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木村尚樹展 -降り積もる光- 6月29日

 

広尾にあるエモン・フォトギャラリーではじまった

木村尚樹さんの展覧会の、オープニングレセプションに伺いました。

kimura2015-2

今回展示されている写真は、イタリアで撮影された作品がメインだとか。

光と影のコントラストの美しい窓辺の風景が並びます。

記憶にある場所のような、でも記憶よりもっと繊細な印象。

よく知っているけれど、本当はまったく知らない場所。

心象風景に近いイメージでした。

kimura2015-1

KANESEIの額縁も8点、小品に使って頂いています。

kimura2015-3

お近くにおいでの際には、どうぞお立ち寄りください。

EMON PHOTO GALLERY

木村尚樹 「through the window -降り積もる光-」

2015.6.24(水)~7.25(土)

平日11:00~19:00 土曜11:00~18:00

日曜、月曜、祝日休廊

 

 

 

キューティクルプッシャーの使いみち 6月25日

 

最近手に入れてとても気に入っている道具があります。

石膏垂らし描きでつくるレリーフ模様装飾

(わたしは盛り上げ装飾と呼んでいます)の

アウトラインを整える作業にぴったりなのです。

nail2015 (2)

この道具 ネイル用品のお店でみつけた「キューティクルプッシャー」なるもの。

爪の甘皮を処理するステンレス製の道具とでも言いましょうか。

上の写真で 右側のスプーン状になっている部分で甘皮を押しこみ

左側の小さな部分(鈍い刃物状)で押し込んだ甘皮を削り取るようです。

この左側の小さな刃物状の部分がレリーフの石膏を削るのに最適!

いままではおそらく歯科の道具であろう 似たような道具を使っていましたが

このプッシャーはずっと優れています。

nail2015 (1)

まずグリップが太くてしっかり握れること。

そして刃物状の部分に厚みがあるので 削る時のイヤな音

-黒板をチョークで引っ掻くような 思い出すだけでぞっとする音!-

が出にくいのです。

紙やすりでちょいちょいと研いで使えば切れ味も程よくなります。

そしてそして 従来の歯科道具よりお手頃価格。

 

このプッシャーは 例えば粘土細工や模型など

細かい作業にも使えるのではないか?と思います。

男性はなかなかネイル売り場に足を踏み入れるのに戸惑うでしょうけれど

ネットなら様々なメーカーから発売されているプッシャーが選べます。

 

わたしがこのプッシャーをネイルに使う機会はありませんが

今後は手放せなくなりそうです。

 

ボッティチェリとルネサンス -フィレンツェの富と美- 6月22日

 

渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催している

「ボッティチェリとルネサンス -フィレンツェの富と美-」展を観ました。

平日の午後でしたが、予想通りに混雑していましたが、

それもそのはず、なかなか充実した展覧会でした。

 

さて、この展覧会の目玉は何と言ってもボッティチェリの作品ですが、

テンペラありフレスコあり、そして油彩との混合技法もあり、

ボッティチェリの技術の高さを感じられるのはさることながら、

それらの作品が丁寧に修復されており、修復箇所とオリジナルの見比べも

興味をそそられました。

イタリアならでは(?)の線描きによる補彩は、オリジナルと修復箇所を

近くで観れば明確に区別でき、離れてみればオリジナルと融合して邪魔をせず。

とくにフレスコの大きな画面の補彩は苦労がしのばれる個所もありました。

衣装や天使の翼などは熟練の修復師の手によるもの、そして

画面端の辺りにはまだ修業中と思われるような拙い筆跡もあって、

イタリアの修復の幅や奥深さ、そして大らかさも感じられたのでした。

 

古典技法額縁の出品もまた素晴らしいラインナップです!

ルネッサンス時代の額縁と言えば、世界に「額縁」という存在が生まれて

まだ歴史が浅い頃です。タベルナコロ形(祭壇型)額縁やトンド(円形額縁)、

また上部が半円型の額縁など、イタリアのルネッサンス時代を代表するような

スタイルの額縁を間近で見ることができました。

いま、わたしが作る額縁には故意に傷を付けたり汚したりすることもあり、

いわばルネッサンス当時に作られた額縁の雰囲気を再現しようと

努力している訳ですが、リアルに500~600年の年月を経た額縁の

金箔のかすれや汚れ、ボーロや石膏下地の経年変化を見て、

色々と感じ、考えることができました。

今後の制作に少しでも生かすことができればと思っています。

 

それにしても、いつもの愚痴ですけれど、

図録に額縁の写真も載せて頂きたいのです・・・。

無理な希望ではあるのでしょうけれど

作品のオリジナル額縁ではないかもしれませんけれど、

それでもせめて巻末の付録でも良いので

額縁写真の羅列でも良いので!

お願いしたいものです。ううむ。

・・・などと言いつつも、やはり図録は買いました。

そしてフィオリーノ金貨のチョコレート。良くできています。

money2015

ルネッサンス当時は本物の金貨かどうか歯で噛んで確かめたとか。

金貨は美味しくないでしょうけれど、金貨チョコレートは美味しい!

mony2015-2

 

会期終わり間近です。

テンペラ、額縁、修復にご興味ある方、ぜひご覧ください。

ボッティチェリとルネサンス -フィレンツェの富と美-

mainvisual

 

 

 

留め切れの美醜 6月18日

 

古典技法の額縁制作では、木地にニカワで溶いた石膏を塗り磨き

その上に箔をはったり色を塗ったりと装飾を加えます。

この石膏地というのが曲者(?)です。

水押しで箔を貼り磨くには最適の硬度であり、また

垂らし描きで作る盛り上げ装飾もこの石膏ならではです。

でも湿度や温度によって、そして木地の収縮によって

四隅の接合部分にひび割れが入ることがあります。

これは「留め切れ」と呼ばれる現象です。

木地の切断や接着に工夫をしていますが

留め切れが出来てしまうのは古典技法の宿命のようなもの。

額縁の強度や構造には全く問題ありません。

ご注文をいただく前、打ち合わせ時にお客様にはご説明し

ご理解いただけるようにしています。

tome (1)

確かに、せっかく注文して作った新しいピカピカの額縁にひび割れがあるのは

嫌に思われるお客様もいらっしゃいますし、当然です。

ですがこの留め切れ、アンティーク仕上げにするには歓迎される場合もあります。

割れ目にワックスや「ニセモノほこり」の汚しが馴染み

意図して作ったヒビで無いだけにとても自然に古い雰囲気を出します。

イタリア留学時代、お世話になっていた額縁師匠マッシモ氏に

「角が割れてしまったけれど、直したほうが良いか」と訊ねたら

「なぜ直す必要がある?自然な割れがある方がさらに綺麗だろう?」と

言われたことがありました。

留め切れが出来てしまうなら、それを生かす方向も。

美意識はさまざまです。

 

* 「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。

どうぞご覧下さい。

 

色いろいろ、模様いろいろ 6月15日

 

先日ご覧頂いた、このピンク色の額縁primavera-2 は

「works」ページ内の「classical」、最上段にある

primavera-1 額縁の色違いです。

水色のprimavera-1 は汚しをつけてアンティーク仕上げですが

ピンクのprimavera-2 は汚さずに艶消し仕上げに。

盛り上げ装飾のデザインも木地も同じですが、

色と仕上げを変えると印象も変わります。

primavera1-2

そしてひとこと「ピンク」といっても様々です。

これまた「works」ページ内の「classical」、最上段にある

pink-1 額縁は、木地も同じ、ピンクも同じですが

青味のあるprimavera-2 と黄味のあるpink-1 は

やはり違う印象が面白い。

pink1-2

 

大きな画材店やデパートに入っている額縁コーナーには

さまざまな白い額縁は見かけますが、ピンク色の額縁はあまり見ません。

KANESEIでご注文いただく額縁の色で、トップ3に入るのがピンクなのです。

そして静物でも人物でも風景でも、意外に受け入れ範囲の広い色でもあって

実は需要があるピンク額縁です。

 

ご注文下さったお客様に許可をいただき、作品を納めた状態の

primavera-2 の写真です。

写真撮影は色の表現が難しくて。練習せねば・・・。

siratama-1a

siratama-1b

 

* 「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。

どうぞご覧下さい。

 

 

 

Atelier LAPIS(アトリエ ラピス)の様子から 2015年6月 6月11日

 

とうとう東京は今年も梅雨を迎えました。

古典技法では少々作業しづらい季節になりましたが

atelier LAPIS  では皆さんいつも通りの熱心な制作が続いています。

 

月曜コースではグラッフィートに続き、流行している

つーとん」模様がありますが、TAさんの「つーとん」第1号が

嬉しく完成を迎えました。

まず木枠を彫刻します。もちろん「つーとん」模様。

TAさんの初彫刻額縁でもあります。

TA-tuton (1)

最初は迷いながら恐々だった彫刻刀も、数時間で

コツをつかんでしまわれました!

 

彫刻後にボローニャ石膏を塗って磨きます。

装飾にプラスする模様を写本を参考に思案中。

TA-tuton (2)

模様は線刻で入れました。

 

そして純金箔を水押しして、線刻部分を磨り出し。

ボーロの赤と金のハーモニー、線刻した蔦模様も可愛らしく

とても華やかな額縁が完成しました。

TA-tuton (4)

アンティーク風に汚しをいれようか?

中にどんな作品を納めようか??

楽しい思案は続いているようです。

 

ただいま atelier LAPIS では、火曜、金曜、土曜の午後コースで

生徒さんを募集しています。

古典技法の額縁制作にご興味のある方、また黄金背景テンペラ画を

描いてみたいと思われる方、どうぞご見学にいらして下さい。

atelier LAPIS

 

わたしが担当しております月曜コースは、現在満席で

キャンセル待ちをしていただいています。

新しい生徒さん募集再開の折には、またお知らせいたします。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

写真と古典技法額縁の関係 6月08日

 

友人の勧めで 竹芝にあるギャラリー916をたずねました。

写真の展示を主にするギャラリーです。

今は上田義彦さんの『A Life with Camera』という展覧会が開催されています。

 

ギャラリー916は上田義彦さんがキュレーターも務められる場所であり

また今回の展覧会は上田さんの写真家としての35年間をまとめる展覧会だとか。

 

この展覧会では 倉庫のような大変広い空間の床から天井まで

サイズも撮影時期も違う写真が並んでいます。

すべての写真が額縁に納められていて それがシンプルな額縁もあれば

アンティークの箔を使ったもの 画材店で手頃に入手できそうなものまで。

人物ポートレイトから風景や静物の ありとあらゆる写真が

これまたありとあらゆるテイストの額縁にぴたりと納まって展示され

不思議な統一感と写真のエネルギーが感じられる展覧会でした。

 

いままで古典技法の額縁 それもに金箔を使ったような

クラシカルなデザインの額縁と写真は なかなか難しいか・・・と

思っていましたが 今回の『A Life with Camera』展で覆されました。

シンプルな白木の木枠に白いマットに入れられた写真の隣に

アメリカのアーツ&クラフツ時代の金箔額縁に入った写真がさらりと並ぶ様子は

圧巻でもあり また大きな喜びと「再確認」でした。

 

アメリカのアーツ&クラフツ時代の額縁は わたしは今まで

本でしか見たことのない額縁でしたので それもまた興奮のひとつでした。

 

巨大な空間にならぶ力強い写真と それを支える様々な額縁。

ぜひご覧頂きたいお勧めの展覧会です。

 

A Life with Camera
Yoshihiko Ueda

2015.4.10 – 7.26

ギャラリー916

〒105-0022 東京都港区海岸1-14-24 鈴江第3ビル 6F

OPEN: 11:00-20:00 (平日) / 11:00-18:30 (土日、祝日)

CLOSE: 月曜日(祝日を除く)

入場料: 一般 800円、大学生/シニア(60歳以上)500円、
高校生 300円、中学生以下無料 (Gallery916及び916small)

 

写真家上田義彦『A Life with Camera』

 

 

そ、その色は・・・ 6月04日

 

毎度のことではあるのです。

でも、下色を塗っているときは我ながらぎょっとします。

この色は額縁には強烈すぎやしませんか。

siratama2

ショッキングピンクにゴールド!

 

でもこれで完成ではありません。

上色をかけて、艶消しに。

siratama1

計画通りの仕上がりになって一安心なのでした。

 

 

どちらのジェッソを使う? 6月01日

 

いま画材店で「ジェッソをください」と言うと

手渡されるのはおそらくアクリルジェッソでしょう。

これはアクリル樹脂で作られた下地材で、手軽で便利です。  

一方、古典技法でジェッソといえばウサギ膠で溶いた石膏下地

(ボローニャ石膏あるいはムードンや白亜)を指します。

またイタリアでgesso とはこのボローニャ石膏下地

または石膏そのものを指す場合がほとんどです。  

どちらも白い溶液ですし、板や麻布等に

塗り重ねて使う というのは同じです。

大きな違いは、アクリルジェッソは乾くと水に溶けないけれど

膠で溶いた古典技法のジェッソ(石膏下地)は

乾いた後も水に溶けてしまう。

やすりで表面を整えるとき、アクリルジェッソは

固くかつ粘りがあって やすりの目が詰まりやすいけれど

古典技法のジェッソはアクリルジェッソより柔らかく 

やすりがけが容易。 そして色味でしょうか。

下の写真、右の細い枠がアクリルジェッソ下地

左の装飾されている額縁が古典技法のジェッソ下地です。

gesso2015

純白のアクリルジェッソに比べて古典技法のジェッソのほうが

黄色を感じる白なのがお分かり頂けるでしょうか。

この色の違い、そして水分の吸い込みの違い

また乾燥スピードの違いなどで 

次に塗る色の発色にも違いが出ます。

わたしの印象ですけれど、アクリルジェッソのほうが

より鮮やかに発色させてくれるような気がします。  

何よりの違いはこれ、準備の手軽さです。

アクリルジェッソはお店で買えばすぐに使えますが

古典技法のジェッソは前日から膠液を作って

湯煎して石膏を入れて・・・と自ら作らなければなりませんから。  

ちなみに古典技法の箔の貼り方である水押しは

アクリルジェッソでは上手くいきません。  

KANESEIでは デザインや仕様によってどちらも使います。

どちらのジェッソも違った魅力があります。

もし現代にレオナルド・ダ・ヴィンチが生きていたら

必ずやアクリル系の新しい画材にも誰より興味をもって

精通していただろう!と思っています。