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ことわざ額縁を作る 6月08日

 

ずいぶんと昔から文字を装飾に使うことが好きです。

額縁や小箱にラテン語の文章を入れたりしております。

 

今回は版画作品用の額縁(ご注文仕事ではなく

自分のため)を作りました。

この額縁の制作過程をご紹介します。

ご興味を持っていただけたらと思います・・・。

 

▲完成した額縁、名前は「ことわざ額縁」にしました。

 

ヨーロッパの1500年代には聖書の一節などを装飾に入れた額縁が作られ

聖母子像などが額装されていました。

そんなイメージで製作開始・・・ですが

 

わたしの額縁に聖書の一節は入れられません。

そして文字はあくまでも装飾として入れたいのです。

あまり意味付けしないように・・・つまり英語などではなく

普通の日本の方が見ても「一言も意味が分からない文章」でありたい。

そんな訳でして、ピーテル・ブリューゲルの作品

「ネーデルランドのことわざ」と言う作品から

古いネーデルランド(オランダ)のことわざを

ふたつ選んで入れることにしました。

 

▲P・ブリューゲル「ネーデルランドの諺」 1559年 写真はwikipedia より

 

やれ、前置きが長い・・・

いつものように千洲額縁さんに木地をお願いして

ボローニャ石膏を塗り磨き文字装飾を下描きをしたら

線彫り(線刻)します。

 

▲ことわざ文字をカーボン紙で写す

 

そして赤色ボーロに純金箔を水押し、メノウ棒で磨きます。

箔を貼らない部分にも下色として赤色ボーロを塗っておきます。

 

▲磨き終わり、さていよいよグラッフィート装飾準備です。

 

今回の額縁は、グラッフィートという技法で装飾します。

純金箔を貼り磨いた上にテンペラ絵の具を塗り

乾いた絵具をニードル(竹串等)で搔き落として

下の金を出す、というものです。

 

▲全面に黒いテンペラを塗りました。しばし乾かす。

 

今回はアイボリーブラックを卵黄メディウムで溶きました。

金箔のはじき止めに少しだけ牛の胆汁も入れます。

アイボリーブラックの顔料は、留学当時にゼッキ

(ZZECCHI フィレンツェにある古典技法の画材店)で

量り売りにて購入した大切な大切な顔料を使いました。

ずっと仕舞い込んでいましたが、使わないのももったいないですからね。

 

クシャナ殿下風に「今使わずに、いつ使うのだ!」と

ひとりで叫びまして(分かって下さる方はいらっしゃるはず)大奮発。

この額縁一枚に大匙3くらいの顔料を消費しました。

 

さて、翌日にいよいよグラッフィート、つまり搔き落とし作業開始です。

 

▲うっすらと線彫りした跡が見えるので、この線を追う。

 

一般的には線彫りはせずテンペラの上に下描きを転写して掻くのですが

わたしは線彫りをしたほうがほんのりとした立体感が出るので好んでいます。

 

コリコリと搔き落とし、失敗したら絵の具を塗って補彩して、さて。

 

 

グラッフィート作業完了でございます。

黒も金もまだ生々しいですが、これからアンティーク風

それも1500年代風にボロボロ加工をいたします。

 

長くなりましたので続きます!