diario
鎌倉へ 裏通りに見つけた 12月30日
昨年末は来られなかった鎌倉に
今年は来ることができました。
由比ガ浜に車を留めて八幡様へ歩きます。
途中にある鎌倉教会からはパイプオルガンの
「もろびとこぞりて」が聞こえてきました。
いつか立ち寄ってみたいと思います。
小町通は例年通りたいへんな人出。
骨董店や昔ながらの床屋さん、和紙屋さんなどの
「生存確認」をしつつ、なぜか増えたキリムラグやら
ポスターのお店を不思議に眺め、揚げ物の臭いに追われ、
外国からの観光客の多さに驚き人ごみにもまれて・・・
ようやく八幡様に着いた時にはぐったりでした。
その疲れには最後まで頑張っていた古書店
「藝林堂」がなくなっていたこともありそうです。
▲鎌倉彫の店先に展示されていた彫刻刀。興味深く眺めます。
変わらない八幡様と、大きくなった大イチョウ2号に
ほっと一息ついて、今年のお礼と来年のご挨拶をしました。
帰り道はもう小町通は通るまい、と一本裏を歩いたら
地元にお住まいの方に数人すれ違っただけで
人声も気配もなくわたしの靴音だけが響いて
これまた驚くばかりなのでした。
ようやく人通りのある古い商店街に行き当たったと思ったら
古い花屋さん、喫茶店、お肉屋さんが並んでいて
昭和から止まったままのような風景がありました。
きっとこの裏道と商店街のように、昔と変わらない鎌倉は
ここかしこに残っているのだと思うけれど、
そこをわたしのように年に1度しか訪れない人間が
興味本位で歩き回るのも違うような気がしています。
最後に見られた風景と、帰りの車から眺めた富士山で
今年の鎌倉詣では無事終了。
なにはともあれ八幡様にご挨拶が済んでほっとしました。
来年もまた気持ち新たにがんばります。
2019年のブログ diario はこれでおしまいです。
ご覧くださりありがとうございました。
大晦日は寒い予報です、どうぞ暖かくしてお過ごしください。
「kirikami-2」 12月27日
あの後、結局「これで良いとする。」になって
完成を迎えました kirikami シリーズ四角いバージョン
kirikami-2 です。
最初につくった丸い kirikami-1 から
凹みを作る方法を変え、塗装も変えました。
2つを並べてみれば違いははっきりありますが
全体の雰囲気や受ける印象は、あまり変わらないように
心がけたつもりです。
いかがでしょうか。
はー。いやはや。
頭がグルグルする度合いが高い制作でした。
「works」内「modern」にこちらの額縁をアップいたしました。
どうぞご覧下さい。
Buon Natale 2019 12月25日
メリークリスマス!
ことしもクリスマスになりました。
仕事納めまであと少し、でしょうか。
どうぞお体大切に、穏やかなクリスマスを
おすごしください。
掃除をしなさい 12月23日
フィレンツェにあるバルディーニ美術館所蔵の
額縁模刻はぼちぼちと進めています。
外側は大まかに彫り終わりが近づいて
今は深さ調整と「掃除」をしております。
毛羽やら小さな段、彫り残しを掃除すると
スッキリ整って見違えます。
▲掃除には小回りの効く細い彫刻刀を使います。
留学先の学校で彫刻の授業を受けていたころ
作業中、先生に見ていただいたら
「それじゃ次、少し掃除しなさい」 と毎回言われていました。
自分ではそれなりに掃除したつもりでも
先生の目にはまだまだだった訳ですが
この掃除がいまだに苦手です。
今となっては誰も言ってくれませんから
自分で自分に「もう一息掃除しなさいよ」
と言いつつ作業しています。
掃除は大事です。
分かっちゃいるけど!
できた、ような。 12月20日
kirikami シリーズ四角いバージョン
出来上がった・・・と、思います。
いや、どうかな。
もういいかな、まだかな。
妥協ではないけれど、不安というか。
これで「完成しました」と言って良いのか。
毎度のことながら迷います。
いえ、迷わなかったことがない、が正解です。
ううむ。
一晩おいて朝の明るい陽射しでもう一度見て
それから決めることにします。
ゴシックへの旅 12月18日
暖かな冬晴れの日に上野の西洋美術館へ行きました。
混雑する企画展を横目に、常設展の入り口から入り
目指すは版画素描展示室で開催中の
「ゴシック写本の小宇宙 内藤コレクション展」です。
獣皮紙に書かれた(描かれた)美しい装飾文字と
挿絵、イニシャル文字を、かなり近寄って見られました。
そして写真撮影も許されていました。
▲50×60mm程度のごく小さなスペースにぎっしり!
中世の厚い壁に囲まれた修道院内、
外光と蝋燭の灯りのみの時代
これだけ細かい文字と挿絵を描くには、
相当な集中力と技術が必要だったはずです。
若くして熟練した技術とセンスのある職人(僧)がいたのでしょう。
当時は老眼鏡などほぼありませんでしたから。
ユーモラスな人物、写実的なウサギやリス、
装飾的な草花など、時間を忘れて見入ります。
これを描いていた時、楽しかったんだろうな、
この線を引くときは筆をどう持ったのかな、
ラテン語が分かるともっと面白いだろうな、
などと静かに興奮しながらの鑑賞でした。
そしてまた映画「薔薇の名前」を観たくなったのでした。
▲各要所にパネルで用語や技法の解説も。
ものすごく小さな世界を出て、美術館外の広い世界へもどる。
数時間の別世界への旅行のようでした。
有名作家の絵があるわけではないけれど、
写本好きな人にはどうにも堪らない展覧会です。
ぜひお出かけください。
国立西洋美術館 ~2020年1月26日(日)
凹は凸よりむずかしい 12月16日
制作を続けています。
このデザイン、切紙模様が凹んでいるのが
特徴なのですが相変わらず試行錯誤です。
第1作目のまるいバージョンと違う方法で
この凹みを作っているのですけれど、
どちらの方法にも一長一短あるのでございます。
もっとブラッシュアップさせたい。
平面には凸をつくるより凹をつくるほうが
むずかしいような気がしています。
あっちもこっちもどこででも 12月13日
ご想像の通りでございます。
▲だって年末大セールだったのです!
広告付きのいちばんお手頃価格のもの。
さっそく原田マハ作品を数冊購入したり
無料のものをダウンロードしたりしました。
夏目漱石やら与謝野晶子などは
もう著作権が切れているのですね。
おかげで懐かしい「こころ」など
また読んでみる気持ちになりました。
なにせ家族全員が読書好きで
我が家にはわたしが読んでいない本がまだまだ
山積みですので、ちょっと後ろめたいのですが
それはそれ、これはこれ。
思えばイタリア留学中は日本語の活字に飢えて
友人間で文庫本がぼろぼろになるまで
回し読みしていたのでした。
普段なら読まないホラー小説など読んだりして。
古本屋のあるパリが羨ましかった思い出です。
今はKindleがあれば、どこでも読めますものね。
便利な時代になったものです。
出不精ですがKindleをもって出かけたい気分。
電車で「塩狩峠」を、カフェで「こころ」を、
ついでに新しい作品を探してみたりして
あっち読んでこっち読んで楽しもうと思います。
語学の勉強・・・も、できたら良いな。とか。
あたらしいオモチャを手に入れました。
感想などまたお話させてください。
乙女かボロボロか二択。 12月11日
先日、あまりに乙女チックな配色になって
やっぱりやめた!とばかりに
テンペラ絵具を削り落とした小箱は、
刻印を打ってワックスで古色仕上げしました。
中に灰茶色の別珍を貼りこみましたが
なんだか地味な趣きになりました。
結局いつもの雰囲気になりましたけれど、
仕上がりはなかなか気に入っております。
デザインの細かさに対して刻印の点が大きくて、
繊細さがない代わりに力強さはある、とでも
表現させてください・・・。
それにしても
古色を付けたとはいえ初々しさは皆無です。
わたしのつくる額縁は、以前から「いかにも
女性が作った額縁ですね」と言われることが多く、
制作者の性別も年齢も感じさせないものを
作りたいと思ってはいたのですけれど。
わたしの引き出しには今のところ
「乙女風」と「オンボロ風」のふたつしか
選択肢がないのでは?!
▲どっこいしょ・・・
オンボロ箱と乙女クマを組み合わせたりして。
もう少し柔軟に幅広い表現をしたい
と思っている次第でございます。
「works」ページ内「other」にアップいたしました。
どうぞご覧下さい。
額縁生まれ変わり 12月09日
ようやく完成いたしました。
▲修復後。欠損を再成形して純金箔を貼りました。
少しの磨り出しをして下地の赤を出し、茶色の古色仕上げ。
▲修復前。金色の塗装と緑青色の古色で仕上げた額縁でした。
上部の欠損部分には金色のペイント修理の跡も。
今まで古い額縁の全面箔貼り直しには積極的ではなかったこと
また、普段とはちがう方法での箔置きをしたことなどもあり
(ミッショーネは部分的に装飾で使うことがメインでした)
下地の整え方や接着剤、仕上げ方法の検討などで
時間を消費してしまう結果になりましたが
理解も深まったという大きな収穫もありました。
お客様には託してくださったことに大変感謝申し上げます。
古い額縁に全面箔貼り直し、いままで避けていたのは
どうにもちぐはぐな印象になってしまう恐れがあったから。
ひどい例えですけれど、お婆さんが若作りしているような。
今回トライして分かったことは、下地を整えて
ある程度の古色を付ければ美しく仕上がるということです。
当然といえば当然なのですけれど、これはやはり
実際に試行錯誤しながら行って自分で理解することが
必要だったということでしょうか。
「山をひとつのぼり終えた」といううれしさを
感じながら完成した額縁を眺めています。
欲しいの?欲しいんでしょ? 12月06日
ここのところ、なんとも気になるのが
Kindle(電子書籍専用リーダー)です。
ものすごく今さらなのですけれど。
紙の本を愛するゆえに遠ざけてきた感もありますが
Kindle の小ささ軽さ、その容量は大変な魅力。
だけど「本」なら貸し借りも自由ですが
kindle は1作品につき1回限り14日間貸せるのみ。
古本は差し上げるのも売るのも可能だけど
コンテンツは売れないようですし溜まる一方?
なにせわたしは石橋を叩いて渡るどころか
渡る人を後ろからじっと眺めて10年経つような人間
と自覚しておりますので、新らしいことには程遠く
ようやく「気になるなぁ」にたどりつきました。
画集やじっくり読み返したい本は「本」を買って
情報や軽い読み物は電子書籍で、と分けるのが
皆さんの使い方なのですよね、きっと。
なんだかんだと自分に言い訳をしつつ
手に入れるような気がしています・・・。
小さい小さい絵展 2019 12月04日
毎年同じころに同じお知らせを。
今年もまた「小さい小さい絵」展に出品いたします。
池袋東武百貨店6階1番地 アートギャラリーにて
12月19日木曜から25日水曜まで。
今年は丸い黄金背景チューリップ、
のんきな鼓笛隊、赤い服の貴婦人3点
ボローニャ石膏地に卵黄テンペラの模写です。
お近くにお越しの際はどうぞお立ち寄りください。
よろしくお願い申し上げます。
出会っていたのは後で分かる 12月02日
フィレンツェのルネッサンス美術に
わたしが心から興味を持ったのは
NHKのテレビ番組を観たときからでした。
当時、高校3年生です。
それ以来、どうしてもフィレンツェに
行きたくてたまらなくて、
大学進学時は学校主催で行われる夏の旅で
フィレンツェに行ける学校を選び、
結局大学卒業後には両親の許しで
とうとう3年間の留学までさせてもらい、
額縁の本場で制作と修復を学び
身につけることができました。
今もテレビでは、イタリアの
ルネッサンス美術についての番組は
様々に放送されています。
出演のとても若いタレントさんが
幼い――でも一所懸命に――コメントを
話している姿を見ると、
当時の自分と重なるような気がします。
そして今の若い人たちが番組を見て
なにかの情熱を持ったかもしれません。
人生の方向を決めるきっかけやチャンスは
些細なことで、どこででも出会いますね。
そしてそれは後にならないと分からないのです。
わたしにとっては偶然観たテレビ番組が
いま思えば大きなきっかけのひとつでした。
色々な人の「振り返って分かるきっかけ」を
聞いてみたいと思います。