diario
怖い怖いと言いながら 8月07日
前回ご覧いただいた「ルネッサンス風」
ほぼレプリカ額縁の制作過程をご紹介いたします。
とはいえ、これまた以前ご覧いただいた
「ことわざ額縁」と同じ技法で重複しますので
もしご興味がありましたら、ご覧いただけますと嬉しいです。
さて、木地は参考にしたオリジナルの額縁と
今回額装する作品とのバランスを考えて
簡単なデザイン画を起こしてからお客様にご相談。
微調整をして最終確認をして頂いて・・・
いつものように千洲額縁さんへ木地をお願いいたしました。
▲写真は千洲額縁さんインスタよりお借りしました。
千洲額縁の職人さんは、もうわたしの魔法の玉手箱状態です。
図面と希望を伝えると形にして送って下さるのですから!
そしていつものように下膠(ウサギ膠1:水10)を塗り
ボローニャ石膏液を塗り重ね、乾きましたら紙やすりで磨きます。
▲地獄の磨き(大げさ)を終えたところ。ふぃ~
次はこれまたいつも通り
魚膠で溶いた赤色ボーロを塗り重ねまして、純金箔を貼ります。
▲側面も金ぴか。これからメノウで磨きます。
参考にしましたルネッサンス時代に作られた額縁
もちろん実物を見たことはありません。
お客様から送って頂いた数枚の写真を拡大印刷して凝視して
下描きを「ああでもないこうでもない」と繰り返して数日。
ようやくトレーシングペーパーに転写しまして
お客様にもご確認いただき
▲トレペを載せたところ。まだ完成図には程遠い。
さて、問題はここからでございます。
オリジナルの額縁、当時の諸々を考えると
恐らく模様は黒ベースの可能性が高いんじゃないかな、と思いつつ
お客様のご希望は「オリジナルは深緑に見える。
作品との相性も良いから深緑で。」とのご注文です。
オリジナルの額縁を見ることは叶わず問い合わせも難しい。
問題は、わたしにはどうにもこうにも緑に見えない・・・ということ。
見えない色を再現する難しさよ。
色の認識は人それぞれの感覚ですし
深緑で製作、これはもう全く異存ありません。
額縁職人としての微々たるプライドをかけまして
経験を総動員して「古色加工後の完成時に黒寄りの深緑になる」を
作る覚悟を決めたのでございます。
怖い!でもやるしかない。
色を作って塗って、乾かしてから
古色用ワックスを塗って確認して
という実験を繰り返しまして、
再度覚悟を決めまして(大げさですね。しつこくてすみません。)
▲こんな緑色を卵黄テンペラで塗りました。
▲グラッフィート(模様の搔き落とし)を終えたところ。
実際の緑色はもっと明るかったのですが
写真に撮ると暗くなりました。
いやはや・・・息切れします。日々恐怖との闘いでした。
何が怖い?そりゃ失敗です。
「こんな色になるはずじゃなかった!」とか。ヒィィ。
▲ZECCHI のシェラックニスを塗ってから、いよいよ古色付け。
上の写真は古色付け初日
まだまだ金の輝きも緑の色も鮮やかでした。
これから更にワックスや塗料、パウダーを重ねては拭き
重ねては磨いて、完成しました。
▲コテッと古色仕上げ
それにしても「大変だった怖かった」と書き連ねるほどに
職人として自信がないと自白しているようですね・・・
でもまぁ、わたしの製作の現実はこんな感じです。