diario
アレッサンドロ・アレッサンドリの息子 11月30日
今年はもしかしたら無いかもしれない
と思っていた「小さい絵展」ですが
無事に開催されるとのこと、ほっとしています。
毎年暮れの恒例行事ですから。
こうした「決まりごと」があるほうが
日々に目標や区切りがあって健康に過ごせるようです。
外出自粛期間中にのんびりと描いた模写
フィリッポ・リッピの「アレッサンドリ祭壇画」
部分模写の額縁を作りました。
シンプルだけど、穏やかな表情に合っているかな
と思っています。
▲この青年はアレッサンドリ君。
彼の父親(アレッサンドロ・アレッサンドリ氏)が
この祭壇画の注文主で、自分と二人の息子を
祭壇画の中に登場させているのだそうです。
1440年頃の制作・・・600年近く前の作品。
展覧会については、改めてご案内させてください。
気分転換に 11月26日
制作中の額縁の金箔作業に疲れて
気分転換に金箔作業をする、という
よく分からないことをしています。
結局のところ、わたしは金箔作業が
好きである。
ということに尽きるのですけれども。
ハハハ。
これから磨り出し、古色付けです。
かわいい小箱になりますぞ。
Firenze 2020-10 11月23日
ローマへの日帰りの旅のつづき。
ローマは地下鉄があり、バスもたくさんありますが
なにせよく知らない街ですのでタクシーが一番です。
ギャラリーの住所を言えば真ん前まで行ってくれます。
さてさて、午前11時にギャラリーへ着きました。
ですが・・・閉まっている!
カントさんには時間をお知らせしておらず失敗しました。
てっきりお店のように開いているものと
思い込んでおりました。困ったぞ。
カントさんへはインスタづラムのチャットから
連絡したところ、あと5分で戻りますとのこと。
ひとまずほっとして、美しい内部を覗き込みます。
▲鼻息荒く窓から覗き込む。でも暗い・・・。
そうこうするうちに無事にカントさんが登場して
ギャラリーを見学させていただきます。
もちろん購入なんて出来ないことは分かっていましたので
せめてお時間頂戴するお詫びとして日本から
手土産を持って行ったのですが、正解でした。
想像以上に桁が違う。
なにせ、展示されている額縁のレベルが超一級品ばかり。
なんと言ったらよいのでしょうか、尋常ではないのです。
上写真の祭壇型額縁は1500年代にフィレンツェで作られたもの。
来歴もほぼ分かっている由緒正しい額縁です。
そして既にご売約済みでした。
誰もが知る大きな美術館の、おののくような有名絵画が
納まる予定だとか。(はっきりお伝えできずすみません。)
わたしの大好きな、ちいさな祭壇型額縁もたくさん。
1500年代から1700年代末、ルネッサンスからバロックの
さまざまな装飾が施された額縁が美しく並んでいるのです。
本や美術館でしか見ないような額縁がずらり。
ここはどこ、天国ですか。
以下、素晴らしいとしか言いようのない額縁をご覧ください・・・。
わたしがあまりに興奮して青くなったり赤くなったりしつつ
必死で見ていると、カントさんは「触っていいよ~」などと
気軽に言いつつ説明してくださるのでした。
どこそこ所蔵のレオナルド・ダ・ヴィンチを入れた
額縁は僕のところのだよ~とか、そんなお話も。
レオナルドの額縁・・・そうですか。ああ仰け反りそう。
近くから遠くから眺め、裏側も見て彫り跡も見て
触って撫でて、こっそり匂いも嗅いだりして!
そして貴重な本も見せていただいたり、
どうしよう、もう嬉しすぎて倒れそう。
鼻血が出なかっただけ良かったのかもしれません!
わたしの額縁の世界なんてほんのほんのわずか。
世界のレベルに触れて、あまりの広さと重さに
押しつぶされそう、飛ばされてしまいそうです。
だけどとても深い感動を得ました。
La Cornice Antica di Fabrizio Canto
もしそれが薔薇なら、咲くだろう 11月19日
すでに2020年も終わりが見えてきて
いったい今年は何だったんだろう・・・と
呆然とするような、でも振り返ると実に
色々とあった一年でありました。
まだ何か大きなことが起こるかもしれないけれど
2020年はすでに終わった気でおりまして、
早くも次の2021年に希望を抱いています。
コロナ禍で計画も予定も、希望と夢も
ブツリと切られてしまって
初夏にはちょっと取り乱したりしたことを
思い出しています。
そして秋が深まってきて、ようやく
心身が落ち着いてきた感覚です。
イタリアのことわざに
“Se son rose,fioriranno” という言葉があるのを知りました。
直訳すれば「それが薔薇なら咲くだろう」と。
「なるようになる」とでも言いましょうか。
「成ると決まっていることは、何をしようとも成る。」
いや、なにかもっと前向きな美しい表現があるはず。
諦めたとかではなくて、なんと言うのだろう
「人事を尽くして天命を待つ」かな?
でもこんなに大げさな感じではなくて。
▲初夏に咲いた我が家の薔薇。見事でした。
わたしのイメージで、ありきたりですが
「柔らかく前向きな気持ちで、
日々できることをする努力を続ければ
やがて希望が叶う日も来るでしょう」
・・・とでも思っておきます。
Se son rose,fioriranno
希望を薔薇に表現するところが
イタリア人ってとてもすてきだな、と思っています。
秘密の左手は 11月16日
先日ご覧いただいた秘密の左手は
金箔をメノウで磨き、古色を付けて完成しました。
完成後にわたしが「かわいい!」と叫んだら
家族は「こわい!」と叫んでいました。
そうかなぁ、こわいかなぁ。
まぁ、手だけですからね、こわいかもしれません。
だけどイメージしていた「イタリアの古い聖像から
取れてしまった左手は、秘密に大切にされていた」
という物語は、そんなに悪くないと思うのです。
▲仏像風からも脱却した・・・と思うのですが。
なんだかとっても気に入った左手です。
グスターヴォさんに写真をおおくりしたところ
「次は右手を作ってあげましょう・・・」とのこと。
わーい、うれしい!
右手もいいけれど、右足もいいなぁ!
きっと右足もかわいいだろうなぁ、などと
図々しいことを想像しております。
何とかなる。たぶん。 11月12日
大きな祭壇型額縁は、着々と進んではいるのですが
なにせ大きいものですからスピードがゆっくりで
気持ちは焦ります。
予想外の事で計画通りに作業を進められなくなって
急きょ違う部分から、可能な方法で作業継続です。
中断にならなくてよかった、と思っています。
その時になってみると、案外と慌てないものですね。
まぁ何とかなるし、こっちがダメならあっちから。
経験って大切ですね。
それなりの経験が積まれていれば計画変更も可能。
年々図太くなってきている気がします。
それも悪いことばかりではないかも。
Firenze 2020-9 11月09日
今回の滞在の主な目的3つのうちのひとつ
ローマにあるアンティークフレームギャラリー
「La Cornice Antica を訪ねる」を決行する日が来ました。
まずは電車(イタリアの新幹線のような特急)を予約します。
昔は前日までに駅で時刻表を見て、窓口に並んで
不愛想なオバチャマから切符を買うという試練(?)がありましたが
いまはネット予約、クレジット払いですから
自宅でパジャマ姿であっという間に済ませるのです。
Omio というサイトで前日に予約・購入しました。
人気の時間帯は高く、午後の早い時間などは安い。
そして直前のキャンセルチケットなどに出会うと
おどろきの安さで買えるようです。
わたしは往復とも便利で人気の時間だったからか
片道40~50ユーロくらい、往復で13000円ほどの記憶です。
さて、朝9時前発の電車ですので、8時半には駅に到着。
ギャラリーオーナーのファブリツィオ・カントさんには
今日うかがう旨をチャットでお伝えしましたので大丈夫なはず。
▲電光掲示板でまめにチェックします。
出発ホームが急に変更になって慌てることもあります。
左右にあるのは切符自販機です。
▲Biglietteria 切符売り窓口はガラガラ。
長蛇の列だったのは昔のことのようです。
スマホの画面で予約ページを表示して、改札を抜けます。
昔はこんな改札はなくて、直接乗り込んだものですが
これまた時代は変わったのですね。
さて、無事に座席に納まりました。
この電車はミラノ発でしたので既にたくさんの乗客で
ほぼ満席でした。
新幹線同様1等(グリーン)と2等(普通席)が
ありまして、わたしは2等席通路側です。
▲窓からはのどかな田園風景。良い天気です。
2時間弱でローマ中央のテルミニ駅に到着。
眠って乗り過ごすのも恐ろしいのですが、
そもそも眠りこけている人はまずいません。
盗難が怖いから、というのもありそうですが
電話で話している人、同行者とおしゃべりしている人で
結構にぎやかですし、PCやスマホを見ている人がほとんど。
わたしはと言いますと、やはりタブレットを見たり
ぼぉっとしたりお手洗いに行ったりしているうちに
あっという間に着いちゃった、という感じでした。
テルミニ駅到着後、外に出たら・・・
真っ青な雲一つない空。
広い!
建物が大きい!
笠松がたくさん!
フィレンツェと比べてどぉ~~んと広くて明るい。
日本はどこの都市へ行っても駅前はほぼ同じ雰囲気ですが
イタリアは地方それぞれ建物も道路も匂いも変わります。
フィレンツェとの違い、都会の雰囲気に驚きつつ
タクシーに乗り込みいざいざ。
カントさんのギャラリーへ向かいます。
つづきます。
cassetta-1 完成 11月05日
留め切れを作ってグラッフィート装飾をした
cassetta 箱型額縁が完成しました。
この額縁は、ローマにあるアンティーク額縁専門店
「La Cornice Antica」のファブリツィオ・カント氏著
「CorniciXV-XVIIIsecolo」に掲載されていて、
はじめてこの本を見たときから魅了されていたのです。
▲左が本に掲載されている額縁写真。
16世紀半ばにフィレンツェで作られた額縁です。
オリジナルとおなじ材料、同じ技法で再現しました。
(おそらく木地の材だけは違うと思われます。)
仕上げの古色加工に迷いがあって
オリジナルの額縁より古色度は低くなってしまいました。
グラッフィート装飾(平らな部分の黒と金の模様)に
傷を付けたくないし、あまり汚すのもどうかなぁ・・・
などとつい加工に消極的になったのですが
まぁ、しばらく眺めて足りなければ追加工
ということにいたします。
▲右上の留め切れはこんな感じに仕上がりました。
久しぶりに彫刻から離れて、小さな世界で
凝った装飾を詰め込んだ額縁を作ることができて
心身共に充実しました。
「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。
どうぞご覧下さい。
Firenze 2020-8 11月02日
なんだかお食事の話ばかり続けましたが
もちろんグスターヴォ師匠との修行も続きます。
▲手前の机をお借りしていたのに、とうとう
師匠の机の端っこに割り込み。おまけに商売道具の
彫刻刀もお借りする図々しいわたしです・・・。
そして、わたしの彫刻刀の切れ味の悪さに驚く師匠・・・。
首を振り振り手早く研いでくださるのでした。
▲緑の小さな機械が電動研磨機
▲まずは粗目の石で形を整えて
▲バッファをかけて仕上げ。ものの数十秒。
あっという間に切れ味がよみがえる!
わたしが普段、人口砥石でガサゴソ研ぐと話すと
さもありなん、と最後にはあきれ顔になってしまう!
すみません・・・お恥ずかしい。
(手で研ぐのが悪いのでは決してなくて、つまり
わたしがヘタクソということでございます。)
じつは自宅にも同じような電動研磨機があるのです。
家族のものなので、使い方も教えてもらえるのです。
だけど、なんだか避けて今に至っており
(何にせよ電動工具は速くて音が大きくて苦手です、
いや、苦手とか言っている場合ではないのですけれど。)
やはり根性を据えて電動研磨機使用を習得せねば!
と思ったのでありました。
・・・おいおいに。ハハハ・・・。