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里帰りした額縁 妹額縁の誕生 5月29日

 

先日にご紹介しました里帰りした額縁の 妹分が完成しました。

基本デザインはそのままに 線刻模様はりんごの花を入れて

イニシャルを3人から4人家族に。

RさんとKさんはご両親、Yくんはお兄ちゃん

そして今回生まれたSちゃんです。

この額縁も、幸せなご家族に迎え入れて頂き

幸せに過ごしてくれるでしょう。

額縁もご家族の団欒のささやかな楽しみに なってくれますよう!

 

「works」内「modern」にこちらの額縁をアップいたしました。

どうぞご覧下さい。    

 

古い水はやわらかい 5月25日

 

古典技法、水押しで金箔を貼るとき

箔下地のボーロに水を塗り、箔を置きます。

水はただの水、普通の水道水を使うのですが

わたしのイタリアでの師匠、マッシモ氏いわく

「新しい水より、何度も使った古い水の方が良い」とか。

何故でしょうね。

最初は不思議でしたが、だんだんと分かるようになりました。

新しい水は固いというか、弾くというか。

 

上の写真の水は「古い水」、何度も筆を出し入れしたので

うっすらと赤ボーロの色が溶けています。

恐らくですが、使ううちにボーロや膠が少しだけ溶け込んで

ボーロ地になじみやすくなる、ということなのでしょう。

広口のビンを使って、水が減ったら継ぎ足しています。

まるで焼き鳥やうなぎの「秘伝のタレ」のようです。

軟水と硬水の違いがあるのか、は分かりません。

 

 

低融点合金があれば 5月22日

 

休日の午前中に、ぼんやりとテレビを見ていましたら

秋葉原にある「ironcafe」というお店が紹介されました。

このカフェ、鋳造体験ができるというのです。

それも卓上電熱器を使い湯煎でとかした金属を使うのですって!

聞いた瞬間、我ながら目がピカッと開きました。

 

大学時代、彫刻の授業で一度だけ鋳造をしたことがあります。

アトリエ裏の屋外に穴を掘って炉を作り、コークスを大量に燃やして

そこに金属の塊(古い電線とかでしょうか。記憶が曖昧)を入れます。

体感したことの無かったような圧倒的な熱量に恐怖を感じつつ

真っ赤に溶けた金属を型に流し込むのでした。

粘土や石膏で作ったものが金属に出来る魅力はとても大きかったものの

とても自分一人でできるような作業ではない!と思ったものです。

 

ですが、この ironccafe で使っている「低融点合金」があれば

自宅での作業も可能です。これはすごいです!

カフェのワークショップで使う合金は融点が80度くらい。

粘土で型をとって、湯煎でとかした80度の金属を流し込む。

30分くらい待って粘土を外したら中から鋳造作品が登場!

なんて手軽にできるのでしょう。

もう少し高い130度くらいの合金もあるようですから、

制作可能なものの範囲がぐっと広がりそうです。

なにはともあれ、いちどこの「ironcafe」で

鋳造体験ワークショップを受けてみなくては。

鼻息が荒くなっています。

低融点合金。

世の中、知らないことだらけですね。

 

 

 

始まりと終わり 5月18日

 

複数枚おなじデザイン、サイズの額縁を作っているとき

当然ですが1枚より作業量も時間も増えて、

ひたすら同じ作業をずーーーっと続けているような気持になるのですが、

完成するときは、あるとき急に、ぽかっと終わってしまう。

「あれっ?もしかして終わり?」という 唐突感がまずあって、

一瞬ですが茫然とします。

そうして、しばらくしてから達成感がやってきます。

いつものことながら不思議な感覚です。

 

ちなみに、大きくて手の込んだ額縁1点を作る場合は

徐々にクライマックスに向かうので、

お客様にお届けし、喜んでいただけた瞬間に

達成感と安堵感がどっとやってきます。

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ともあれ「始まりと終わり」がある仕事は

自分に向いているな、と思っています。    

 

 

ミュシャ展 5月15日

 

先日の春陽展観覧後、時間があったので

ウワサの「ミュシャ展」も、ということにしました。

チェコ国外初公開の「スラヴ叙事詩」は 巨大な壁画サイズのキャンバスに

テンペラと一部油彩で描かれています。

老若男女、外国からの方も沢山の観客で賑わっておりますが

会場は広く見辛さはありません。

撮影可能な部屋で、幾つか写真をパチリ。

 

下部を見るとキャンバスが張られていることがわかります。

およそ6メートル×8メートルのキャンバスは 一枚仕立て、

繋ぎ目は見当たらない・・・というのが驚きです。

何せ巨大な作品で、制作を想像すると目眩がします。

テンペラのハッチング(線描)、草の描写のピッチは

だいたい1本の線が4〜5センチくらい。

ザバザバ描いているようだけど、とても繊細です。

 

未完部分も興味深いです。

マットでパステル調の色、ここを見るとテンペラらしい感じです。

ミュシャは今まで私の中では、女性をモチーフにした

可愛らしいポスターのイメージが先行していましたが、

今回の展覧会で印象がガラリと変わりました。

感動できる素晴らしい展覧会、お勧めです。

 

国立新美術館「ミュシャ展」

2017年3月8日(水)-6月5日(月)
毎週火曜日休館 5月2日(火)は開館  10:00-18:00           

 

 

里帰りした額縁 5月11日

 

数年前に友人からのご注文で作った額縁と

久しぶりに再会しました。

赤ちゃんのお誕生祝いの額縁です。

今回また色違いでのご注文をいただいたので

(女の子が新たに誕生したとのこと!)

いわば「みほん」として以前の額縁をお預かりしたのです。

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あわいピンクに花の盛上げと線刻模様

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内側の側面には銀箔を施してあります。  

 

久しぶりに再会した「我が娘」である額縁は、

先方でも大切にされて日々楽しんでいただいていた形跡があって

それが嬉しい。  

新しい額縁は、基本のデザインはそのままで

あわい紫色、線刻をすこし変えてみる予定です。    

りんごの花、なんてどうでしょう。

 

 

側光線で見る 5月08日

 

ボローニャ石膏を磨くことは

古典技法額縁制作の作業の中でも

地味だけど注意力が必要になる

なかなか大変な仕事です。

上からの照明では 真っ白な石膏地の凹凸や筋跡が見づらい。

特に紙やすりによる線状の跡は消しておきたい。

石膏磨きの時には、照明ランプを横に置きます。

いままで反射して見えなかった凹凸がはっきり!

違う角度からの光で見る、何ごとにも大切であります。

 

 

春陽展 5月04日

 

連休前の平日午後、国立新美術館へ行きました。

春陽展です。 さっそく入りましょう。

もう20年近くお世話になっております 今關鷲人先生の作品を拝見します。

こうした大きな団体の展覧会場は 油絵具や溶き油の匂いが漂い、

大学のゼミ室を思い出してノスタルジックな気分になります。

 

いままでの今關先生の柔らかな印象の作品と

今年の出品作品は少し違いました。

初見は一瞬恐いような? でもしばらく見ていると、そうじゃ無い。

枝の線、背景の色の重なりに 先生の作品でいつも感じる

安心感が 滲んで見えてくるのでした。

うーむ、こればかりは文章で説明しても 仕方のないことですね。

機会があればぜひご覧頂きたいと思います。

 

春陽展は毎年、チャリティで小品を販売しています。

収益金の一部を、今年は熊本へ送って下さるとの事で

私も微々たる協力をさせていただきました。

大坂忠司先生の木版画「Ponte Vecchio」

懐かしいフィレンツェの橋の風景。

水面から見上げた構図に惹かれます。

どんな額縁を作りましょうか。

濃い茶色の木地仕上げ、彫刻も少し入れて…

なんて、さっそく構想を練っています。

 

 

2017年の福の神 5月01日

 

また今年もKANESEIの福の神

モッコウバラの季節になりました。

昨年に虫被害があって葉がすっかり落ち

今年は花がめっきり少なくて寂しいのですが

御利益は例年通り

いえ、例年に増して忙しい連休です。

思えばここ数年、5月の連休をのんびり 過ごした記憶がありません。

爽やかな季節、新緑と青空をジト目で一瞥して

作業部屋に引きこもる日々。

だけど、こんな形のひとり工房で仕事を頂けているのは幸せなことです。

ありがとうございます。

 

さぁ、今日も張り切って作ります!