diario
そのものの価値を決めるのは誰 11月22日
額縁の修理修復、絵画の修復の場で
お客様からのご依頼品を拝見したとき
「これはもうあきらめても良いのでは・・・?」
と思われるようなことが、たまにあります。
ご購入したであろう金額よりも
修理修復にかかる金額がうんと高い、
美術的価値があるように思えない、
言ってしまえば
「お金を払ってまで直す価値があるか?」
と、思われるようなもの。
でも、これははっきり言って
余計なお世話なのであります。
そのものの価値は、そのお客様が
感じるものであって、わたしは知る由もない。
持ち主(ご依頼主)にとっては
対価を払ってでも直して大切にしたいもの
であるからこそ、ご相談下さっている・・・
それをつい忘れてしまいそうに
なることもあります。
そんな時に思い出すのは、もう随分前に
Tokyo Conservation 絵画修復部門に
ご相談があった作品です。
紙をセロテープで何枚も貼りつないだ
大きな絵で、落書きの様なかんじ。
紙もテープも酸化して、かなりぼろぼろ。
修復には時間と手間がかかりそうです。
すべて職人作業ですから見積価格は
かなり高額になってしまったのでした。
「きっと見積もりは通らないだろう」
とわたしは内心思っていたのですが
見積価格は通り、ぼろぼろだった絵は
とてもきれいに蘇りました。
あとで聞いたところによりますと
この絵は亡くなったご家族が描いたものとか。
どんなに安価な紙に書かれた
名も無い人の絵だろうと、
大切にしたい人にとっては宝ものです。
そうした「宝もの」を託される仕事
と言うことを折に触れて思い出して
作業しなければ・・・と思っています。