diario
ほんのり磨きの美 6月03日
先日ご覧いただいた花彫刻 fiore-4 を
作っていたときのお話。
古典技法の金箔置き(金箔貼り)は
メノウ石で磨き上げ、まるで金の塊りのような
奥深い輝きを出すのが醍醐味です。
正しい技術で箔を置き、正しいタイミングで磨けば
金箔はより強く密着し丈夫になります。
数μの厚さしかない金箔とは思えない美しさです。
そんな訳でして、金箔を磨くとなったら
わたしはもう「磨かずんば死」でした。
大げさ? まぁそうですね、でもそれくらい
「磨くと言ったら磨くのです!」と
真剣に丹念にしつこく磨き上げていました。
ですが、最近思うのです。
ギャンギャンに磨き上げた金は息苦しい。
確かに吸い込まれるように美しいけれど、
硬く隙が無さすぎるのではないか、と。
いままでの8割くらいの気持ちで磨いた額縁は
10割磨きの額縁よりやさしく軽く親しみが持てる。
押しつけがましさが減る。
艶消しとも違う美しさがあるようです。
「磨きゃ良いってもんじゃなんだよ、きみぃ!」
と額縁の神様に言われたような気がします。
ばっちり磨きの金が必要な額縁もあれば
ほんのり磨きの金が生きる額縁もある。
気づきました。