diario
Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2017年2月№2 2月27日
2016年の11月に作りはじめたMIさんの額縁です。
大変に根気の要る作業が、とうとう完了しました。
木地にボローニャ石膏、赤色ボーロに純金箔の水押し。
そしてひたすらに刻印を打って模様を浮き出させました。
この額縁、サイズはB5ほどではありますが
点を1つずつ、それもきちんと並べて打ち続けるには
相当の時間と努力、そして安定した心が必要でした。
アトリエには「コツ、コツ、コツ」と一定のリズムと大きさで
MIさんの木槌の音が響いていた数か月です。
まるで修業のような制作時間が終わったら、
こんなに美しい額縁が完成しました。
当初はテンペラの模写を入れてアンティーク加工をする予定でしたが
あまりに美しく仕上がったので、計画変更です。
来月からこの額縁のために改めて静物画の制作をすることに。
MIさん、努力の結晶を仕上げて下さって
ありがとうございました。
静物画が完成して額装しましたら、またご紹介させてください。
本を読むときは素裸で 2月23日
我ながら紛らわしいタイトルだと思いますが
裸になるのはわたしではありません。
本です。
カバーも帯も、挟まっているものもさっぱりと外して
裸の本にしてから読んだり持ち歩いたりします。
ずれたり折れたりしないよう気遣う必要も無く
これで安心して本の世界に入っていくのです。
ちなみに図書館で借りた本には自分のカバーをかけます・・・。
裸 or 厚着 皆さんはどうなさっていますか?
ネコテンペラ2 2月20日
横っちょからひょっこりと。
子猫のテンペラを描きました。
昨年秋に準備していたものですが、
ようやく今日彩色が終わり
そろそろ額縁の準備をしようと思います。
白い額縁か金色の額縁か、迷います・・・。
candelabrum-2 2月16日
ラテン語と金色オーナメントの装飾をした
「
燭台のような模様からとりましたので
今回の額縁は本当は「
木地の形や原型が同じなのでシリーズにしました。
シリーズ1は鏡を入れるために作りましたが、
今回のシリーズ2にはボタニカルアートの版画が入ります。
左右の装飾模様を外したので空間に広がりを与えて
納める版画の美しい色彩がより映えることを期待しています。
ラテン語文字装飾の文章は
“ars cum natura ad salutem conspirat”
「藝術は自然と結合して健全なるものへと協力す。」
(ギリシア・ラテン引用語辞典より)
「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。
どうぞご覧下さい。
Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2017年2月№1 2月13日
ここしばらくでググッと彫刻の腕をあげたTAさんは
ご自宅でも作業を続けられてきました。
先日のレッスン時、朝に披露されたのはすっかり 箔置きが終わり、
素晴らしくピカピカに磨かれた額縁。
こちらをアンティーク風に古色を付けて 完成した姿をご紹介します。
昨年2016年の初夏に彫り始めた額縁は、
シンプルな形の木地をカマボコ形に加工することから。
(これ、「言うは易し」で結構大変な作業です。)
こうした手間も惜しまずにチャレンジなさる姿、
わたしも見習いたいと思っています。
四隅にアカンサス、中央に花のリースを彫ります。
なにせご自宅での作業もすっかり問題ありませんので
アトリエにお持ちになる時には既に彫刻も進んでいます。
サイズを測って、何を額装するか思案中。
そして古いフランスの絵ハガキ(最後の晩餐図)を
額装することになさいました。
ピカピカの金は美しいけれど、
古いハガキの趣とバランスが良くない感じ。
ということで アトリエではいつものように、
金を磨ってから ワックスとパウダーで汚しを付けました。
さぁ、額装を戻してみましょう。
金の反射が抑えられたので彫刻がより際立って見えます。
バックの茶色の絹、そしてハガキとの相性もずっと良くなりました。
彫刻の凹凸に箔を置くのは根気の要る作業です。
凹にもきちんと金が入っているのを見れば、
その努力の甲斐があります。
TAさん、いつもチャレンジ精神を忘れない
素敵な額縁を 作って下さり、ありがとうございます!
よそいき 2月09日
べっこう柄のメガネが壊れました。
とても気に入っていたのですが
うっかりと踏んでしまったので自業自得。
おまけにこのメガネは「よそいき」でしたので
外出時に大変不便です。
仕方がないので同じメガネを買いました。
こんどは黒です。
また踏まないよう大切にします。
「よそいき」って最近聞かない言葉ですね。
石を持て 2月06日
フィレンツェ留学中の修業先、額縁工房のマッシモ氏に
一番最初のころに注意されたのが
「メノウ棒は柄を持つのではないよ、石を持ちなさい」でした。
もちろんメノウ棒の種類にもよりますけれど、
正確には石と真鍮の軸のつなぎ目辺りを持つ、という感じです。
それまでわたしは自己流で、鉛筆を持つようにして
メノウ棒の木製の柄を持ち、手首を振ってメノウ棒を動かしていました。
残念ながらマッシモ氏から理由は教わっていませんが
それ以来わたしが石部分を持って作業した感想としては
・石膏地や箔の感触がより繊細に感じられる
・余計な力が入らないので石が滑って箔に傷がつくことが少ない
・メノウ石と真鍮の軸が緩んだり外れたりすることが少ない
・腕全体を動かすので疲れが少ない
などでしょうか。
慣れるまですこし磨き辛く感じるかもしれませんが、
メノウ磨きは「石を持て」、お勧めです。
本物の輝き 2月02日
ついこのあいだお正月だったと思ったらもう2月ですって!
早すぎてドキドキハラハラしています。
額縁修復で、いちばん華やかで楽しいけれど
いちばん神経が磨り減るのも補彩と艶合わせ、でしょうか。
というのも、あまりやり直しがきかない作業でもあるから。
以前にもお話しましたが、金箔を使った額縁の補彩に
必ずしも金箔を使うわけではありません。
金箔を使うことの方が稀なくらいです。
今回の額縁も、純金箔の水押しメノウ磨き仕上げでしたが
補彩には純金粉を使っています。
ゴールドフィンガーやアクリル等の金色の色材はありますが
純金の輝きが強い額縁には、やはり補彩にも純金が必要です。
これまた臨機応変に。
モノクロですが、下は修復前の状態。
装飾がごっそりと欠け落ちています。
クリーニング前なので金の輝きも曇っています。
クリーニング、整形後にボローニャ石膏をかけました。
オリジナルと同色のボーロを塗って、下色を入れてから
純金粉を使って色と艶を合わせます。
影や凹部分には顔料やワックスも使って古色を入れて仕上げ。
金粉は金箔とおなじようにメノウで磨けます。
(ボローニャ石膏等下地とボーロは必須です。)
どんなに似せても、本当の純金の輝きとツヤは
純金以外には出せない物なのだ・・・とつくづく思います。