diario
彫跡命 2月16日
熱海にある古い温泉ホテルで出会った額縁は
これぞ日本の雄々しい額縁の代表!というような迫力あふれる作品でした。
全体の巾は2メートルくらいあったでしょうか かなりの大きさです。
作られた時期は不明ですが 50年は経っている雰囲気でした。
斜め平面で内流れの形はまるで扁額のようです。
中に納められている木彫の虎と龍 2頭から放たれる目力は強烈でした。
額縁もそんな作品に負けず劣らずの迫力があり かつ作品とも調和しています。
角にある装飾モチーフは軍配でもない布袋さまの袋でもない・・・何でしょうか。
そこから植物(であろう)模様が続きますが いかにも日本風です。
唐草文様をモチーフにしているのでしょう。
西洋の蔦模様などと比べて あきらかに曲線に付ける強弱のアクセントが違いますから。
そしてこの額縁の一番の特徴は 何と言ってもこの彫跡の力強さででしょう。
まるで熊や虎の毛の流れのような荒々しく雄々しい彫跡がこの額縁の命。
うーむ 素晴らしい職人仕事です。
どんな人が作った額縁なのでしょうか。
おそらく名のある老舗工房の作に違いありません。
増改築を繰り返した古いホテルの 高い天井と赤い絨毯廊下には
人の気配も無くて 古い建物特有の匂いとひんやりした空気。
蛍光灯の青白い光が反射して薄ぼんやりと暗い曲がり角に
とつぜん現れた虎と龍 そしてこの額縁の存在感と言ったらもう
しばらくわたしの中では「熱海=虎と龍の額縁」という
イメージで固めてしまうに十分なものでした。