diario
お終いのとき 3月14日
わたしの額縁師匠パオラとマッシモについては
何度もお話しているのですが、
もう少しお付き合いください。
今回のフィレンツェ滞在で一番に連絡したけれど
なかなか会うことが出来なかったパオラ。
週に1~2度、体調の良い午前中だけ動けるとのことで
滞在後半にようやく会いました。
小柄でとても痩せていて身体が強くないパオラは
昨年秋から体調を崩していて
今は酸素ボンベを携帯しつつ吸入する生活になっていました。
昨年暮に夫のマッシモが亡くなり自分の体調も限界
これが潮時なのよ、と工房を閉じることに決めたと話してくれました。
▲「CORNICI」額縁。
シャッターが閉まっている時間がほとんどになった。
今はとにかく最後の注文額縁をどうにか仕上げること
(これは無理かも・・・と言うけれど古くからのお客様だから待ってくれるはず)。
その後には大量の材料や道具、荷物を片付けること
見本として店舗に掲げていた額縁を売りきること
そして空にした「元工房」店舗を賃貸に出すこと。
店にはまだ額縁が沢山かけてあって、
でもところどころ歯が抜けたように額縁が無くなっている壁には
かつてあった額縁の跡がうっすらと残っている。
あの額縁もこの額縁も、わたしを見習いで
受け入れてくれていた頃からあって、いつも眺めていた額縁でした。
なかにはマッシモを手伝ってわたしも制作に参加した額縁もありました。
現実問題として、この大量の物の仕分け、
業者を呼んだり売ったり捨てたり、事務手続き、
それらは今のパオラには無理なのでは・・・
かといって、わたしが出来ることはほとんど何も無い。
せいぜい荷物運びゴミ捨て掃除程度の肉体労働で
そんなのは最後の最後。
パオラのひとり娘(裁判所勤務)や友人知人がすることであって
わたしが出る幕では無いのだと頭では理解しつつも
でもこの寂しさ心細さはとても辛い。
次にフィレンツェに行った時、それが今年か来年か数年先か
その時にこの工房はもう姿を変えているのだろうと覚悟をしました。
店の見本額縁はすでに予約済みのものも沢山あったので
わたしはひとつだけ小さな額縁を買うことにしました。
パオラと、今は亡きマッシモの合作、ふたりの工房の残照。