diario
薄皮一枚のこして 4月09日
1900年代にイギリスでつくられたという
とても立派でうつくしい祭壇型額縁の
修復をしています。
この額縁、ほんとうは金の輝きも鮮やかに
上品な半艶消しで仕上げられていたはず。
(美術館に入っている同作家の額縁を見る限り)
でもわたしの手元に届いた時には
過去の幾たびかの修理・修復のときに付けられた
古色加工・・・というか汚し加工がされていました。
なぜか?
修理・修復の跡を隠すためでしょう。
石膏が欠けて真っ白な部分も
新しく継ぎ足したけれど色があっていない部分も
全部ひっくるめて濃い茶色のベールのように
汚し加工で覆ってしまえば、全体のトーンは揃って
ぱっと見は整ったように見えるのです。
それはそれで、まぁ考え方ですから
その時は良かったかもしれませんけれども。
わたしとしては、これは1900年代という比較的新しい額縁、
オリジナルは古色加工を求めていないデザイン、
参考となる資料もあるし、納められる作品を考えて
今回の修復作業で「汚し加工」を取り除くことにしました。
▲祭壇型額縁を真上から見た部分。
綿棒でぬぐうと真っ黒になり、下からは
オリジナルの美しい金箔が見えてきました。
▲そうとなれば、少しずつ薄く剥がすように
汚し加工を取り除きます。
とはいえ、全部ごっそり取り除くとそれはまた
バランスが崩れますし、あまりに印象が変わりすぎ。
(なにせ何年も「汚れた状態」だったわけですから)
汚し加工の薄皮を1枚のこすような気持ちで
全体の様子を見ながらゆっくり洗浄しました。
もしもっと洗浄が必要となれば、それはその時に。
もしやっぱり汚し加工された雰囲気が良いとなれば
それはまたその時に。