diario
アラベスク?ルネッサンス? 9月28日
ルネッサンス時代にイタリア・トスカーナで作られた額縁の
代表的なスタイル「カッセッタ額縁」(cassetta 箱型額縁)を作っています。
両脇が立ち上がった形の木枠に、黒褐色や金のベースを作って
装飾模様-多くの場合は植物模様-を入れるというもの。
今回は額縁の本「LA CORNICE FIORENTINA E SENESE」から
シエナで作られた額縁デザインを参考にしました。
さて、模様を考えてトレーシングペーパーに描いたものを
木枠に写してから金で描き終わり、ようやく少し離れた場所から眺めたら
「むむ?何かが違う」
(ピントのずれた写真で失礼いたします。)
本などで見慣れてきたカッセッタ額縁と違う。
わたしが作ろうと思っていたイメージと違う。
勝手な印象ですが、どこかイスラム風?
アラベスク模様は入れていないのに不思議です。
気を取り直して脱アラベスク、目指せルネッサンス。
内側の端先を金にしました。
またわたしの勝手な印象ではありますが、
たったこれだけでアラベスクを脱したように思います。
一本の金。
入るか入らないかでこんなに印象が変わるのだ
と改めて感じたのでした。
名月と満月 9月27日
中秋の名月。
でも満月ではないのですって。
そう言われてみれば右下が欠けている?
うむ、名月かな名月かな。
遠足展覧会 ギャラリー916へ 9月24日
市が尾にある古典技法の教室 Atelier LAPIS の
月曜コースを受講されている生徒さんと一緒に
以前にもご紹介しましたギャラリー916 へ「額縁遠足」にでかけました。
いつものアトリエを離れて、珍しい額縁を見学に行く遠足です。
ギャラリー916では、写真家上田義彦さんの展覧会が
会期を延長して現在も開催中です。
許可をいただき展示額縁の写真を撮りましたのでご紹介しますが、
作品には加工をしております。見難い点をお許しください。
シンプルモダンな額縁から古典技法の額縁まで、様々なスタイルの額縁を
組み合わせて展示された広い空間は、とても居心地の良い場所です。
写真と額縁の組み合わせの可能性をひしひし感じます。
なかでも、アメリカのアーツ&クラフツ時代の額縁が見どころ。
これまた以前にご紹介しましたニューヨークにある額縁のギャラリー
「LOWY」から頂いたカタログ「A CHANGE OF TASTE」の時代です。
この日もカタログ片手に鑑賞しましたが、掲載されている額縁の
まさに実物が使われており、ちょっとした興奮でした。
1920年頃に作られた carrig-rohane の額縁です。
外側の鎖束のような編籠のような模様も素敵ですし、
内流れの部分、石膏地に縮緬のような細かい模様が
入れられているのが印象的でした。
どうやって作った地模様なのでしょうか。
繊細な模様でありながら、力強い男性的な額縁でした。
こちらもアメリカ東部で1900年代初めごろに作られた額縁。
素朴な雰囲気の彫刻に、おおらかに刻印が打たれています。
箔足は美しく、確かな技術が感じられました。
こちらはイギリス風?
バーン・ジョーンズの絵が入っていそうな雰囲気で
アーツ&クラフツ時代のスタイルです。
内側の平らな部分に木目が見えているのが特徴的。
これが磨かれた石膏地のつるりとした面が作られていたら
印象はまったく違うでしょうね。
こちらもまた、アメリカのアーツ&クラフツ時代のもの。
ギリシャ風の装飾で、アール・デコも感じます。
内流れの部分は、おそらく木地をうすく彫った上に
石膏をかけて「揺れ」のある趣をだしています。
大げさに言えば、この「揺れ」がこの額縁の命です。
ここも上の額縁同様につるりとした面が作られていたら
印象がまったく違うはず。
もしもっと古い時代だったら、きっとつるりと平らに
磨くスタイルで作られたのではないかな、と思ったりします。
アメリカのアーツ&クラフツ時代の額縁を数点観ることができましたが、
コントラストがはっきりした、男性的な額縁という印象でした。
その他、イタリアのサンソビーノ額縁(写真撮り忘れ)や
南の地方(ナポリやシチリア、もしくはスペイン?)の額縁、
シンプルながら目を引くような額縁が色々展示されていました。
そしてやはり、額縁が生き生きとしているのは
なかに納められた写真の力によるものがおおきいのです。
写真と額縁がお互いを高めあっている。
理想の額装のかたち。
ご一緒して下さった生徒の皆様、ありがとうございました。
今後も「遠足」の機会を設けたいと思っています。
今回ご参加頂けなかった皆さんも、ぜひ次の機会に。
遠足展覧会のリクエストもお待ちしております。
せめて七転八起 9月21日
準備中の屋台がありました。
たこ焼きやリンゴ飴の屋台の派手な看板にかこまれて
一味違う雰囲気の一軒は、おそらく張り子のだるま細工の屋台でしょう。
「廓然無聖(かくねんむしょう)」と「七転八起」の文字。
煩悩も執着もない、清々しい境地。
つまづいてもあきらめずに立ち上がる。
廓然無聖の境地は、わたしにはあまりにも遠くて
想像して憧れることしかできませんが、
せめて七転八起は努力しなければ、と思うのでございます。
打たれ弱くてすぐにいじけるわたしにとっては
七転八起はとても大変ですけれど
色々と考えてみなければ。
だけど、なぜこの垂れ幕文字は
七転八起は左から、廓然無聖は右から書かれているのでしょうね?
廓然無聖に「のし」がついているのもなぜ?
達磨大師がいつも毛深く描かれているのは、インド人だからかなぁ
インドの人って言ったって色々だろうにな、
じゃぁブッダも毛深かったのか?
そういえばイエス様もヒゲモジャの絵が多いなぁ。
・・・などと考えていると、すっかり日常に戻っているのでした。
われながら、やれやれ。
イタリアの小さな工房めぐり 9月17日
家族が衝動買いで持って帰ってきた本
「イタリアの小さな工房めぐり」をご紹介します。
イタリアには個人経営の手仕事工房が、今も現役で活躍しています。
こうした工房を紹介する本は沢山でていますが
また新しい本が登場し、手に取ったら最後。
我が家の本棚に加わりました。
紹介されてる工房は、イコン画工房、聖像工房といった
カソリックの国らしい工房、またはオカリナ工房(オカリナは
イタリアが発祥だとか!)やハンドメイド自転車工房
(さすがジーロ・ディ・イタリア開催の国)なども。
そしてもちろん!フィレンツェの額縁工房が登場です。
紹介されている額縁工房は、このブログでも何度か登場している
老舗額縁工房 MASELLI(マゼッリ)です。
古典技法額縁の作り方の流れが紹介もされていますし、
イタリアの人たちにとって額縁がどんな存在なのか
マゼッリ氏のお話から感じることができます。
作業風景の写真の中で、箔を切っている場面がありました。
箔床(箔台)に金箔を直接乗せず、紙を挟んだまま
ナイフを当てています。
実際の作業時に紙の上で切るとは思えませんし
おそらく説明するためのポーズと思われます。
他にもハープ工房、製本工房に鍛冶工房などなど
訊ねてみたい工房が沢山!
紹介されている工房の半分はトスカーナ州ですので、
この本を片手に気ままな旅をしたいなぁ・・・と
夢を広げています。
「イタリアの小さな工房めぐり」とんぼの本シリーズ
著者 大矢麻里
株式会社新潮社
2015年6月30日 第1刷発行
フラ・アンジェリコ 9月14日
日曜日の夜、パソコンで「フラアンジェリコ」を検索したら
びっくり。
競馬の結果がずらりとでました。
どうやらフラアンジェリコという馬が勝ったようです。
「フラアンジェリコ」だと馬
「フラ・アンジェリコ」だと画家の検索結果が一番に出ます。
馬のフラアンジェリコの馬主さん、きっと
好きな画家の名前を付けたのでしょう。
今日のレースでフラアンジェリコが勝って
天国のフラ・アンジェリコも喜んでいるかもしれません。
それにしても、フラ・アンジェリコはあまり馬の絵を描いていません。
弟子のゴッツォリの絵には沢山登場するのですが。
あまり馬には興味が無かったのでしょうか。
ナショナルギャラリー所蔵の「マギの礼拝」には馬の後ろ姿が登場しますが、
屋根のクジャクのほうがよっぽど楽しそうに描かれています。
Fra Angelico and Fra Filippo Lippi, Adoration of the Magi, c. 1440/1460
画像はwikipediaより
ギッシリでスッキリ 9月10日
ふだん、全面純金箔で装飾もフルに入った額縁の
ご注文をいただく機会はそんなにありません。
ですが、atelier LAPIS の額縁教室では
古典技法らしいクラシックな額縁制作が人気ですので
複数の技法を盛り込んで、全面を箔で覆い、
強めの古色仕上げを指導する機会が多いのです。
楽しそうな生徒さんがうらやましくて、
わたしも古典技法らしい額縁を作りたい!との欲求がムラムラでした。
仕事の合間にガサゴソと、小さな額縁を作りました。
ギッシリ装飾を詰め込んで、思う存分たたいて汚してボロボロ風味。
石膏盛り上げ装飾も角も欠けて、箔もだいぶ磨りました。
家族は「さっきまで金でピカピカだったのに!」と不満気ですが
良いのです、だってこれが作りたかったのですもの。
「the 古典技法でボロボロ風味」な額縁を作ることができてスッキリ!
フィレンツェの修業時代を思い出しつつの気分転換でした。
「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。
どうぞご覧下さい。
もしかして 9月07日
これは金木犀の香りですか?
ある日突然に、はっとします。
もしかして、秋が来たのですか?
そうです。
ようやく、待ちに待った秋のはじまりです。
お灸をすえられたい 9月03日
高校時代の現代国語の教科書で
「星々の悲しみ」を読んで以来、
なんとなく宮本輝氏の作品は読んでいます。
全作品ではないのですけれど。
「にぎやかな天地」を読んだ時は豪華本を作ってみたくなったり
新ゴボウの糠漬けが食べたくなったりしたものです。
そして先日「三十光年の星たち」を読んだおりには
頭の中はおかしな京都弁が渦巻き、お灸がしたくなったのでした。
子供の頃足に魚の目ができた時に
母がお灸をすえてくれたのを思い出しました。
足の親指の側面の魚の目に小さなモグサを乗せて、お線香で火をつけます。
まるで注射を打たれるような怖さでヒャーヒャー叫ぶ幼いわたし。
あくる日には魚の目はすっかり消えて無くなっていたのでした。
「三十光年の星たち」の登場人物はお灸をすえられて
なんとも気持ちが良さそうで羨ましくなります。
適切な場所に適切な量のモグサを置いて適切な時間にすれば
とても効果があるのでしょう。
うう~む気になります。
そういえば、なぜ我が家には当然のようにモグサがあったのかな。
最近はすでに作ってある-肌に乗せて火をつけるだけ-お灸も
市販されていますが、自分で火をつける勇気は無く・・・
「おきゅ膏Z」という小さな湿布状のものを買ってみました。
お灸と膏薬の良いとこどりのような商品です。
箱の中には肩こりや腰痛に効くツボが解説してあって
図のとおりにペタペタと親指大の膏薬を貼ります。
これがどうやらわたしには合っているようで、
ずっしりしていた肩が30分後には軽くなったのを感じられるのでした。
ザ・湿布のニオイでノスタルジックな気分になりつつも
きっと常備薬になる予感です。
「おきゅ膏Z」がこれだけ効くなら
本当のお灸の効果はどれだけ絶大なのだろう??
宮本輝さんもお灸が好きなのかな、効いているのかな、
わたしも一回してみたい!
我ながらなんと影響を受けやすいことか。
と思いつつも、お灸についてつい検索してしまう今日でした。