diario
古典技法額縁の見本を作る ミッショーネ 11月28日
さて、最後の技法紹介です。
Atelier LAPIS の見本額縁制作も
大詰め、ミッショーネをします。
ミッショーネ missione
イタリア語の辞書を引きますと
「使者・布教」とありますが
この技法がなぜ missione と
呼ばれるのか・・・知りません。
いつか調べたいと思います。
古典技法での missione ミッショーネ
金銀等の箔を糊で貼り付ける技法です。
今回は水性の箔用糊で模様を描き
半乾きの時に純金箔を載せて押さえ、
乾いたところで余分な箔を払い落として
模様を出します。
前回 塗った黒いテンペラ絵具の上に
模様をカーボン紙で転写します。
上写真の右に見えている白い液体がミッショーネ液。
ルネッサンス当時は乾性油を使いましたが
今回は水性、薄い水溶きボンドのような
糊を使います。乾くと透明になります。
▲純金箔を糊の上にふんわりと乗せる。
必死で描いて忘れてしまい糊で描いた写真が無くて
残念なのですが、白い糊が半乾きで透明になった頃
タイミングを見計らって箔を載せます。
早すぎると箔に皺が寄ったり模様がつぶれたり、
遅すぎると乾いてしまい箔が貼り付きません。
コットンで優しく押さえた後、丸一日乾かして
柔らかい筆で金箔を払うと
下から模様が出てきます。
この箔払いがとても楽しいのです。
ミッショーネ装飾の完成です。
綺麗な紙を敷いておいて、払った金箔は
大切に瓶に貯めておきます。
沢山貯まったら金泥制作などに使いましょう。
なかなか貯まらないので先は長い!
おじさんはマッチョである。 11月24日
箱義谷中店の展示会でのこと。
友人の友人(男性)がじっくり見てくださり
ぽつりと仰いました。
「ちらほらとマッチョな箱もありますね」と。
マッチョな小箱?
▲これらがいわゆる「マッチョな小箱」代表
どうやらそれは、わたしが以前から
「おじさん風」と表現していた
小箱なのでした。
▲そして選んでくださるのは女性が多い・・・
マッチョ好きな女性たち?!
そうか、なるほど!
これをマッチョなデザインと表現するのか!
そんな表現もあるんだなぁ・・・と
その場にいらした方々と盛り上がりました。
「マッチョ」と「おじさん」と
表現はそれぞれですけれど
やっぱり「感じること」はだいたい
同じなんだな、と面白く思いました。
おじさんはマッチョなのであります。
仕事の時間 2 11月21日
先日の雨の日に、我が家の座敷で
額縁の撮影大会が開かれました。
もちろんこれは仕事の一環でして
カメラマンさんと編集の方が
取り仕切ってくださいました。
狭い座敷が急きょスタジオと化し
わたしは面白くて面白くて、
でも邪魔をしないように片隅で
体育座りをして見学しました。
▲セッティング風景。三脚の足にはすべてソックスが。
畳に傷を付けないように・・・ありがとうございます。
ライトの角度、距離、暗幕の有無
ストロボの数、カメラの設定・・・
微調整に見えても撮影された写真の
明らかな違いがこれまた面白すぎて
プロの仕事に感嘆し続けました。
▲額縁の下にアクリルキューブを入れて高くすると
影が遠く柔らかくなるのですって!
今回は5枚の額縁と小箱をまとめて3パターン。
設営から終了まで4時間かかり
カメラマンさんの集中力にこれまた感嘆でした。
▲撮影を行列して待つ額縁たち。
心なしかウキウキして見える。
撮影していただいた写真は・・・もう本当に
「これ、本当にこの額縁ですか?!」
「この額縁、こんなに綺麗だったっけ?!」
あるいは
「細密に撮れて彫りの粗が見える!ひぇぇ」
「小箱ったらカーワイーイ♡」
という驚きと感動でした。
▲前回の打ち合わせ時に仮撮りしたもの(右の書面)を
ふまえて、タブレットで撮影した写真をその場で確認。
デジタルの進歩にも驚き。
いやぁ~・・・びっくり。
一事が万事って、これですね。
完成した写真を拝見すれば、
ここに至るまでの準備も精神力も、人柄までも
ひとつひとつが結果に繋がるのが分かる。
穏やかに冗談も言いながら、でも
淡々と着実に撮影を進めてくださいました。
これらの写真は来年ご覧いただける予定です。
乞うご期待です!
松屋銀座「色のカタチ」ありがとうございました 11月17日
11月9日から1週間開催いたしました
松屋銀座での催事「色のカタチ」は
おととい15日夕方に無事終了いたしました。
お越しくださった皆さま
そしてお買い上げくださった方々
ありがとうございました。
このイベントで今年の「ひとしきり」がつきました。
まだ11月半ば、ちょっと気が早いですね。
でももうクリスマスのイルミネーションや
BGMも始まっていますから、
あっという間に除夜の鐘でございましょう・・・。
ふり返れば今年3月に大阪の
阪急うめだ本店での催事を皮切りに
小箱を担いで巡業(ちょっと違いますかな)を開始しましたが
5月に銀座松屋「和の座」催事
9月に箱義谷中店で一人展示会、
そして11月に松屋銀座の新しいスペース
「遊びのギャラリー」での催事参加と
怒涛の小箱巡業と相成りました。
小箱をガサゴソ作る合間に額縁も作り
テンペラ模写も少し描き、
月曜にはアトリエLAPISの講師をして
TokyoConservationの絵画修復の助手も続け・・・
おかげ様で近年稀に見る充実ぶりでした。
始めたらきりない程に心配事は尽きませんが
いま自分に出来る事とやりたい事を
「やってみようじゃないか!」と行動できたようです。
松屋の帰り道、小さな打ち上げをしました。
寒空でしたが提灯の並ぶ外席に座りこんで長話を。
来し方行く末、心の持ちよう、
乙女座と山羊座の関係と謎が深まり、
お悩み相談も少し(いや沢山かな)して
「催事のひとしきり」と同時に
「心のひとしきり」もした夜でした。
爽やかな疲れと晴れやかな気持ちで
今日からまた進みます。
ありがとうございました。
秋の実の小箱 11月14日
豆小箱
ただでさえ「小箱」ですのに
輪をかけて小さい豆小箱ですが
その小ささ故に装飾するのも特に楽しいものです。
中世の模様をパスティリア(石膏盛り上げ)で入れて
赤ボーロに純金箔を水押し
今回は古色を付けてみました。
パスティリアで入れた丸い点々が
秋の実のように見えて、
なかなか気に入っております。
外側寸法:35×35×23mm
大切な指輪をひとつ入れて。
いかがでしょうか。
展示会「色のカタチ」に出品しております。
明日15日夕方5時までの開催
ぜひお立ち寄りくださいませ。
「色のカタチ」ito to ki no katachi
松屋銀座 7階 遊びのギャラリー1979
11月9日(水)~11月15日(火)
初日12時開場
最終日午後5時閉場
星輪違文小箱 11月10日
「たまには作ろう東洋風」と
謎のスローガンを掲げておりますが
先日の屈輪文につづきまして
こちらの小箱は輪違文様です。
輪違とは輪を交差させた模様でして
一番見かけるのは「花輪違(花七宝)」でしょうか。
輪の中央のひし形部分に花が描かれているもの。
この小箱には花の代わりに星を入れました。
言うなれば「星輪違」「星七宝」。
星の中央の点はパスティリアで
ぽちっと盛り上がっています。
▲手のひらに乗るサイズ。
可愛くできたかな、と思いつつも
星のせいで純和風とも言えない雰囲気。
それもまぁ・・・模索中ということにします。
それにしても最近は黒やグレー色の登場が多いのですが
と言うのも、どうやら華やか系より
モノトーンに近かったりシックな色使いの方が
人気がある・・・との分析。(当社比。なんちゃって。)
ふり返るとピンクや水色が多かったかもしれません。
しばらくモノトーン・シック路線も
これまた模索してみようと思います。
昨日9日から松屋銀座7階で開催の
「色のカタチ」に出品しております。
どうぞ秋の銀座へお越しくださいませ。
わたしは下記のスケジュールで店頭におります。
9日(水)16:00~20:00
10日(木)休
11日(金)12:00~17:00
12日(土)10:00~15:00
13日(日)10:00~15:00
14日(月)休
15日(火)10:00~17:00
「色のカタチ」ito to ki no katachi
松屋銀座 7階 遊びのギャラリー1979
11月9日(水)~11月15日(火)
初日12時開場
最終日午後5時閉場
竪琴をひく人のとなりに 11月07日
イタリアのシチリア島には
ローマ時代(4世紀頃)に建てられた
villa romana del casale
ヴィッラ ロマーナ デル カザーレ という
とても美しい屋敷跡があります。
直訳すると・・・
「ローマ時代の農村邸宅」でしょうか。
それはそれは凝った精密なモザイクがあり
19世紀に発掘されて今も美しく保存されています。
行ったことありませんが。
・・・行きたいなぁ。遠いなぁ。
今日完成した小箱はこのヴィッラの
床モザイク模様をお借りしました。
組紐模様です。
▲桐木地小箱にボローニャ石膏、パスティリアで装飾
赤色ボーロに純金箔水押し、古色仕上げ
モザイクは色とりどりで華やかですが
小箱は古典技法の純金箔の古色仕上げで。
▲外側寸法:45×45×20mm
▲ヴィッラの床モザイク。写真はお借りしました。
4世紀イタリアに、今と同じような
古典技法が存在していたかというと
おそらく未だ無かったと思いますけれど、
トーガを着て優雅に海を眺めながら竪琴をひく人、
その横にこの小箱・・・
などと想像してしまうのでした。
明後日水曜から松屋銀座7階で開催の
「色のカタチ」に出品いたします。
どうぞ秋の銀座へお越しくださいませ。
お待ちしております。
わたしは下記のスケジュールで店頭におります。
9日(水)16:00~20:00
10日(木)休
11日(金)12:00~17:00
12日(土)10:00~15:00
13日(日)10:00~15:00
14日(月)休
15日(火)10:00~17:00
「色のカタチ」ito to ki no katachi
松屋銀座 7階 遊びのギャラリー1979
11月9日(水)~11月15日(火)
初日12時開場
最終日午後5時閉場
古典技法額縁の作り方見本を作る グラッフィート 11月03日
しばらく間が空きましたが
市が尾の古典技法アトリエの企画で
制作中の「見本額縁」つづきです。
今日は右辺の装飾をします。
graffito グラッフィートと言いまして、
磨き上げた金箔の上に卵黄テンペラを塗り、
細い棒で絵具を搔き落として
下の金箔を出す、という技法です。
▲額縁右辺(右長手)にテンペラを塗ります。
▲弾き止めオックスゴール、卵黄メディウム
アイボリーブラックの顔料と水を混ぜて
テンペラ絵具を作ります。
磨き上げた金箔は絵具をはじきますので
オックスゴールは欠かせません。
オックスゴール、牛の胆汁でございます・・・
界面活性剤的なもの。
ちなみにグラッフィートは右長手の上半分。
下半分はまた違う装飾技法を入れますが
ひとまず一緒に黒に塗ります。
さてさて、テンペラ絵具が乾きましたら
いよいよ「グラッフィート」です。
金箔を傷つけないように竹串や木の細い棒が
使われるのが一般的なのですけれど
わたしは鉄筆(ニードル)を使うのが
好みなのです。これは職人それぞれで。
▲カリコリ削ります。
イタリア語 graffio とは「引っ掻くこと」
そこから graffito 「掻き絵」を指しています。
ちょっと間違えてもテンペラ絵具で補彩可能。
搔き落とした絵具を柔らかい筆で掃除して
ひとまず完成です。
今回は金箔地に予め模様の線を入れましたが
入れない場合の方が多いと思います。
線があると書き落としが楽。
線が無ければ絵具の上に模様を転写します。
その方が繊細な表現ができるように感じます。