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小箱3 7月29日

 

今日ご覧いただく小箱ふたつ

どちらも古典技法で

純金箔を水押ししていますが

仕上げを変えています。

 

 

左のイニシャルHの仕上げは

古典技法王道(?)で

メノウ磨き後に磨り出し、

ワックスでアンティーク風に。

 

右のひとまわり大きな小箱は

メノウ磨きをしてツヤピカに

輝かせた後、艶消しラッカーを。

すりガラスの向こうから

金の輝きが感じられるような

「半艶消し」になって

クリーンで涼しげな雰囲気です。

 

外側寸法:左小箱 61×53×33mm

     右小箱 89×58×39mm

 

どちらがお好みですか?

 

Firenze 2020-22 7月26日

 

フィレンツェ右岸にある

オニッサンティ教会ご紹介のつづきです。

ルネッサンス本場のフィレンツェにあって

珍しくバロック様式のエレガントな教会は

天井画もさすがバロックです。

▲18世紀の天井画はだまし絵になっている。

 円柱もテラスもすべて絵。

 本当にそこにあるみたい!

 

さて、この教会の宝物のひとつは

なんと言ってもこちら

ジョットの十字架磔刑でしょう。

 

 

ラピスラズリの青が鮮烈で

まるで先日完成したばかりのようです。

でも14世紀初頭の作品なのです。

設置された場所や照明の効果もあって

劇的な演出で観る者の心を揺さぶります。

 

完成当時、明日の食事をこと欠くような人々が

これを目の当たりにした時の驚愕と

神様に対する畏怖は、きっと現代のわたし達の

想像を絶するものがあるのでしょう。

打ちのめされるような

身も心もすべて委ねてしまうような。

自分の隣にイエス様を感じ、頭上に神様を

感じることを可能にする鍵のようなもの。

 

鑑賞後もなんだか呆然としてしまう。

ひょいっとあっけなく心を

持って行かれてしまったような感覚が

しばらく残っていました。

 

ギルランダイオの最後の晩餐が

見られなかったのは心残りですが

このジョット作品の感動を得られたので

心ここにあらずであっても

爽やかな気持ちで教会を後にしました。

 

フィレンツェでくり返し訪れる場所が

またひとつ増えました。

 

 

何か秘密があるのかい? 7月22日

 

夜、夢は見ますか。

 

わたしは幼いころからずっと

毎晩見る夢をひとつは覚えています。

夢を見る理由って脳の整理だとか

潜在意識の表れとか聞きますけれど

単純に自分が見る夢が面白くて

あるいは恐ろしすぎて

自分でも理解できていない内面が

大きいのだな、としみじみ思います。

 

 

今朝見た夢も、なかなか変でした。

自分は高校生、でも意識は現在のもの、

そしてクラスメートも現在の友人知人。

ポテトチップスを貪り食べるのです。

我ながらものすごい勢いでした。

どれだけポテチが食べたかったのだ。

そしてはっと気づいたら賞味期限が先月。

一緒に食べている友人に見られないように

必死でパッケージを隠す!・・・という

バカバカしいような意味深なような

夢でした。

 

なにかわたしの秘密が暴露される

などという暗示でないことを祈るばかり。

 

 

sansovino-2 7月19日

 

先日、白木を茶色に塗った双子の片割れ

サンソヴィーノは無事完成いたしました。

 

 

先に完成した「金&黒」と今回の「茶」を

並べてみると、同じサイズとデザインでも

仕上げが違うとこれだけ変わる、という

驚きと楽しみが見えました。

 

▲サンソヴィーノ額縁とは、16世紀イタリアで

流行したスタイルです。渦巻きとウロコが特徴。

 

 

シンプルながら悪くない・・・と

思ったりなんかして。

いかがでしょうか。

 

「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。

どうぞご覧下さい。

 

 

額縁の作り方 35 布貼りマットをつくる 7月15日

 

額縁の作り方の番外編と言いましょうか、

今日は額縁本体ではなくて

マットの作り方のおはなしです。

 

紙の作品—デッサンやパステル、水彩、

写真など―を額縁に納める場合には

額縁のガラスと接しないように

作品を固定する必要があります。

マット(イタリアではなぜか仏語

パスパルトゥPassepartout と呼ぶ)で

作品を挟んで固定し、額縁に入れます。

 

最近は額縁店や画材店で無酸の紙ボードで

すぐに作ってもらうことができますが

今回はラワンの合板を使って自分で作ります。

と言うのも、変形で余白もほぼ無いデッサン

だからなのです。

 

今回はラワンの4mm合板を使います。

本来なら合板はマットに相応しくない

(接着剤などの影響が考えられる)かも

しれませんが、この作品はわたし自身の

持ち物であること、作品に影響等変化が

見られそうな場合にはすぐに対応できること、

経過観察も兼ねて・・・と言うことで

今回はラワン合板を使います。

 

▲まずは作品に合わせて窓の形をトレペに取ります。

 今回はイタリアの古い鉛筆デッサンを額装します。

 

▲そしてラワン合板に転写して形にくり抜きます。

 

▲線をととのえて、エッジを丸く削ります。

 

今回は薄い麻布を板に貼り込みます。

下の板の色が透けて見えますので

板にはアクリル絵の具で下色を塗りました。

▲薄いつや消しグレーに彩色

 

▲麻布にしっかりアイロンをかけてから

 貼り込み、のり代を残して布を切ります。

 

さて、経過観察するとはいえ

合板の影響は減らしたいのです。

作品がじかに接する部分には

アルミで裏打ちされた無酸紙の

シーリングテープでカバーしましょう。

▲裏側をととのえます。使ったのは

 スプレー糊とスティック糊。

 左の箱はシーリングテープです。

 

▲テープ貼り込み完了

 

▲作品をのせてみました。

 接するのはテープの部分のみ。

 

この後は、作品を中性紙ボードに

ヒンジで固定して合板でサンドイッチ。

写真撮影を忘れてしまいました・・・。

ヒンジ固定については下記のリンク

(株)絵画保存研究所さんの

「マットとヒンジ」をご覧ください!

 

 

長々したうえに尻切れトンボで恐縮ですが

これにてマットは完成でございます。

変形の窓が必要、好みの布を使いたい

などなどの場合にはご参考に。

ちなみに合板ではなく中性紙ボードを

くり抜いて布を貼っても制作可能です。

 

 

Firenze 2020-21 7月12日

 

フィレンツェのアルノ川沿い

ポンテ・ヴェッキオから下流方向に

すこし行った先にある教会

Chiesa di San Salvatore in Ognissanti

オニッサンティ教会があります。

 

町の中心部から少し離れていることもあって

留学中も含めて一度も訪れていない教会。

ですが、それはそれは素晴らしい教会で、

返す返すもなぜ今まで行かなかったのかと

自分を不思議に思うばかりです。

アルノ川右岸をてくてく歩く途中

風船お兄さん発見!幸先が良さそうです。

 

正面ファサードはバロック様式ですが

派手さが無く女性的でエレガントなのが

さすがフィレンツェ・・・なんちゃって。

 

 

内部は想像以上の装飾で、暗く重厚です。

目当てだったギルランダイオのフレスコ画

「最後の晩餐」がある部屋は残念ながら

午前中のみの公開で見られず。ですが

本で何度も繰り返し見ていたフレスコ画2点を

しつこくじっくり鑑賞できました。

どちらも保存修復されて色鮮やかで美しい。

 

ギルランダイオ「書斎の聖ジローラモ」

 

ボッティチェリ「書斎の聖アゴスティーノ」

ピンボケ!すみません。

それにしても教会内部が暗い・・・

 

この教会が有名な理由のひとつは

ボッティチェリのお墓があることです。

思えば大学生の頃、ボッティチェリに嵌り

フィレンツェを夢見るようになったのでした。

 

奥にある礼拝堂の角にあるお墓。

案内板が無ければ分からないような

質素なお墓なのが意外だけど、

彼の寂しい晩年を考えると理解できるような気も。

 

ボッティチェリに導かれて

フィレンツェとのご縁が持てたわたしです。

ボッちゃん(と親しみを込めて呼んでいる)

どうもありがとう・・・と感慨深くおもいました。

 

オニッサンティ教会、つづきます。

 

 

小箱2 7月08日

 

先日の「小箱1」に続きまして

「小箱2」シリーズを

ご紹介させてください。

前回のシリーズより

ひとまわり小さいくて

薄手のサイズです。

木地にボローニャ石膏

パスティリア(石膏盛り上げ)と

点刻印の装飾

赤色ボーロに純金箔水押し

メノウ磨き、ワックスによる

アンティーク仕上げ

蓋裏と内部に布貼り

 

 

外側寸法:75×48×22mm

2€コインと指輪をひとつ。

 

 

思い出のものをしまうために

いかがでしょうか。

 

 

もうひとつの sansovino 7月05日

 

2020年秋に作った双子のサンソヴィーノ額縁。

ひとつは石膏を塗って純金箔と黒で仕上げて

サンソヴィーノらしい強烈額縁になりました。

そして片割れのもうひとつは白木のまま放置し、

仕上げを迷いに迷っておりました。

 

完成したのは昨年。

そろそろどうにかせねばなるまいよ・・・。

オリジナル通り全面金にしてみる?

でもそれも完成が見えてつまらない。

じゃぁ、シンプルに茶色にしようか?

などと自分会議をしまして。

さっそく水性ステインのオーク色で塗ります。


 

そういえば、全面ただの茶色の

サンソヴィーノ額縁って

見た記憶がありません。

知らないだけで存在するのかな、

イタリアの方にとっては

ちょっと変な感じなのかしら、

と心配になりつつも

完成したらきっとかわいいですぞ!

 

 

裂地爛漫 違う方角からのアプローチ 7月01日

 

少し前のことですが、

いつもお世話になっている方から

素敵な本を頂きました。

以前にも茶箱の本2冊をくださった方です。

わたしの普段のアプローチとは違う方向から

心と意識を刺激するものを紹介してくださいます。

 

京都西陣にある茶道帛紗専門店「北村徳齋帛紗店」の

あつかう裂地を、短い文と美しい写真で紹介しています。

日本オリジナルの模様、中国の模様、さらに

インド、ペルシャ、ポルトガルから伝わった模様など。


額縁のデザインとは全く違うけれど、それでも

モチーフの配置バランスや色の組み合わせは

おおいに勉強になります。

 

お茶の稽古では裂地の名前を覚える必要があって

裂地にたいする興味もどんどん深くなります。

普段の稽古では「鶴岡間道」という落ち着いたチェック柄の

小帛紗を使っていますが、なんだか金襴や緞子、モールの

華やかな小帛紗が欲しくなってしまいました。

こんどいつか京都に行った時に北村徳齋帛紗店に

行ってみようかしらんと思い始めています。

稽古の励みに1枚だけ、ということにして。

この本を眺めながら、どれにするか目移りしています。

呑気でしあわせな悩みですな・・・。

 

「北村徳齋の仕事 裂地爛漫」

北村徳齋

株式会社 淡交社

平成29年9月29日 初版発行