diario
額縁の作り方 30 留め切れをつくる 10月08日
先日から作りはじめた額縁は、以前にも
ご紹介した額縁本「CorniciXV-XVIIIsecolo」にある
16世紀に作られた古い額縁の摸刻、レプリカです。
古い額縁には必ずひび割れ、とくに四隅の角の
接合部分(留め)に亀裂が入っているのです。
これを「留め切れ」と呼びます。
「留め切れ」はモダンデザインの新しい額縁には
とても困るひび割れで、和紙や麻布を貼り込んで
ひび割れができないように努力します。
ですが、今回の16世紀の額縁摸刻だったり
古色を付けるようなアンティーク風の額縁に
留め切れがないとなんだかかえって不自然と言いますか。
かといって刃物等で作れるものではありません。
意図的に留め切れを作る方法をご紹介します。
つまりは「こうしなければ留め切れは出来づらい」
との解説にもなりますので、ご覧いただければと思います。
さて、いつものように木地にウサギの下ニカワを塗ります。
そしてこれもいつものように作ったボローニャ石膏液
(10:1のニカワ液にボローニャ石膏を振り入れて、湯煎で温めたもの)
に10%程度の水を足します。もう少し多いかも・・・?
とにかくかなりシャバシャバの石膏液にしてたものを
木地にタプタプと塗ります。あまり薄く塗らない方が良いようです。
▲これは1層目
▲石膏液の濃度が薄いので木のエッジが目立っています。
この石膏液を4層ぬり重ね、翌日に乾いたとき
留め切れができています。しめしめ、でございます。
▲こんな風に石膏がひび割れます。
この後は普段通りに紙やすりで磨き、ボーロを塗り
金箔を貼りますけれど、作業を重ねる(水分を与える)と
さらに留め切れは広がります。
最後の作業、古色付け時のワックスや偽ホコリの
パウダーを留め切れに擦りこみますと・・・
自然な「ぼろぼろ感」が出るのです。
石膏液の濃度は本当に重要です。
季節や気温で細かく変える・・・という程
神経質になる必要はありませんけれども、
ニカワ液、石膏液を煮詰めないこと、
塗りやすいからと言って安易に水を足さないこと。
ニカワ、石膏、水の濃度、温度、そして木地の乾燥度。
これらすべてを許容範囲内に納めれば
石膏塗りは上手く行くはず、なのです。
今回ご紹介しました留め切れの作り方も
わたしの数々の失敗経験から、ついうっかりと
「出来るようになってしまった」ようなものなのです!