ模様、同じサイズです。

並べると可愛さ倍増・・・親バカですみません。

 

 

今年の秋、いくつか展覧会に参加させていただく予定です。

どこかの機会でお披露目出来たらと思っています。

その際には改めてお知らせいたしますので

どうぞ実物をご覧になりにお越しください。

 

 

誰が誰のために 4月25日

 

先日お話しましたアンティーク市「骨董グランデ」で

何に出会ったか、ご紹介させてください。

「いや別に、どこで何に出会おうがどうでも良い」ですって?

まぁまぁ、そうおっしゃらずにお付き合いください・・・。

 

わたしが骨董市で鼻息を荒くする物は

もうご想像通りなのですけれど、額縁です。

ヨーロッパの小物を扱うお店の最奥のガラスケース

その中の一番後ろにあったのがこの額縁なのです。

 

 

サイズは縦16センチ、横が10.5センチと小さいのに

それはそれは繊細な彫刻が施されています。

 

 

上部にバラと蔦の葉

 

 

下部にはグリフィンです。

バラの花ひとつが1センチに満たない。

グリフィンの顔は小指の先ほど。

楕円の窓も細い枠もすべて彫り出してあります。

 

▲裏面

 

なんというかもう、超絶技巧すぎてため息も出ないと言うか

まさに「息をのむ」。

フランスの1850~70年頃のものだとか・・・

それが本当かどうか、わたしには分かりませんけれど

はっきり言ってそんなことはどうでも良いと言うか(良くも無いけれど)

こんな額縁をカリコリと作った人がいて、

それが200年近く大切にされてきた

(残念ながら葉が一枚だけ欠けている)と言うことなのであります。

 

どんな人が作ったのかな、神経質そうな初老男性かな

でもこの細かさは天才的な新進気鋭の若者彫刻師かな。

どんな人が持っていたのかな、やっぱりブルジョワの奥様かな

それとも若くして亡くなった女性の肖像画(写真かも)を

入れるために家族が注文したのかな。

・・・とか!

相変わらず激しく妄想を繰り広げています。

それもまた楽しい。

 

 

骨董グランデの会場奥深くで、わたしは

胸ぐらをつかまれた勢いで引き寄せられたこの額縁です。

今までの人生で、何度かこうした「呼ばれた」品

(古本やら道具やら)がありますが、

逃せばもう二度と会うことも無い。

もう運命、一種の諦めを持って呆然と立ち止まってしまう。

 

だけど、そうです、この日のお財布はほぼ空っぽ。

目を泳がせているわたしの隣で家族が

「そんなに欲しいのぉぉ・・・?

じゃあ誕生日プレゼントに買ってあげるぅ。

ハッピーバースデーフフフ・・・」と買ってくれてたのでした。

ちなみにわたしの誕生日は8月です。

先取も甚だしいですけれど、とても嬉しい。

 

さて・・・この額縁を作った職人に思いを馳せて

わたしもせっせと制作に励みます!

 

 

骨董グランデ 4月22日

 

わたしの出不精もすっかり定着してしまって

同じく出不精の友人と「リハビリが必要なレベル」

と言い合う最近なのですが

どうにかこうにか出かけてきました。

行先は東京ビッグサイトで開催されました

アンティーク市「骨董グランデ」です。

今年で第五回だとか。

 

 

初日(金曜日)のお昼に入場しましたが

まだお客様はまばらで空いていて歩きやすい。

ここぞとばかりに練り歩きます。

目に入るのは小さい物ばかり。・・・性でございます。

 

▲グリ模様彫刻の御香合。素敵。

 

▲こちらは七宝でしょうか。手のひらサイズ。

 

▲細かくてもラインがキチッとしていてぶれがない。素晴らしい仕事。

 

 

午後になって少しずつ人も増えました。

そして外国語もずいぶんと聞こえてきます。

中国や韓国(朝鮮)の骨董を扱うお店

イギリスのステッキ専門店など

それぞれそのお国の方が店主、

そしてお客様も外国の方・・・インターナショナル。

 

▲オールド・バカラのデキャンタ、キラキラと美しくて見惚れます。

 

▲おもちゃのお店も。

 

トッポ・ジージョを見つけてしまった―!かわいい。

言わずと知れたイタリア出身のキャラクターです。

ウフフ♡(←トッポ・ジージョ風に)

 

この日の骨董グランデは急遽行くことにしましたので

まぁ何も買わないかな・・・買わないことにしよう!と

お財布もほぼ空っぽで出かけたのです。

でも、そういう時を狙ったかのように

出会うものなのであります。

 

何に出会ったか、次回ご披露いたします!

引っ張り失礼致します・・・!

 

 

星の指輪入れ 4月18日

 

星の指輪入れが完成しました。

成城学園前にあるアンティークショップ

「attic」さんからのご注文で制作しました。

 

 

箱義桐箱店製のアクリルガラス入り指輪ケースに

いつものように古典技法で水箔(14K金箔)を貼り磨き

星の模様を点打ちで散らしています。

 

▲加工前の指輪ケース、桐の木地です。

 

18の小部屋があって、それぞれに

黒い別珍のクッションが入っています。

難点はアクリルガラスが取り外せないこと。

カバーはしましたが石膏の作業時には不便・・・。

ううむ、でも加工を前提に作られていませんから

仕方がありませんのです。

 

 

指輪はもちろんですが、こぶりのピアスも入れられます。

 

 

お店で使っていただく箱ですので、頻繁に開け閉めすること

不特定多数の方が触ることを考えて、

箔の表面をすこし厚めにコートしました。

その効果なのか、表面がいつもよりガラス質に見えて

それも良い雰囲気に仕上がったような。

 

 

成城学園のお近くにお越しの際には

ぜひ atticさんへお立ち寄りください。

星の指輪入れもお越しをお待ちしております。

 

attic

 

引き込まれて救われて 4月15日

 

なぜだか分からないけれど

どうにもこうにも嫌な考えのループに嵌ってしまう事があります。

そして自己嫌悪したりして。

 

昨今はウェブ上にそんな時の解決法がたくさん紹介されていて

瞑想する、運動する、自分を俯瞰的に見る、

そんな自分も受け入れる等々、いくつもあります。

 

だけど、ううむ、そうじゃないんだよ・・・

と、ひねくれ者のわたしは思う訳です。

運動したって一時しのぎでしょ(大体運動嫌いである。)

そんな自己嫌悪するような自分を受け入れましょうって、

そうしたら、そんな思考回路で止まってしまうじゃないか

・・・ブツブツ。

 

▲小箱ばっかり作っている場合じゃない。

小箱に逃げている。分かっておる。

 

そんなある日、偶然に北インドのシタール音楽を聴きました。

シタールはご存じと思いますが、ギターのように

左手で弦を押さえ、右手で爪弾きます。

そしてタブラと呼ばれる太鼓(二つセット)奏者と

2人で演奏するのが多い様子。

このシタール音楽が「ぐるぐる思考」からの脱出に

大変効果があることが分かりました。

・・・わたしだけかもしれませんが。

 

全く詳しくありませんので勝手な解釈ですが、

伝統的な演奏は短くて30分、おおむね1時間と長い。

そして曲の出だしはシタールのみでジャラララ~~~ン・・・と

地底から響くようにゆっくり始まります。

曲の半分頃にタブラがこれまたゆっくり加わって

そこから徐々にスピードが上がります。

 

タブラの「タンタカタンタカ」(右手)と「ムーンムーン」(左手)が

どんどん早くになって、シタールのメロディーも競うように早く複雑になって

聴衆の心拍数もどんどん上がる。

そして全員の興奮が最高潮に達したときにジャンッ!と終わるのです。

 

この、歌詞もなく(意味付けが無く)

聞く機会が少ない音楽なのもポイントに思われます。

少しずつ興奮の渦に引き込まれる時に

徐々にわたしも変な思考から引きずり出され

何も考えずにハラハラドキドキが高まって

ダンッと曲が終わるときにはまるで「サウナから出て

水風呂に浸かって整った」ようなサッパリ爽快な気分になるのです。

 

驚くほど効果があります。・・・わたしだけかもしれませんが。

長々と説明しても、この不思議な解放感は説明できません。

YouTubeやSpotifyでも「シタール」と検索すると

沢山聞くことが出来ます。

わたしは最近のオシャレなアレンジではなくて

いわゆる巨匠の演奏を選んでいます。(モノクロ写真の演奏)

シタールの音は少し琵琶や津軽三味線のようですし

タブラも鼓のように聞こえる時があります。

 

もし気になる方がいらっしゃったら

もし聞いてみようかな、と思われたら

Ust Vilayat Khan aged 16 – rare video (youtube.com)

(↑3分ショートビデオ、英語の解説あり)

Shahid Parvez Raga Darbari (youtube.com)

Vilayat Khan – Raag Darbari (1968) (youtube.com)

上記YouTubeの演奏などぜひ。

長いですけれど、きっと引き込まれること請け合いです。

 

 

イニシャルいろいろ 4月11日

 

ご注文で制作したイニシャル小箱ふたつ

ご紹介させてください。

 

 

サイズはいちばん小さな豆小箱

指輪がひとつ斜めに入る程度のものです。

左は純金箔にKとMのモノグラム

右は水箔(14金)にMのイニシャルです。

装飾方法はそれぞれ違うのですが

 

 

純金の方はベースに蔦模様を線彫りしKとMを黒でペイント。

すこしの磨り出しをしてアンティーク調に仕上げました。

中は紺色の別珍張り。シックな雰囲気です。

 

 

水箔のMは、ベースの蔦模様は金と同様ですが

Mと蓋側面の点々をパスティリアで盛上げ装飾しました。

箔も磨き上げたままですので華やかでキラキラと輝きます。

中はすべて黒、コントラストできりりと引き締まります。

 

 

どちらもお客様と仕上げのイメージ、中の色などご相談をして作ります。

同じサイズのイニシャル小箱、と一口に言っても

箔の色、文字のフォント、装飾技法によって

また開けた時の中の色によってイメージは大きく変わります。

そんなところも楽しくなります。

 

 

記念におひとつ、いかがでしょうか。

 

 

猫とお肉とアフリカと 4月08日

 

2024年2月のフィレンツェ滞在記

相変わらず忘れたころに再登場です。

フィレンツェ滞在時には公私ともに(?)

お世話になりっぱなしの友人Lですが

今回の滞在でもLと奥さんCちゃん

そして猫のムジッチェとチョルニのお宅へお邪魔しました。

猫を愛でながらビステッカをいただくのです。

 

今回、わたしはベジタリアンCちゃん用に

ホウレン草の胡麻和えとポテトサラダを山盛り

そして頂き物のシャンパンとアマローネ

(赤ワイン)がありましたので持っていきました。

アマローネはイタリア北部ヴェネト州名産ワインだそうで

ヴェネト州出身のLは大喜び、そして

レアのステーキにはピッタリ!でございました。

シャンパンもアマローネも自分では選べない

(知識がない上に価格的にも)お酒でしたので、

大切な友人とシェア出来て何よりでした。

 

▲シャンパンと猫・・・至福の時。この子はチョルニ。

お行儀の良い女の子。でもテーブルに乗ってはいけません。

 

▲相棒のムジッチェは人懐っこい男の子、じっとしていません。

テーブルからは降りなさい~。

 

さて、今年もLが準備してくれた

美味しいお肉と記念撮影をしまして、

早速ジャジャッと焼いていただきます。

もちろんLが焼いてくれます。

Cちゃんとわたしは座りっぱなし!

 

▲満面笑顔のLをご紹介できないのが残念

 

 

フィレンツェのTボーンステーキは厚切り

それをレアで頂くのが定番です。

外側はカリッと香ばしく、中はほんのり暖かい。

そして血が滴ることはほとんどありません。

 

▲さらにもう一種

 

ステーキのつづきはイタリアンソーセージ

「サルシッチャ」です。

これは豚肉だと思うのですが、ハーブが効いていて美味しい。

そして半生・・・。

以前から不思議なのですが、イタリアでは

「生ソーセージのパニーノ」がありますし

こうして家やバーベキューでも半生で食べます。

日本では生の豚肉は絶対食べちゃダメ!と言われますが

イタリアと処理に違いがあるのか、未だに謎なまま。

そして謎なまま美味しいので食べてしまう・・・。

 

▲毎回ムジッチェが膝にやってきて、わたしはもうノックアウト。

 

「もうお腹いっぱいだ~!」と叫ぶ頃

ベストなタイミングで猫が膝に座ってくれます。

実は言葉が分かっていて、残り物をつまもうと

膝に乗っただけかもしれません・・・

でも良いのです。幸せなので。

(もちろん彼らには人間のご飯は食べさせません。)

猫の頭のにおいを嗅ぎながら食後のジントニック・・・

なんたる幸せ。

 

▲Cちゃんに抱かれて至福のチョルニ、それを見るCちゃんもうっとり。

 

女の子のチョルニはわたしには抱っこさせてくれません。

それもまた猫らしくて「くぅぅ~♡」となるポイントです。

 

LとCちゃんは2023年夏にアフリカ旅行をして

すっかりアフリカに魅了されたとか。

今年の夏も今度はボツワナに行くのだと張り切っていました。

写真を沢山見せてもらって、地平線や真っ青な空、

荒涼とした砂漠も力強いサバンナ、

そして野生動物の眼差しも美しい宿ももう別世界、

二人の興奮が伝わりました。

「一度は行った方が良いよ!

だまされたと思って行ってごらん!!」と

二人に勧められました。

・・・アフリカかぁ・・・遠い。

感覚的にも距離的にも、わたしにはとても遠い。

イタリアからアフリカって、南下すれば良いんだもんねぇ・・・

時差が無いのですもの。日本からよりずっと近い。

きっと日本人とイタリア人と

アフリカに対する感覚も違うのかもしれない、

実際イタリアの街にはアフリカ系の人たちも沢山いて

イタリア社会に馴染んでいます。

歴史的にも地理的にももっと近しいんだろうなぁ、と

酔った頭で考えていました。

 

アフリカに行く前に、まずは

南極とニューヨークと北インドに行きたい・・・

二日酔いの翌日に思っていました。

 

技術とセンス 4月04日

 

現在フィレンツェに滞在中の友人が

美しい写真を送ってくれました。

EREDI PAPERONE Bottega d’Arte の

ショーウィンドウに並ぶKANESEI小箱です。

 

 

写真のセンスと技術があると、こうも違うのですな…!

彼女の配偶者の方はフォトグラファーなので

やはりそんな所もお二人は通じているのかもしれません。

 

 

あれ、こんなにカッコいい雰囲気に展示されていたっけ?

 

 

おや、こんな美しい陰影が見えていたかな??

 

 

実物より良く見えている!?

 

 

この小箱たちが良いご縁に恵まれますよう。

もしフィレンツェにお越しがありましたらぜひ

EREDI PAPERONE Bottega d’Arte へお立ち寄りください。

 

EREDI PAPERONE Bottega d’Arte

Via del Proconsoli,26r Firenze

10::00~13:00/14:00~19:00

 

 

考えすぎだとしても 4月01日

 

3月30日の土曜日、悲しいニュースに触れました。

彫刻家の船越桂さんが肺がんで亡くなったと。

展覧会に行ったり制作過程等のDVDを観たり

お父様の船越保武さん共に尊敬する方でした。

ご冥福をお祈りいたします。

 

そしてまた、マッシモを思い出したのです。

 

フィレンツェの額縁師匠マッシモは

昨年初秋に体調を崩して呼吸が困難になり

病院で検査を受けたところ、すでに肺がんが

進んでいて手の施しようがない状態だったとのこと。

妻パオラ曰く「とてもアクティブながん」で

骨や腎臓、リンパにどんどん転移してしまって

治療を施す暇もなくあっという間に行ってしまった。

そしてパオラもまた今、呼吸がつらくて

ほぼ24時間酸素吸入をしています。

 

確かに2人ともタバコを吸っていたけれど

(パオラは今も吸い続けている!止めてくれない。)

もしかしてもしかしたら、いや可能性として

額縁製作の職業による影響もあったりして・・・?

 

 

なにせ古典技法額縁では木屑と石膏粉から

逃れることが出来ません。

そして彼らは咥えタバコでマスクなどしなかった。

仕事として朝から晩まで毎日をこの粉の中で

過ごしていたら、と考えてしまう。

船越桂さんもまた、木彫作家の毎日で

粉塵は避けられない生活だったのではないでしょうか。

 

考えすぎかもしれないし、そうではないかもしれない。

石膏粉や木屑よりタバコの方が肺にはずっと悪い事は

百も承知だけれど、ううむ。

 

 

自分の身体を守れるのは自分だけですものね。

面倒くさがっていても後悔先に立たず。

わたしはマスクをもう少し高性能のものにしようと

改めて思います。