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めざせ使い切り! 7月30日

 

石膏地を磨き終わり、さて次の作業の箔置きです。

ボーロ(箔下とのこ)をニカワで溶いて準備します。

 

ボーロは作りたて、塗りたて新鮮!のほうが

箔の作業仕上がりも良い(ように思う)ので

出来る限り一度で使い切る量だけのボーロを作りたい。

(というのも、毎日箔置きをするほどの作業量が無いからですが。

作業量の多い工房では、昨日の残りに新しく足して

使っていくので使い切る必要はありません。)

目分量で作りますので、ぴったりの量ができた時は

大変に気分よく、大げさですが清々しい気持ちで

次の箔置き作業に入れるのでした。

boro

毎度「めざせ使い切り!」の心でボーロを作ります。

 

 

薔薇に呼ばれたら 7月27日

 

山の上にあった植物園には、東京ではもうとっくに

季節が終わってしまったような花々がまだ咲いているのでした。

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真夏の暑さだった東京がまぼろしのよう。

それともこの庭がまぼろし?

izu (1)

 

みずみずしい花々の庭の奥 そのまた奥にひっそりと

白い蔓薔薇の棚がありました。

花はもうおしまい。一番きれいだったころは

いかばかりだたろう?

その美しかった姿を誰か愛でてくれたかな?

茶色くなった花殻を摘み取ってくれる人もいないの?

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手前の庭の賑やかさに反して

あまり手入れも行き届いていなかった最奥の白い蔓薔薇が

小さな笑顔で「ようこそ、ようこそ!」と

言ってくれていたような気がしました。

 

 

 

 

海が似合う額縁 7月23日

 

旅先のアンティークショップで見かけた鏡入り額縁です。

8角形のシンプルな木枠に 上下には旋盤加工の装飾。

4つのまるい凸飾りも可愛らしく収まっています。

スマートで男性的な額縁 海を思い出させるような?

古い客船のスイートルームにありそうなイメージがありました。

DSC_6454

とても素敵で連れて帰りたかったけれど

お値段を見て むむむ。

 

それにしても 旋盤が欲しいです。

もとい「旋盤加工の技術が欲しい」でした。

上の額縁のような装飾も ツマミも引手も食器も

キャンドルスタンドも家具の脚も作れる・・・!

自分だけのこけしもマトリョーシカも作れるかもしれません。

でも旋盤技術も極めるには新しい人生が必要になりそうですね。

 

 

あっちもこっちも 額縁も 7月20日

 

ずいぶん前、2011年にお話した「あっちもこっちも」

テンペラ画模写でしたが、額縁制作もやっぱりあっちもこっちも。

同じデザインの額縁を並べて作るより、違うサイズ違うデザインの額縁を

同時進行で作るのは楽しいものです。

あっちの絵具が乾くのを待つ間、こっちを削って、今度はそっち。

ひとつの工程が終わったら、次の工程に入る前に一息おく時間を持つと

冷静に、それまでより客観的にその額縁を見られるような気がします。

どんどんと流れ作業にならないように。

atti2015

とは言え、飽きっぽいのは相変わらずです。

 

ITALIAN RENAISSANCE FRAMES AT THE V&A A TECHINICAL STUDY 7月16日

 

市が尾にある額縁教室 atelier LAPIS の本棚には

筒井先生所蔵の様々な額縁に関する本があり、

生徒さんにご自由に見て頂いています。

和書あり洋書あり、内容は多岐です。

主にあるのはやはり英語とイタリア語。

額縁発祥の地と言われるイタリア、そして豊富なコレクションを持ち

研究の進む英語圏、といったところなのでしょうか。

LAPISでも額縁の歴史を見たり、技法を見たり、そして

これから作る額縁のデザインの参考にしたりと活用されています。

 

その中に、以前から気になっていて「いつか欲しい」と

思い続けていた本が、今回ご紹介するものです。

ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート美術館所蔵

イタリアのルネッサンス時代に作られた額縁についての内容。

「ITALIAN RENAISSANCE FRAMES AT THE V&A  A TECHINICAL STUDY」

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一般的な額縁の大型本は、いわば正面から撮影された額縁の写真集ですが、

この本はタイトルに「A TECHINICAL STUDY」とあるだけに

調査のデータが豊富です。デザインや技法の説明はもちろん、

木枠の材、構造、装飾に使われた絵具や石膏、ニカワの成分分析、

後年に修復されたり手を加えられた部分について、などなど。

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裏面写真が見られるのは、本当に貴重です!

裏面から額縁構造が良く分かります。

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グラッフィートで装飾された額縁は、顕微鏡によるクロスセクション(断面)写真も。

絵画や彫刻作品のクロスセクションは修復の現場では珍しくありませんが、

額縁で見るのは初めてです。

イギリスでの額縁に対する思いと理解の深さを感じられます。

1作品について、サイズデータ、正面写真、裏面写真、装飾部分拡大写真に

各1ページずつ、そして調査データに4ページなどと、かなり詳しく掲載されています。

面白かったのは、壊れてしまった額縁の復元予想図。

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可愛らしい馬の装飾が施された額縁、変色し右上が壊れていますが

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全面が赤色ボーロに純金箔が施されていたこと、また

1500年代前半に作られたことを考慮してデジタル復元された写真。

技術が進歩すると、こんな写真も見られるのですね。

そうして、額縁にこれだけ情熱をもって研究を続けている人がいることは

嬉しく、またお尻を叩かれつつ励まされる気持ちになります。

 

ずっと欲しい欲しいと思っていたこの本、

新古本が3分の1の価格で売られているのを発見!

とうとう手元に置くことができました。

気長に、でもこつこつと辞書を片手に読まなければ。

なにせとても面白い内容なのですから!

 

データ:「ITALIAN RENAISSANCE FRAMES AT THE V&A  A TECHINICAL STUDY」

著者 CHRISTINE POWELL & ZOE ALLEN

Elsevier Ltd in Association with the Victoria and Albert Museum

2010年 第1刷発行

 

 

おじさんの名前が決まらない 7月13日

 

「つーとん」彫刻をほどこした額縁が完成しました。

「つーとん」とは丸と棒の典型的な連続模様に

atelier LAPIS で付けたニックネームです。

 

真鍮の薄板と太鼓鋲で装飾をしたのですが、

なかなか面白い額縁ができたかな、と思っています。

tuton-1

 

さて、完成した額縁には分類するためにも名前を付けねば。

それがなかなか決まりません。

この額縁、作っている最中にわたしは密かに

「おじさん」と呼んでいたのでした。

なんだか・・・イギリスの田舎にあるテューダー朝様式の

パブにいる、お腹の出た赤ら顔のおじさんのような。

あるいはサンチョパンサのようなイメージなのです。

いえ、テューダー朝ともドン・キホーテとも関係の無い額縁ですけれど。

 

「ojisan-1」ではさすがに気の毒なので、無難に

「tuton-1」という名前にきまりました、というお話でした。

 

* 「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。(左から3、上から4)

どうぞご覧下さい。

 

 

Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2015年7月 7月09日

 

じめじめと梅雨らしい梅雨の市が尾ですが

atelier LAPIS では今日も今日とて生徒の皆さんは

熱心に作業を進めています。

 

HAさんが精魂傾けて制作された双子の額縁が

完成を迎えました。

月曜コースに移籍なさる前、土曜コースの筒井先生のご指導で

完成した金の額縁、そして月曜コースで完成した銀の額縁です。

 

5月、すでに土曜コースで石膏磨きまで終わっていた木枠に

茶色に混色したボーロを塗りました。

ha2015-7 (2)

そして外側から順に銀箔を水押しします。

銀箔には薄い膠水を使います。

一周箔を置いたら磨き、それから次の一周、

急がば回れの精神です。

ha2015-7 (1)

そして最後の一周を終えて、根気の要る繕いもしっかりと。

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チョコレートがだんだん包まれていくみたい!と

他の生徒さんも興味津々でした。

 

そして7月。長かった箔の繕いも終えてメノウ磨きで輝いた銀箔は

つや消しラッカーで保護し、ほんの少しの汚しを付けて完成しました。

ha2015-7 (4)

ほんのりとした柔らかな銀と金。

金属的な輝きが抑えられて、上品な仕上がりになりました。

正方形なのも女性的な雰囲気に一役買っています。

 

竿を彫刻し、木枠に組み、石膏を塗り磨き箔を置いて・・・

まさにHAさん渾身の作です。

お疲れ様でした!

素晴らしい額縁を作って下さり、ありがとうございました。

 

半分現実 半分脳内回顧 7月06日

 

額縁制作の作業では、箔のメノウ磨きや石膏磨きなど

ひたすらに黙々と続ける作業があります。

刻印打ちの作業もそのひとつです。

 

作業中はラジオを付けることもありますが

あまり耳には届いていないような気がします。

わたしの心、というか意識はだいたい半分に分かれていて

半分はいま現実に行っている作業について

「このラインに沿って打つ」「強さはこの位」など考え

もう半分の意識はもっぱら古い記憶をたどっているようです。

この「脳内回顧」はわたしの作業中のくせなのか・・・分かりません。

学生時代のこと、いぜん作った額縁やお客様の反応など

次から次へ糸がつながるように記憶が蘇ります。

困ったことに、蘇る思い出は自分で選べず勝手に湧き上がりますので

もちろん嫌な記憶-たいていは失敗したことや恥ずかしかったこと-も

含まれていて、「嫌な記憶連鎖」が始まってしまうともう

どうにもこうにも眉間のシワは深くなる一方。

こうなったら脳の半分も現実の作業に引き戻すしかありません。

最近は連鎖を断ち切る方法がどうにか身についてきましたが。

kokuin

座禅修業や瞑想の練習は、この自分の「脳内回顧」も含めて

いかにして「考え事」を乗り越えるか、なのでしょうか。

無我の境地。

ううむ、わたしの境地は遠そうです。

 

 

メノウ棒新入り 7月02日

 

古典技法で欠かせないのがメノウ棒です。

箔を水押し(箔貼り方法のひとつ)した後に

このメノウ棒で磨けば、数ミクロンの薄さの箔とは思えない

深い金属的輝きが得られます。

 

普段わたしが使っているメノウ棒は、大学時代に買った

イタリア製のもの3本と、テンペラの先生手作りの1本

そしてポーセレン用の細いもの1本です。

それで十分ではあるのですが、先日東急ハンズで見かけて

つい買ってしまったメノウ棒が2本、仲間入りしました。

どちらも彫金道具売り場で見つけたものです。

menou2015-1

左の細いものは、すでに持っているポーセレン用のメノウ棒と

ほとんど同じ太さですが、しばらく前に先端を折ってしまい

登場回数が減っていたのでした。

折れた先端を研ぎなおして使っていましたが

何となく以前の使い心地は取り戻せないまま。

この新しい1本で、また思うように細い線が入れられるようになります。

 

そして右のメノウ棒は、切り出しナイフのような形をしています。

以前から「ハンズで手頃な価格のメノウ棒を売っている」ことは

見聞きしていましたが、必要が無いので手を伸ばさなかったのです。

今日、ためしに1本買ってみました。

 

menou2015-2

ナイフ形メノウ棒は昔に見かけたものより厚くなって

(以前はもっとヘラのような印象でした。)

軸とつなぐ真鍮の留め金具がしっかりしたような感じです。

これは輸入品のメノウ棒にはない形。軸は竹です。

日本のバンブーメノウ棒は一味違います。

石の部分をしっかり持って磨けば、広い面も細部も磨ける

オールマイティな1本になるかもしれません。

どちらも1500円弱で買えました。

なかなか良い買い物をした気分です。

 

店頭には数本並んでいました。

もし古典技法用にご購入を検討される方がいましたら、

よく比べてみて、厚みのあるもの選ばれるのをお勧めします。