diario
帆立貝のタベルナーコロ その4 3月31日
ボローニャ石膏を塗り終え、軽く磨いたあとは
金箔の下地、ボーロを塗ります。
ちなみにわたしが大学で初めて習ったとき
ボーロのことは「箔下とのこ」と教わりました。
いまこの言葉を言っても「何?なぜとのこ??」
と言われることが多いように思います・・・。
ボーロ(bolo)はイタリア語です。
さて、オリジナルのボーロについて本には
「The gold is applied over a red/orange bole…」とあります。
赤ボーロと黄色ボーロをまぜて準備することにします。
ねりねり。
ニカワ液で溶く前にしっかり赤と黄色を混ぜます。
濃いオレンジ色になったかな。
今回は魚ニカワで溶きました。
本にはボーロのニカワの種類までは書いていなかった(と思う)ので、
イタリアで一般的な魚膠溶きのボーロです。
思っていたより赤が強い色になりましたが
本の写真と見比べても近い色に仕上がったと思います。
黄色ボーロが多すぎると箔の密着や磨いた時の輝きが
赤単品より劣るような気がしますので
これ以上黄色は入れたくない・・・
ボーロが乾いたら箔を置きます。
帆立貝のタベルナーコロ その3 3月28日
ガサゴソと彫り進め、パテで修正して・・・
気になる部分はあるものの、ひとまず。
彫刻作業は終わりにしましょう。
さて次の作業は下ニカワと石膏塗りです。
この額縁はこんな風に分解されます。
そして石膏の塗り終わり。
彫刻が埋まってモッタリしないよう慎重に塗りました。
白で統一されて、頭の中にも完成予想図が見えてきました。
横からみるとこんな風に隙間が作ってあります。
オリジナルは恐らく差し込み蓋をいれるためですが
わたしはアクリルガラスを入れるか蓋を作るか迷い中。
つぎの作業は、軽く磨いてからボーロ、
そしていよいよ金箔です。
「レオナルド・ダ・ヴィンチ -天才の挑戦」展 3月24日
連休最終日に江戸東京博物館で開催中の
「レオナルド・ダ・ヴィンチ -天才の挑戦」展に行きました。
入口に着いてびっくり、チケット売り場に長蛇の列・・・むむ。
さすが連休最終日。
とにかく入場しましょう。
この展覧会は「糸巻きの聖母」と「鳥の飛翔に関する手稿」が
メインとして展示されていますが、他にデッサンがいくつか。
多くの展示作品はレオナルド作品の模写などで
(追従者をレオナルデスキと呼ぶそうです)いかに
レオナルドに影響をうけた画家が多かったか、の紹介です。
「鳥の飛翔に関する手稿」のオリジナルは
今まで見聞きしていた通りの(当たり前ですが!)
罫線のないノートに右から左への鏡文字で、間違えの痕跡なし!
インクで黒く塗りつぶす、なんてことはあり得ないのでしょうか。
でも文字列がすこしずつ斜めになっていたり、文字の大きさや密度が違ったり。
丁寧に大切に書かれているけれど人間らしい面も感じられるのでした。
ああ、だけど! メインの「糸巻きの聖母」を観るには
なんと130分も行列に並ばねばならない事態になっています。
うー、むむむ。時間と体力と両方に余裕が無い。
ということで、あきらめました。
人々の頭の向こうにある小さな作品を
じっくり眺めて、一応「観たつもり」。
この展覧会、「糸巻きの聖母」と「鳥の飛翔・・・」以外には
レオナルド本人の作品は数点の小さなデッサンがあるだけです。
額縁も残念なが小品1点以外には特筆すべきものも無く。
会場外にはこんなブースもありましたが、
穴から顔を出す勇気も持ち合わせていませんのです。
・・・うん、まぁ、「鳥の飛翔に関する手稿」が観られたし
さすがレオナルド!の美しいデッサンも見られました。
良しとしましょうよ、わたし。
駅への道すがら、桜が咲き始めていました。
今年の初桜。
釈然としない、欲求不満な気分でしたが
桜に慰められた帰り道、でした。
Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2016年3月 №2 3月21日
市が尾にある古典技法アトリエ Atelier LAPIS の生徒さんは
ご入会後もずっと長く続けて下さる方が多く
講師のわたしも大変うれしいと同時に
楽しく制作しておられる生徒さん方の熱意に励まされ、
古典技法の魅力を再確認しております。
先日、Iさんの額縁が完成しました。
Iさんももう何年続けて下さっているか・・・。
ご自身で作られたモザイクを納める額縁です。
モザイクのモチーフである8角形の星を額縁にも入れました。
ボローニャ石膏地を濃青で彩色し、端先(内側縁部分)に盛上げでレリーフ。
盛上げには水押しで、模様にはミッショーネ技法で純金箔を装飾しました。
明るい夜空を思わせるような、とても華やかな作品になりました。
モザイクの強い輝きと立体感と、負けず存在感のある額縁。
両者が競い合うように引き立てあっています。
Iさんの長い時間をかけての力作。
美しい額縁を作って下さり、ありがとうございました。
次もまたモザイクを納める額縁を制作予定のIさんです。
次の完成も楽しみにしております。
帆立貝のタベルナーコロ その2 3月17日
月曜日に引き続き。
制作中の帆立貝タベルナーコロは
まだ部分的に掘り下げたい場所、仕上げもありますが
彫刻も大詰めになって来ました。
こうして並べてみて、???
何か違うんじゃない?
・・・そうです。
くるり渦巻き部分、上下とも間違い。
そして中央の「egg-and-dart」(卵と矢のモチーフ)が
6つはいるべきところに5つだけ。数が少ないのでした。
フンギャアア・・・後の祭り。
開き直って制作を続けます。
帆立貝のタベルナーコロ その1 3月14日
タイトルが「帆立貝を食べるな!こら!」みたいですね。
タベルナーコロとはイタリア語 tabernacolo で、
祭壇型額縁、また壁龕(へきがん)を指す言葉です。
今、帆立貝モチーフの飾りの付いた祭壇型額縁を作っています。
制作の記録として、こちらでご紹介させて頂きます。
15世紀にイタリア・トスカーナ州で作られた額縁の模刻です。
オリジナルの額縁は以前ご紹介しましたイギリスの本
「ITALIAN RENAISSANCE FRAMES AT THE V&A A TECHINICAL STUDY」
に載っているもので、縦29センチ横17センチほどの小さな額縁です。
下の写真、左は本の写真で右が額縁木地。
Atelier LAPIS の生徒さんが、希望者にキットとして手作りで
木地を作って下さったのです。大変なお手間だったことでしょう。
SHIさん、ありがとうございました。
彫刻をほどこす部分にはアユースが使われています。
本にはオリジナル額縁の詳細なサイズが載っておりますので
木地も実寸で作られています。
横から見るとこんな形。
なかなかハードルの高い制作ですが、取り掛かりましょう。
まずは彫刻部分のデザインを起こします。
サイズは画集写真から割り出しています。
そして糸ノコで慎重に切ります。
入り組んだ形を切るのは難しい・・・
ひとまず彫刻の準備は整いました。
制作過程はまた追ってご報告いたします。
Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2016年3月 №1 3月10日
わたしがAtelier LAPIS の月曜日を担当しはじめたのは
忘れもしない2011年3月です。
大きな震災の直後で、しばらくは生徒さんも集まらないと思いつつ
ひっそりと始めた月曜コースですが、
徐々にご参加くださる生徒さんが増え、気づけば5年目になりました。
ISHさんは、もう4年近く続けてくださり、
ご自身で描かれた日本画に額縁をつくって展覧会に出品なさったり
最近はテンペラ画にも興味を持ってくださって、最近ようやく
模写第1号が完成しました。
SMサイズのパネルにボッティチェッリのビーナスです。
当初はテンペラ独特のハッチング描写に四苦八苦でしたが
さすが日本画で筆を持ちなれておられるので
コツをつかむとあっという間に上達!
わたしも「人はこうして技術を身に着けるのだ」と
目の当たりにした感動がありました。
オリジナルのビーナスより優しい笑顔の作品が出来上がりました。
ISHさん、完成させてくださってありがとうございました!
残念ながらこの作品を最後にISHさんは一旦退会なさることになりましたが
またご参加下さり、次の「顔シリーズ」制作、そして
ビーナスの額縁制作をご一緒できる日を楽しみにしております。
奥深い世界へご案内 3月07日
3月3日のひな祭りの日に、東京池袋で開催されました
JAWA-SHOW(TOKYO画材ショー)の一角にて
全国額縁組合連合会主催のワークショップがあり、
講師を務めさせていただきました。
ご参加くださった皆様、また額連の皆様
ありがとうございました。
満席でご参加いただけなかった方々、申し訳ございません。
お申込みをありがとうございました。
会場入り口にはこんなタイトルを貼っていただきましたが
恐縮です。
今回の内容は、手軽にちょこっと出来る額縁修理の方法を
ご紹介・・・という感じでしたが、
定員20名、皆さまお忙しい中を大変熱心に受講してくださいました。
わたしも緊張しつつ、とても貴重な経験になりました。
額連がご準備くださった新品の額縁に
カナヅチでガシガシと傷を作り、留めを外し準備をして
それぞれ作業をしていただきました。
使う道具も材料もいたって普通、お店で手軽に入手できます。
2時間、駆け足になってしまいましたが、なんとか
「手軽な修理の工程」はご説明できたかと思います。
ご参加くださった方のご参考に少しでも役立てば良いのですが。
修理と修復、可逆性を求めるか否か、またその倫理観など
もっと上手にお話すべきだったと反省中です。
そして修理の作業同様に大切な、お客様との打合せ、
また修理計画書の制作方法や写真撮影の重要性など
もっとお話しすべきこと、お話したいこともあったのですが。
また別の機会に。
それまでに経験を増やし、もっと頭の中を理論立てて整理して
説明上手になっておかねば、と思っています。
修復の世界は奥深い!
ミニアチュール絵画展のお知らせ 3月03日
昨年暮の池袋東武百貨店での「小さい小さい絵展」
に引き続き、今年も吉祥寺東急百貨店で開催される
「ミニアチュール絵画展」に出品いたします。
ハガキサイズ以下の小さな作品ばかり、40余名の作家による
日本画、油絵、水彩にテンペラ等様々な小品が並びます。
2月29日のテンペラ模写2点も出品いたします。
3月10日木曜日から16日水曜日までの一週間
お近くにお越しの際にはぜひお立ち寄りくださいませ。