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笑顔のために 3月30日

 

市が尾にあるAtelier LAPIS で毎週月曜に

古典技法額縁と黄金背景テンペラ画模写の

講師をさせていただいて、かれこれ9年目です。

始めたばかりの頃、自分の技術や

制作に対する心構えのようなものを

ほかの人に渡す(お教えする)のは、ある意味

心身の一部を切り取って譲渡するような気持ちで

不安があったのでした。

 

でも、今となればそんな心配は無用も無用、

月並みではありますが「得るもののほうが多い」

という充実し励まされる仕事になりました。

 

そんなLAPISの講座ですが、先日思いました。

生徒さんが「これで良いですか?」と確認を求めて

わたしに見せてくる時、まだまだ作業が足りないと思えても、

それはわたしの感覚では足りなく感じるだけで

この生徒さんにとってはこれで精一杯なのかも?

それとも「まぁぼちぼちで良いかな」と思っておられる?

もうこの作業が退屈になって先に進みたいんだろうな、

でもあと一息、あと一歩頑張ればずっと良い出来になる。

励ましてもっと追及してもらうか。

「良いですよ」と言ってしまうのは簡単だけど。

 

その迷いで、つい

「あなたがこれで良ければ、これで良いですよ。」

という発言をしてしまったのでした。

 

だけど、この言い方は失礼でもあり、怖いですね。

「わたしは納得しないけど、あなたの好きにしたら良い」

という突き放した言葉ですから。

 

生徒さん方は、LAPISにたのしみに来ていらっしゃる。

励まして無理に続けさせても辛いだけなら

楽しく作業していただいたほうがずっと良い。

でもこの人ならもっと出来るはず!

そう思って、最近は「もう一息やってみましょう、

大丈夫、出来ますよ、わたしも一緒にしますよ」

と言うようにしています。

その一言を聞いたときの生徒さんの笑顔は

とても素敵なのです。

 

 

いまはこうした趣味の講座を開講するのも

むずかしい状況ですが・・・

またアトリエで皆さんと笑顔で再会できる日を

たのしみに待っています。

 

 

小箱のたのしみ 2 3月26日

 

純金箔をぴかぴかに磨いたら

刻印で模様を入れましょう。

 

刻印入れの方法にはいろいろとありますが

今回はメノウ棒を軽く打って入れます。

力を加減して点の深さ、大きさが揃うように。

点の刻印が入るとさらに金のキラキラが増します。

小さくてギュッと詰まった世界へ

作業を続けます。

 

 

小箱のたのしみ 3月23日

 

先日から、またひとりがさごそと

小箱を作りはじめました。

金箔の額縁を修復する作業の途中で

すこしのお楽しみです。

金箔はピカピカに磨けました。

これから装飾模様を入れます。

黒と赤でグラッフィートの予定。

イタリアのルネッサンス時代の模様です。

またこちらで制作過程など

ご覧いただこうと思っています。

 

 

荻太郎先生「顔」の額縁 3月19日

 

昨年ご覧いただいた「バレリーナ」に続き

荻太郎先生の作品を額装させて頂きました。

 

 

サインは入っていませんので

発表なさるご予定で描かれたものでは無いかもしれません。

だけどタッチの力強さと勢い、迫力には

見るたびに圧倒されてしまう。

微笑んでいる様子は仏様を思い出させます。

守られているような、叱咤激励されているような

そんな気がします。

 

額縁はごくシンプルに

細い木枠につや消し金、 線刻を入れました。

 

いかがでしょうか。

 

 

 

いつものデザインだけど 3月16日

 

イタリア・フィレンツェでの彫刻修行後

はじめての額縁彫刻ですので

なんだかちょっとワクワクするような

自分にハラハラするような

変な気分になっています。

あちらで入手したあたらしい彫刻刀も使いつつ。

フィレンツェ修行のおはなしは

もう少し落ち着いたころに、と思っております。

まずは日々できることを地道に。

 

 

花でも愛でて 3月13日

 

なんだか落ち着かない毎日ですね。

わたしは元々自宅でひとり作業が日常ですので

あまり変わらない日々を過ごしておりますが

やはり息苦しさを感じています。

庭のヒヤシンス一家は変わらずに今年も

美しい花を咲かせてくれています。

作業の途中で花を愛でております。

 

 

皆さまもどうぞお元気でお過ごしください。

 

 

Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2020年3月 3月09日

 

先月に引き続きHAさんの額縁です。

白木の木地に彫刻をするところから始まり

長い時間愛情を注いで作った額縁が

ようやく完成しました。

 

木地に彫刻、ボローニャ石膏塗布

アクリルグアッシュで彩色、

洋箔をミッショーネで貼りました。

ワックスで強めの古色を付けて完成です。


▲鮮やかな青を塗ってから、最後に箔置き。

 使っているのはドイツ製のペン状の道具です。

 先にヘラ状の堅いゴムが付いていて箔を押さえます。

 

古色用のワックスは濃い茶色なので

塗りこんだら鮮やかな青のトーンも落ち着いた色に。

ラピスラズリのような大理石のような趣になりました。

 

この額縁、わたしが以前つくった額縁(下の写真)と

ほぼおなじデザインでHAさんがつくりました。

▲3年前(だったか?)完成させた額縁「hori-16c-1」

 内側寸法108×95mm、サイズも同じです。

 

おなじ木地、似たデザインで制作しても

彫りの深さや太さ、色や仕上げの違い、

作り手のイメージによってこれだけ違いがでます。

これぞ制作の醍醐味、ですね。

 

HAさん、美しい額縁を完成させてくださり

ありがとうございました!

 

 

五寸釘を握りしめて 3月05日

 

真夜中に、恨みの藁人形に打ち付けるのは

五寸釘・・・

 

ですけれど、わたしの五寸釘は打たずに使います。

それももっぱら日がある時間でございます。

線刻するニードルとして重宝しています。


 

この五寸釘、つまり長さ150mm、太さ5mmの大きな釘ですが、

さすがにそのままでは細くて作業がし辛い。

革テープを巻き付けて握りやすくしています。

▲これぞ本当の五寸釘。

 

▲ちょっと太くてシャープな線が彫れます。

 

この重くて太い五寸釘、これを深夜に生木に打つなんて

相当な気力体力が必要なことでしょう。

なんともはや。

 

この五寸釘、大学生の頃に道で拾いました。

誰が落としたんだろう。

藁人形と一緒に持っていた人でしょうかね。

あまり考えないようにしています。

 

 

物の心を感じるとき 3月02日

 

先日、ピアスを1組無くしました。

でもこのピアスとのお別れが早く訪れることは

以前から分かっていたことなのでした。  

無くしてから「分かっていた」と言うのもおかしな事ですが。

 

以前に行った骨董市で数千円で手に入れた イギリス製のピアスは

デザインも気に入って 迷わず買い求めたのですが

お会計を済ませて店主さんから手渡されたときに

「あれ、このピアスはわたしの物ではないのかもしれない」と

突然に思えて、我ながら頭の中は「???」でした。

 無くした理由はわたしの管理が悪かっただけ・・・ではありますが

ピアスがわたしを嫌って逃げ出して行ったとも感じています。  

「物に心があるなんて妄想も甚だしい」と思いますけれど、

ただ、古いものにだけは・・・

「古い物には心がある」と何やら確信をもって感じています。

 

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