top » diario

diario

秘密の左手 10月29日

 

2020年2月に木彫修行でお世話になった

わたしの師匠グスターヴォさんから、帰国時に

いろいろとお土産をいただいたのですが

その中に、木彫りの小さな手がありました。

 

グスターヴォさんが以前、彫像の手を修復するときに

作ったのだけど、形が違うからと作り直しになって

そのボツの手をもらっちゃったのでした。

ボツと言ったって、爪の形まで彫ってあるような

とても美しい左手なのです。

▲35mmくらいの小さな木彫りの左手

 

ピアノの上のお気に入りコーナーに飾って

しばらく楽しんでいたのですが、思い立って

金箔を貼ってアンティーク風にしてみることに。

▲ボローニャ石膏を塗って磨いて、赤色ボーロ。

 

▲仕事が終わったあと、夜に箔を貼りました。

 

なんだか仏像の手に見えてきた・・・けれど

いやいや、これから磨いて古色を付けたら大丈夫。

イタリアのどこかの教会にある古い聖像の手が

取れてしまったのだけど、こっそり拾った人がいて

いまも大切にされている、なんて雰囲気になる予定です。

 

 

cassetta-1 つづき 10月26日

 

16世紀のフィレンツェで作られた cassetta 額縁

そのレプリカ制作のつづきです。

 

先日は四隅の点打ちによる装飾を終えたところまで

お話しましたが、今日から中央部分のグラッフィート

つまり絵具の削り出し装飾と言いましょうか、

こちらを開始いたします。

 

マスキングしていた部分、そして金箔の上に

黒の卵黄テンペラを塗ります。

▲またもや黒と金の組み合わせ。

なんだか一気に派手になりました・・・。

 

絵具が乾きましたら、チャコペーパーを使って

下描き模様を転写いたします。

(黒地にはパステルカラーのチャコペーパー転写が

見やすくて便利です。)

そしていよいよ絵具の削り出しです。

▲額縁右にあるGペンを使って

金箔の上の黒テンペラ絵具を削り落とします。

絵具の下から美しい金が見えてきます。

 

いやもうほんと、この楽しさと言ったら!

ひとりでニヤニヤ、眺めてはよろこび、

また作業に戻るの繰り返しなのです。

この削り出し作業は、少々間違えたとしても

また黒テンペラで補彩して削り直せば大丈夫。

やり直しの利く技法なので気持ちも楽ちん!

細かい作業が苦にならない方には

ぜひともお試しいただきたい技法です。

 

 

Firenze 2020-7 10月22日

 

イタリアのバールはカウンターでエスプレッソコーヒーを

さっと飲んで、さっと出る!というのがイメージですが

甘いものもや軽食もとても充実しているのですよね。

一口甘いものが食べたいときにはチョコレートを一粒とか

500円硬貨くらいのちいさなタルトがあったり。

(ミニョンと呼ばれています。なぜかフランス語。)

そしてわたしはイタリアに来たら必ず一度は食べたい。

それはカンノ―ロであります。

 

シチリアの銘菓ですが今や全国区のバールにあります。

揚げた筒状の生地にリコッタクリームをたっぷりと。

そして粉砂糖をふりかけてかぶりつくお菓子です。

ちょっと素敵なお店でサーブしてもらっても

フォークでは無理。最後には手づかみでかじることに・・・。

▲ここはピアッツァ・レップッブリカ(共和国広場)の

角にあるカフェ・ジッリ(Caffè Gilli

 

またある時は紅茶専門店へ。

イタリアと言えばコーヒーの国ですが、今は

フィレンツェ発の紅茶専門店 La Via del Te があります。

茶葉の入ったポットで入れてくれるたっぷりの紅茶と

アップルパイでございます。

(Caffè Gilli ではティーバッグ。イタリアでは普通です。)

予想以上に大きな一切れ、これまたたっぷりと

アイスクリームが添えられている!

▲断面に見えているリンゴのボリュームにわくわくする。

甘さも控えめで大きな一切れも平らげてしまいます。

 

あたたかいパイに乗せたクリームがすこし溶けたころに

パクっと一口。ううむ、こりゃ堪らんのです。

 

ただ、カンノーロも巨大アップルパイ(アイス添え)も

どちらもカロリーは知らないが吉、といったところ。

たま~に食べるので丁度良さそうです。

 

カウンターの立ち飲みなら1.5ユーロ程度で

エスプレッソコーヒーが飲めるけれど、

着席するととたんに値段が上がるのがイタリア。

でもたまには良いでしょう。

ゆったり座って甘いものと美味しい紅茶でおしゃべりしたり

考え事をしたりと楽しんだ思い出でした。

 

 

しあわせな悩み 10月19日

 

今までに無く大きな祭壇型額縁制作中です。

このサイズはわたしの小さな作業部屋に対して

そしてわたしの体力に対しても最大と思われます。

 

鼻息荒くわっせわっせと彫ったり削ったりして

はっと気づくとすでに夕方。

床には今までに無く大きな削り屑が散らばっていて、

掃除を始めるとおもむろに、ものすごく腕と肩が

痛くなっていることに気づく!

 

 

いやもう、作業中は楽しくて仕方がないのだけど

夕飯時にはお箸を持つので精一杯というのが

目下の悩みであります・・・。

 

 

cassetta-1 10月15日

 

最近はどうも彫刻した額縁ばかり気になって

摸刻もはかどっていたのですけれど

気分を変えて平面的な装飾をしようと思い立ちました。

 

16世紀半ばのイタリア・フィレンツェで作られた

美しい額縁のレプリカです。

「a cssetta」というスタイル。カッセッタとは

イタリア語で箱を指しまして、つまり箱型の額縁です。

 


木地を組んで下ニカワを塗って、ボローニャ石膏。

ここまでは先日の「留め切れを作る」で

ご紹介した木地なのですが、この木地に

装飾模様の下描き線刻を入れてからボーロです。

これもいつも通りの作業。

金箔を貼り磨き、いよいよ装飾の開始です。

 

この額縁、形はシンプルなのですけれど

小さい世界に装飾がぎゅっと詰まっています。

四隅には点打ち、中央にはグラッフィートと

さらに点打ちの両方が入るという凝りようです。

いやもう、楽しくて楽しくて!

▲オリジナル額縁の装飾拡大写真。ぎっちりです。

 

まずは四隅の点打ち作業から開始します。

相変わらず「目が、目がぁ~・・・」と

眩しさに耐えつつ、ひたすらに何千何万

(大袈裟ですかな)と点を打つ2日間

ようやく四隅の装飾を終えたのでした。

 

在宅ワークと「ご機嫌は自分で作るもの」 10月12日

 

わたしはもうずっと前からなのですが

基本的にひとりで在宅ワークです。

自宅にある作業部屋でガサゴソと

作業をしていると、考え事がはかどります。

はかどると言うより考えすぎると言いましょうか。

 

手を動かしていると、頭の半分は実際の作業について

残る半分はまったく関係のないことを考えています。

2015年にも似たようなことを書いていますので

もうわたしのクセというか性格なのですね。

前向きなこと、計画とか準備とかを考えるなら良いけれど

わたしの場合は「それをいま考えても仕方がない」

というような事が多いのが問題なのです・・・。

わたしの考え事は「考える」というか「想像する」ばかりで

悪い方へぐるぐる螺旋を降りていってドツボにはまるパターン。

何もない(だろう)ところに自分で問題を作って

勝手に落ち込んで閉じこもるのは、もう何なのでしょうね。

ひとりでいる時間が長すぎるのか、ひまなのか。

 

自分が考える(想像する)ことさえままならないのに

ましてや相手のあることなど、どうしようもありません。

他人が心の奥底で考えていることなど知る由もなし。

だけどそれを鬱々と想像してしまうのです。

▲削り屑がイタリアのパスタ「オレッキエッテ」に

似ているな、お腹空いたな、なんてことも考える。

 

朝のラジオでパーソナリティーの別所哲也さんが

「ご機嫌は自分で作るもの」と言っておられました。

まさにまさに。

いやはや、わたしのスローガンですな。

別所さん、ありがとうございます。

 

 

額縁の作り方 30 留め切れをつくる 10月08日

 

先日から作りはじめた額縁は、以前にも

ご紹介した額縁本「CorniciXV-XVIIIsecolo」にある

16世紀に作られた古い額縁の摸刻、レプリカです。

 

古い額縁には必ずひび割れ、とくに四隅の角の

接合部分(留め)に亀裂が入っているのです。

これを「留め切れ」と呼びます。

「留め切れ」はモダンデザインの新しい額縁には

とても困るひび割れで、和紙や麻布を貼り込んで

ひび割れができないように努力します。

ですが、今回の16世紀の額縁摸刻だったり

古色を付けるようなアンティーク風の額縁に

留め切れがないとなんだかかえって不自然と言いますか。

かといって刃物等で作れるものではありません。

 

意図的に留め切れを作る方法をご紹介します。

つまりは「こうしなければ留め切れは出来づらい」

との解説にもなりますので、ご覧いただければと思います。

 

さて、いつものように木地にウサギの下ニカワを塗ります。

そしてこれもいつものように作ったボローニャ石膏液

(10:1のニカワ液にボローニャ石膏を振り入れて、湯煎で温めたもの)

に10%程度の水を足します。もう少し多いかも・・・?

とにかくかなりシャバシャバの石膏液にしてたものを

木地にタプタプと塗ります。あまり薄く塗らない方が良いようです。

▲これは1層目

▲石膏液の濃度が薄いので木のエッジが目立っています。

 

この石膏液を4層ぬり重ね、翌日に乾いたとき

留め切れができています。しめしめ、でございます。

▲こんな風に石膏がひび割れます。

 

この後は普段通りに紙やすりで磨き、ボーロを塗り

金箔を貼りますけれど、作業を重ねる(水分を与える)と

さらに留め切れは広がります。

 

最後の作業、古色付け時のワックスや偽ホコリの

パウダーを留め切れに擦りこみますと・・・

自然な「ぼろぼろ感」が出るのです。

 

石膏液の濃度は本当に重要です。

季節や気温で細かく変える・・・という程

神経質になる必要はありませんけれども、

ニカワ液、石膏液を煮詰めないこと、

塗りやすいからと言って安易に水を足さないこと。

ニカワ、石膏、水の濃度、温度、そして木地の乾燥度。

これらすべてを許容範囲内に納めれば

石膏塗りは上手く行くはず、なのです。

 

今回ご紹介しました留め切れの作り方も

わたしの数々の失敗経験から、ついうっかりと

「出来るようになってしまった」ようなものなのです!

 

 

青い光が降ってくる 10月05日

 

2020年の中秋の名月、その翌日の満月。

ご覧になりましたでしょうか。

当日より雲が多くてよりドラマチックでした。

 

寝る前に撮った写真には、青い光が写っていて

まるで月からこちらに向かって飛んでいるような?

 

「青い光が月からのしあわせの贈り物になって

わたしに降ってくる」そんな風に感じたのでした。

 

レンズの反射とか、そんなことだとは思うけれど

楽しい想像を膨らませるのも、まぁ良いではないか・・・と

穏やかな気持ちになって眠りました。

 

 

自覚した欲求 10月01日

 

本棚の整理をしていたら気づきました。

この春、コロナ禍以降に買ったいくつかの本のうち

4冊が旅に関するものでした。

イタリア全国、ローマ、フィレンツェ、そしてパリ。

おまけにすべて「美味しいもの」について!

(もちろん内容はそれだけではないのですけれど)

自分が無意識に何を考えていたか分かってしまった。

外国で美味しいものが食べたい。そうなのだ。

 

もともと年に1度イタリアへ行ければ御の字でしたが

行けないとなるとますます行きたくなるのです。

今年2月に滞在したフィレンツェでの思い出や

おすすめのお店など書き連ねておりますけれど

次はいったいいつ行けるのやら、悶々としております。

いやはや、我ながら欲は尽きないもの。

わたしはこの半年で「待つ」を学んでいるようです。

今さらながら、ですけれどね・・・。