diario
貼るのか置くのか問題 4月12日
以前「祭壇型額縁をつくる 8 」でも
お話したのですけれど、
金箔は額縁に「貼る」のか「置く」のか。
独り言のような内容でございます。が、
留学を終えて帰国当時からなんとな~~~く
気になり続けている貼るのか置くのか問題。
言い方ひとつではありますが、でも
言い方って大切ですから。
日本の額縁制作の世界では、箔は
「貼る」ではなく「置く」と表現します。
日本の額縁創成期は漆工の職人さん方の
活躍が多かったそうなので、
そのまま伝統的な「箔置き」という言葉が
使われ続けてきたのではないでしょうか。
一方、KANESEIのお客様などからは
「金箔が貼ってあるのですか」とのお言葉が
多いところから鑑みるに、日本語では
一般的に金箔は「貼る」のでしょう。
薄い紙状のものをくっつけるのは「貼る」です。
さて、イタリアの職人さんはなんと言うか。
Io metto foglia d’oro. わたしは金箔を置く。
「置く」“mettere”という動詞を使います。
やっぱり「箔を置く」のですよ。
なんでだろう。
どうしてでしょうね??
実際に西洋古典技法で箔の作業をしてみれば
たしかに「箔を置く」という感覚ではあります。
おそらく漆工の世界の感覚でも、箔は
置くと表現するのが相応しいのでしょう。
極めて薄い金箔を、日本は竹挟みではさんで、
あるいは透けるような和紙につけて、
イタリアは繊細な刷毛に静電気でつけて持ち上げて、
対象のもの――漆器や仏像、額縁――に
フンワリと置いて、そしてそっと押さえる。
「箔を貼る」は完成品を見ている人の感覚
「箔を置く」は製作の作業をしている人の感覚
から出てくる表現、でしょうか。
となると、他のアジアの国で漆工に携わる職人さん、
ロシアのイコン制作の方々、
ポーセレンや写本の世界などでは
どう表現しているのか知りたいのです。
む~ん・・・箔を「置いて」いるような気がする。
辞書や翻訳サイトでは出てこない
いわば現場の表現ですからね、
いつか職人さんご本人にお聞きするチャンスが
あれば面白いなぁ、と思っています。