diario
メノウ棒の遠い思い出 1月11日
大学2年の夏に学校の企画で行ったヨーロッパ旅行。
その時にフィレンツェで、将来留学することになる
Palazzo Spinerri 修復専門学校を知り
卒業生の先輩方にローマやフィレンツェでお話を伺い・・・
今思えば将来に関する重要な方向を見つけ出した。
そんな夏でした。
その時に訪れたフィレンツェの古典技法画材店
Zecchi で購入したメノウ棒4本(1本は折れてしまった)は
現在制作中の大きな祭壇型額縁でも活躍してくれています。
このメノウ棒を買ったころ、わたしはひたすら
黄金背景テンペラ画模写に熱中していたのです。
なので、メノウ棒を買うぞ!と鼻息荒く行ったZecchi で
「細かい凹凸も平らな面も緩やかなカーブも
きちんと磨けるオールマイティな形のメノウ棒を!」と
ああでもないこうでもない・・・と駄々をこねた記憶があります。
なんと生意気な東洋女学生だったことでしょう。
そんな生意気小娘相手にZecchi のおじさんは
「そうだねぇ、いま作られているメノウ棒はほとんどが
額縁用だからね、君が言うような形は難しいかもしれない。」
とやさしく説明して下さったのでした。
結局わたしは夢のオールマイティ1本をあきらめて
実用的な4本を購入したのですが、心の中では
「額縁なんてどうでも良いのに。絵があっての額縁なのに
絵に適したメノウ棒が無いなんて信じられない!」と
腑に落ちず。無知炸裂でした。
そして経つこと幾歳。
今となってはこの3本が
わたしの額縁制作に大いに役立つことになるとは。
いえ、それ以前に「自分が額縁制作を生業にして
メノウ棒を一生使い続けることになる」なんて
思いもよらない若かりし日です。
このメノウ棒を毎日握る今日このごろ。
ふとよみがえった古い記憶のおはなしでした。