top » diario

diario

曖昧な記憶と思い込み 6月26日

 

もう終わってしまいましたけれど 先週22日の日曜まで

東京都美術館で開催されたバルテュス展に行きました。

 

バルテュスを初めて知ったのは1993年秋に

東京ステーションギャラリーで開催された展覧会でした。

特徴的な厚塗りと艶消しな画面 時間が止まったような不思議な具象画。

感動・・・というか「びっくりした」が第一印象で そして

それ以来バルテュスはわたしの頭の中にずっと存在し続ける画家になりました。

 

今回の東京都美術館の展覧会で21年ぶり(!)に改めて見たバルテュス作品ですが

やはり自分の中でも21年が過ぎていたのだと実感しました。

21年の間でわたしが経験したこと 特に修復の仕事に携わるようになったことが大きいようです。

バルテュス作品や展覧会の感想を話しだしたら終わりそうもありませんが

もっとも21年の長さを痛感したことは 自分の記憶の曖昧さです。

 

1993年に買ったカタログと今回の展覧会で買ったカタログ

そして絶版になってしまいましたが 講談社「現代美術」シリーズの「Balthus」

そのすべてに掲載されている作品に「白い服の少女」があり 比べてみました。

bal2

上から 1993年のカタログ 講談社「現代美術2 Balthus」 今回2014年のカタログ。

印刷が一番新しい2014年カタログの写真が一番実物に近いのではないかと思います。

でもわたしにとっての「白い服の少女」は「現代美術2 Balthus」の写真の

色と肌合いになっていることに気づきました。

展覧会後に実物を見た印象を思い返しても やはり変わらず・・・

 

そしてわたしの最も好きなバルテュス作品のひとつである「ランシャン」に至っては

bal1

1993年の展覧会に東京ステーションギャラリーの煉瓦の壁に展示されていたのを

観た記憶があったと思い込んでいましたが カタログを見返しても展示記録はありません。

これも講談社の「現代美術2 Balthus」に掲載されていただけでした。

 

おそらくわたしはこの「現代美術2 Balthus」を繰り返し見過ぎて

頭に刷り込んでしまったのかもしれません。

「白い服の少女」の実物を観たばかりなのに もはや自分の記憶が

本の写真によるものなのか実際に観たものなのか判断が付かない。

「ランシャン」の130×162センチの大きな絵の前に立った自分を覚えている

と思っていたけれど それも違った。

 

なんて曖昧な記憶。

そして勝手な思い込み!

 

たまたまバルテュスの作品を見比べて気づきましたが

きっと他にも長い間に刷り込んだ自覚がない思い込みは沢山あるのでしょう。

自分に自信を失いつつ

ひさしぶりに見返した「現代美術2 Balthus」にまた引き込まれた午後でした。