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どこまで直すかはお好み次第 5月30日

 

お預かりしていた小さな額縁の

修復が終わりました。

1800年代フランスの板絵が入っていて

額縁もおそらく同時代の物と思われます。

この額縁もまた、長い年月の間に

なんども修復の手が入った跡があります。

写真は上が修復後、下が修復前。

相変わらず写真が下手なのはご容赦ください。

 

 

 

修復後の写真をご覧になって、

「これで直ったと言えるの?

まだ割れている部分もあるし

留め切れ(角の接合部分の開き)も

汚れもそのままじゃないか」と

思われるかもしれません。

 

額縁に限らず、何かを修復する時

どこまで直すかというのは大きな問題です。

今回だって木地の歪みを戻し、留めをつなぎ、

欠損に石膏を詰めて全面に金箔を貼り直せば

まるっとピカピカに戻るわけです。

古くてあまい修復跡も直してしまえばいい。

 

でもお客様はこの雰囲気がお好きです。

欠けや留め切れ、金の擦れも気にならないとのことですし、

なにより絵の雰囲気によく合っているのです。

今回はご意向に沿って最低限の装飾復元、

木地緩み固定とカカリの改良のみを行いました。

 

絵が違和感なく額縁に納まって

安全に保存・展示できるのならそれで良い。

もし「やっぱり他の部分も気になる」と

思われたなら、その時にまた直せば良いのですから。

 

大切なのは「修復する目的と理由」

そして「完成イメージ」を理解して

お客様と共有すること、と考えています。