diario
無精製綿で押さえる 3月23日
古典技法の箔の貼り方はいくつかありますが
代表的なのが水押しです。
石膏地にニカワで溶いたボーロを塗り
その上に水を塗って箔を乗せる・・・というような方法です。
水の表面張力で箔を乗せ 水が引いた頃合いをみて
綿で箔をしっかり押さえる必要があります。
空気を抜きシワをつぶし ボーロと箔を密着させるのですが
その時に使うのは 薬局で売っている綿
(カットメンあるいは清浄綿などの商品名)を使います。
この綿は化粧用のコットンと違い その都度必要な大きさを
ちぎることができ 高価ではありませんから心配せず使えます。
でも本当は・・・精製されていない綿が良いとされています。
上の写真は無精製の綿 綿花から摘んでそのままのものです。
片手にふわりと乗る程度の量で綿花1~2つ分。
色は精製綿のように真っ白ではなく ベージュがかっています。
すこしだけ綿花の殻の欠片も雑じっていますが問題ありません。
水押しの箔置きで なぜ精製綿より無精製綿が良いか?
それは無精製綿なら油分が水を弾いてくれるから。
箔の下にまだ残っている水分を綿が吸ってしまう心配が減ります。
ご存知のように 箔の上に水や膠液が付くと色が変わってしまいます。
これを極力防ぐためには 油分の残っている無精製綿が良いのです。
以前見学させて頂いた老舗の工房では 古い布団を分解して
これまた古い布団綿を使っていました。
昔の布団には無精製の綿が使われていたのだそうです。
現在はこうした綿を手に入れるのも難しくなりました。
生花店でたまに綿花を売っていますので
それで精製綿と無精製綿の違いを試してみるのも良いでしょう。