diario
ITALIAN RENAISSANCE FRAMES AT THE V&A A TECHINICAL STUDY 7月16日
市が尾にある額縁教室 atelier LAPIS の本棚には
筒井先生所蔵の様々な額縁に関する本があり、
生徒さんにご自由に見て頂いています。
和書あり洋書あり、内容は多岐です。
主にあるのはやはり英語とイタリア語。
額縁発祥の地と言われるイタリア、そして豊富なコレクションを持ち
研究の進む英語圏、といったところなのでしょうか。
LAPISでも額縁の歴史を見たり、技法を見たり、そして
これから作る額縁のデザインの参考にしたりと活用されています。
その中に、以前から気になっていて「いつか欲しい」と
思い続けていた本が、今回ご紹介するものです。
ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート美術館所蔵
イタリアのルネッサンス時代に作られた額縁についての内容。
「ITALIAN RENAISSANCE FRAMES AT THE V&A A TECHINICAL STUDY」
一般的な額縁の大型本は、いわば正面から撮影された額縁の写真集ですが、
この本はタイトルに「A TECHINICAL STUDY」とあるだけに
調査のデータが豊富です。デザインや技法の説明はもちろん、
木枠の材、構造、装飾に使われた絵具や石膏、ニカワの成分分析、
後年に修復されたり手を加えられた部分について、などなど。
裏面写真が見られるのは、本当に貴重です!
裏面から額縁構造が良く分かります。
グラッフィートで装飾された額縁は、顕微鏡によるクロスセクション(断面)写真も。
絵画や彫刻作品のクロスセクションは修復の現場では珍しくありませんが、
額縁で見るのは初めてです。
イギリスでの額縁に対する思いと理解の深さを感じられます。
1作品について、サイズデータ、正面写真、裏面写真、装飾部分拡大写真に
各1ページずつ、そして調査データに4ページなどと、かなり詳しく掲載されています。
面白かったのは、壊れてしまった額縁の復元予想図。
可愛らしい馬の装飾が施された額縁、変色し右上が壊れていますが
全面が赤色ボーロに純金箔が施されていたこと、また
1500年代前半に作られたことを考慮してデジタル復元された写真。
技術が進歩すると、こんな写真も見られるのですね。
そうして、額縁にこれだけ情熱をもって研究を続けている人がいることは
嬉しく、またお尻を叩かれつつ励まされる気持ちになります。
ずっと欲しい欲しいと思っていたこの本、
新古本が3分の1の価格で売られているのを発見!
とうとう手元に置くことができました。
気長に、でもこつこつと辞書を片手に読まなければ。
なにせとても面白い内容なのですから!
データ:「ITALIAN RENAISSANCE FRAMES AT THE V&A A TECHINICAL STUDY」
著者 CHRISTINE POWELL & ZOE ALLEN
Elsevier Ltd in Association with the Victoria and Albert Museum
2010年 第1刷発行