diario
銀はなに色 5月26日
銀箔の水押しによる貼り方は
イタリアに留学してから修復学校の授業で学びました。
ボローニャ石膏地に魚膠で溶いたボーロを塗り箔を置く、という方法。
そして銀箔には大抵の場合、黒いボーロが使われました。
銀の白い輝きに黒い下地の深みが加わる印象です。
一方、硬く暗い印象もまたあるように感じます。
日本に帰国後しばらくは銀箔に黒ボーロを当たり前に使っていましたが
しばらくしたある日、日本の古い銀箔額縁を見た時に
赤い下地が使われている事に気付きました。(水押し油貼りに関わらず)
その時は、恐らく日本に額縁が入った時に
金箔の下地に赤ボーロが使われているのを見て、
下地=赤が定着したのだろうな、
やっぱり銀箔には黒ボーロが伝統だな!
などと思っていたのでした。
でも、それから何度も日本の古い額縁を見るにつれ、
いや待て、銀箔の下地に赤ボーロは有効ではないか?
むしろわたしは赤ボーロの銀箔の方が好きになっている事に気付きました。
日本の湿度ある空気、障子や薄いカーテン越しに入る光による違い…
というのは簡単ですが、もっと日本人の血の感覚とでも言いましょうか。
赤ボーロの方がよりしっくりくるように感じます。
日本国民に多数決を取ってみたいと思う、まぁ好みの差はあれど。
銀箔の下から感じる赤い弁柄色の暖かみ、柔らかさは
シックな黒ボーロでも爽やかな黄色ボーロでもない特別なものです。
納める作品にも影響を与える額縁、
ボーロの色を決めるにも悩ましい日々です。