diario
ザ・コレクター -中世彩飾写本蒐集物語り- 2月01日
2019年12月に訪れた上野西洋美術館での展覧会
内藤裕史氏のコレクションが寄贈された
記念の展覧会でしたが、
そのコレクションの歴史~寄贈までが綴られた
「ザ・コレクター」を読みました。
著者は医師・大学教授であって
写本の収集は興味と趣味ではじめたそうですが
どんどんのめり込む様子、広がり深まる
興味と知識、人脈などがとても面白く
そしてなにより羨ましく思えたのでした。
コレクションを高める熱意、財力
時間があることも羨ましいですが、
これだけの質の写本を集めることができたのは
内藤氏の人柄が大切だったように思います。
古書店や骨董店がふたつと無い商品を
引き渡す(売る)のは、金銭のやり取り以外にも
「この人になら」という信頼以上の何か、
感情的な何かが必要な気がしますが
その全てを備えていた内藤氏だからこそ
成し遂げられたコレクションなのでしょう。
なんて幸せなことなのだろう。
公的機関の国立西洋美術館に納まったらもう
それら写本が市場に出ることは恐らくありません。
販売する側(内藤氏にとって友人でもあった
ロンドンやパリの店主たち)としては手詰まりを意味し、
でも作品を愛する身としては嬉しいことでもあり・・・。
複雑な心境を抱えつつも、素直に寄贈の喜びを
内藤氏に伝えていたことが印象に残りました。
コレクターと販売者の理想の形がありました。
「ザ・コレクター -中世彩飾写本蒐集物語り-」
内藤 裕史
株式会社新潮社
2017年3月30日発行