diario
額縁の「修復」と「修理」 3月20日
いまさら何を言っているのだ?と思われるようなことですけれど
ずっと頭にあって結論に到達しない問題があります。
額縁は「修復」か「修理」か。
額縁にかぎらず修復工房の現場では
「昔修復されたけれど新たに修復の必要がある」もあります。
特に油彩画の場合は可逆性が重要ですから
修復は永久的な処置ではなく 観察をつづけて
その都度に必要な処置をしていくというのが基本スタンスでしょう。
絵が完成した時点により近づけることが絵画修復の目的です。
オリジナルがそれだけ重要である という考えです。
それでは額縁は?
額縁には絵画作品ほど可逆性は求められません。
絵画修復のように「以前の修復処置は必要ならばすべて取り除き
オリジナルの現在の姿に限りなく近く戻す事ができる」ことよりも
「中に納まる作品をいかに守り いかに現在の持ち主の
意向に沿った状態に整えるか」が求められます。
オリジナルよりも安全性と外観を重視する考えです。
このことから 額縁は「修復」というより「修理」である
とおっしゃる方も。
可逆性に限って言えば 額縁は「修理」が近いのでしょう。
額縁としての機能回復が目的なら修理?
その「機能」に何を求めるか・・・芸術性は含まれるのでは?
額縁は道具ではないけれど芸術作品とも断言できない
なんとも微妙な世界。
個人個人の考えで左右されます。
「修復」「修理」意味の違いを少し調べてみても
はっきり言い切れない。
意見それぞれにニュアンスが違う。
「修復」と「修理」
どちらが優れているか なんてことはありません。
高価で歴史的な作家が作った時計の場合は?修理?
数年前に完了した唐招提寺の平成の大修理は?大修復?
たった一文字の違いですけれど 感覚的には違いがあります。
わたしの中では未だ額縁は「修復」か「修理」か・・・
「修復」がより近いと感じているけれど 違うかもしれない。
いやまてよ そもそも感覚で話す問題ではないのではないか?
決着がついていません。
まだ考える必要がありそうです。
「東京文化財研究所」の平成23年度報告に
朽津信明さんによる興味深い論文がありました。
「〔報告〕日本における近世以前の修理・修復の歴史について」
修理と修復の違いについて言及されています。
ご興味ある方は検索してぜひご覧ください。