diario
わたしを見て 3月31日
にぎやかなショッピングモールを歩いていたら
同行する人が「わぁ!見てあそこ!」と叫びました。
少し奥まった廊下の先がテラスになっていて
その先には真っ白な大きな花が満開でした。
こぶしの花。
学名Magnolia kobus にも「こぶし」が入っているのですね。
こぶしの木は大木が多くて 花を間近で見られる機会が無かったのですが
2階のテラスからは花が目前で大迫力。
むっちりと肉厚の花弁に触れることも出来ました。
そしてびっくりしたのはその香り。
最初に気づいたのも 風に乗って漂ってくる香りからでした。
うっとりするような豊かな香りはクチナシとも沈丁花とも違うけれど
薫り高い外国の香水そのままの花の香り(表現力が稚拙です…)なのでした。
大きな花の姿に似て香りも力強く存在を主張しています。
こぶしにあんなに訴えかける香りがあったなんて・・・
いままで知りませんでした。ああ驚いた。
その後 買い物を終えて外からあらためてこぶしの木を見に行ったのですが
行き交う人の流れや美味しそうな食べ物のにおいにかき消され
花の香りはもう感じられないのでした。
そして花を見上げる人もいない。
あの人の居ないテラスからだけ感じることができた秘密の香り?
花の満開と風向きの偶然のタイミング?
こぶしが「わたし今一番きれいな時です。こっちを見て!」と
呼んでいたに違いありません。
春はどこもかしこも花盛り。
桜と一緒にほかの花々のお花見もしたいと思います。
La nostalgia in Italia 2011 Venezia -Paradiso di frutti di mare 1- 3月27日
イタリアの郷愁 2011 ヴェネチア -シーフード天国-
イタリアはアドリア海に囲まれた半島ですから
日本同様に魚介類もとても豊富です。
わたしが留学していたフィレンツェのあるトスカーナ州は
西側が地中海に面していましたが フィレンツェは内陸にあるからか
名物料理は肉が多かった(Tボーンステーキやサラミ類)のですが
さすが海の都ヴェネチア 海の幸自慢のお店が目白押しでした。
レストランの入り口には その日おすすめの海鮮がずらりと並び
それらをどのように料理してもらうか店内で相談できます。
ブイヤベースにしても ハーブでさっと煮ても
炭火焼きにレモンとオリーブオイルでシンプル味もOK
日本風に塩焼き!もありかもしれません。
ご自慢の海鮮のディスプレーの仕方もお店それぞれ。
ついついカメラを向けてしまいました。
こちらはモダンな雰囲気のお店。
まだ午前中だったからか 品揃えは少なめです。
カニに牡蠣 ヒラメ 手前の紙包みはコウイカ?
そして奥はサケでしょうか。
ちなみにズラリ並んでいる赤いラベルのワインは “Santa Martina”
お手頃なテーブルワインのようですがトスカーナ州のワインです。
地方色の濃いイタリアで 他地方のワインを飾るとは
こちらのレストランはトスカーナ州と所縁があるのでしょうか。
なんだかそれだけで親しみがわきます。
こちらもまだ準備中かもしれませんがクラシカルな雰囲気のお店。
目を引くのは巨大なヒラメ!何という名前なのでしょうか。
そして調理方法も大変気になるところです。
それから・・・右にはイシモチのような魚とカニ
中央にロブスター! イカに牡蠣に大きなマスのようなものも。
奥の窓がステンドガラスになっているのも素敵です。
まだまだ見かけたシーフードのウィンドウディスプレーですが
こちらが最後 まさに「タイにヒラメが舞い踊り・・・」です。
おまけにこちら ガラスがありませんので道から直接です。大胆!
まるで魚屋さんのようですね。でもレストランですよ。
イカにタコに手長エビ!シャコ!ホタテも!
魚も赤いのは金目鯛?キスのような姿も見えます。
今日の漁で上がった目ぼしい魚介は勢ぞろいした感じ。
ハーブや野菜も目いっぱい飾って 赤いテントに明るいライト
この賑やかさにひかれて観光客で大盛況でした。
旅の食事は美味しさは勿論ですが ワクワクする楽しさも
大切な思い出になります。
岸田吟香・劉生・麗子 3月24日
雨の木曜日に 世田谷美術館で開催されている企画展
「岸田吟香・劉生・麗子 知られざる精神の系譜」を観ました。
岸田劉生と麗子は大変有名でありますが
劉生の父 岸田吟香は今回はじめて知りました。
幕末に実業家また文筆家として活躍したそうで
豪快でやり手 思慮深く聡明 人のつながりを大切にする・・・
とても魅力がある人物像が紹介されていました。
傍にいる人間も良い意味で感化されて人生がより良くなる
そんな人だったのではないかと思います。
こうした人物がいたのも幕末・維新の時代の特徴なのでしょうか。
今回の展覧会では もちろん劉生の作品を観ることもありますが
その額縁を観たい!というのも大きな目的でした。
日本の額縁創成期から続く工房作らしき額縁もあり 間近で観察できました。
また 「劉生型」と呼ばれる特徴のある額縁がありますが
この劉生型額縁シリーズも様々なバリエーションで展示に使われていました。
平面的なデザインに格子模様の線刻
磨り出しの金の下地には赤と黒の下地が使われています。
ひとつの額縁に2色の下地は特徴的です。
磨り出しの具合 箔足 線刻格子模様のピッチや太さなど
同じ「劉生型」額縁と言えど違う職人が手掛けたと思われたり
それぞれ観察するだけで面白く興奮するひと時でした。
絵と額縁 ふたつの展覧会を観たような充実感。
会期も終わり間近ですが お時間ある方はどうぞお出かけください。
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html (世田谷美術館 企画展)
劉生の描いた静物画の絵ハガキをお土産に買って
黒い額縁に入れてみました。
しばらく眺めてみようと思います。
額縁の「修復」と「修理」 3月20日
いまさら何を言っているのだ?と思われるようなことですけれど
ずっと頭にあって結論に到達しない問題があります。
額縁は「修復」か「修理」か。
額縁にかぎらず修復工房の現場では
「昔修復されたけれど新たに修復の必要がある」もあります。
特に油彩画の場合は可逆性が重要ですから
修復は永久的な処置ではなく 観察をつづけて
その都度に必要な処置をしていくというのが基本スタンスでしょう。
絵が完成した時点により近づけることが絵画修復の目的です。
オリジナルがそれだけ重要である という考えです。
それでは額縁は?
額縁には絵画作品ほど可逆性は求められません。
絵画修復のように「以前の修復処置は必要ならばすべて取り除き
オリジナルの現在の姿に限りなく近く戻す事ができる」ことよりも
「中に納まる作品をいかに守り いかに現在の持ち主の
意向に沿った状態に整えるか」が求められます。
オリジナルよりも安全性と外観を重視する考えです。
このことから 額縁は「修復」というより「修理」である
とおっしゃる方も。
可逆性に限って言えば 額縁は「修理」が近いのでしょう。
額縁としての機能回復が目的なら修理?
その「機能」に何を求めるか・・・芸術性は含まれるのでは?
額縁は道具ではないけれど芸術作品とも断言できない
なんとも微妙な世界。
個人個人の考えで左右されます。
「修復」「修理」意味の違いを少し調べてみても
はっきり言い切れない。
意見それぞれにニュアンスが違う。
「修復」と「修理」
どちらが優れているか なんてことはありません。
高価で歴史的な作家が作った時計の場合は?修理?
数年前に完了した唐招提寺の平成の大修理は?大修復?
たった一文字の違いですけれど 感覚的には違いがあります。
わたしの中では未だ額縁は「修復」か「修理」か・・・
「修復」がより近いと感じているけれど 違うかもしれない。
いやまてよ そもそも感覚で話す問題ではないのではないか?
決着がついていません。
まだ考える必要がありそうです。
「東京文化財研究所」の平成23年度報告に
朽津信明さんによる興味深い論文がありました。
「〔報告〕日本における近世以前の修理・修復の歴史について」
修理と修復の違いについて言及されています。
ご興味ある方は検索してぜひご覧ください。
大切にされた証 3月17日
いま修復でお預かりしている額縁は
クラシックで美しいデザインで
おそらくヨーロッパで作られたものと思われます。
今回修復ご依頼をくださったお客様の前の持ち主の時代に
修復された痕跡がありました。
角の装飾が欠けてしまって 少し色の違うクリーム状の材料で
おおまかに形を作っています。
もしかしたらプロの仕事ではないかもしれません。
だけど おそらくこの額縁と作品に愛情を持って
大切にしておられたであろう痕跡です。
それから時間か過ぎた今 その修理の部分がまた欠けて傷みが進みました。
今回の修復では この欠けた部分に(他の欠損部分にも)充填し
古い修復部分の造形も手を加え 他の既存部分を参考にして
元の形を再現します。
古い修復跡も取り除くことはせず この額縁の歴史とします。
いつかまた必ず 修復をするべき時が来ます。
時と共に重厚さや趣を増して くりかえし修復を施され
大切にされた痕跡を積み重ねていってほしいと思っています。
La nostalgia in Italia 2011 Venezia -Gondola! Gondola!- 3月13日
イタリアの郷愁 2011 ヴェネチア -ゴンドラ!ゴンドラ!-
ヴェネチアを語るにあたってゴンドラを挙げずにはいられず・・・
おのずと撮った写真の数も多くなってしまいます。
ひきつづきゴンドリエーレ達(ゴンドラ漕ぎの男たち)のお話。
サン・マルコ広場のすぐ奥にある開けた運河
フォンダメンタ・オルセオロ (fondamenta orseolo) には
出航前のゴンドラがたくさん!
そして道の脇には木製の数字版。
何番のゴンドラが碇泊中・・・などの管理用でしょうか。
ここは決まった組織のゴンドラ碇泊所のようです。
ゴンドラにも会社組織があるのか はたまた
日本の個人タクシーのようなシステムなのか 気になります。
というのも きっちりと制服のように
おなじジャケットにカンカン帽 そして短髪のゴンドリエーレばかりの乗り場と
(きっと帽子のリボンの色でも組分けされているに違いなし。
下の写真の方々 名付けて「組織ゴンドリエーレ」)
髪型もボーダーシャツもそれなりに自由なゴンドリエーレがいて
(彼らはカンカン帽も被らない場合が多い。「自由ゴンドリエーレ」)
なんだか気になって気になって仕方がないのでした。
下の写真の左のゴンドラが「自由ゴンドリエーレ」
右が「組織ゴンドリエーレ」と思われます・・・。
前回のゴンドラのお話に登場したカンカン帽を被らない
ゴンドリエーレ達も おそらく自由ゴンドリエーレでしょう。
http://www.kanesei.net/2014/02/17.html
そしてゴンドラ乗り場の近くでは 制服姿の組織ゴンドリエーレ達が
「ゴンドラ!ゴンドラ!」と旅行者に呼びかけているのでした。
呼んでいるつもりなのでしょうけれど馴れ馴れしくもなく
笑顔もなく どこか独り言のように聞こえた
彼らの「ゴンドラ!ゴンドラ!」のつぶやきが
まるで魔法の呪文のように思えて
不思議に心に残っています。
● ■ 3月10日
へんなタイトルです。
● ■ 丸 と 四角。
丸い支持体(キャンバスや紙 板)に描いた作品を入れる額縁は?
●? ■?
丸い作品は古くからあって
有名なものでは ミケランジェロの「聖家族」などでしょうか。
Tondo Doni, 1506~1508 Michelangelo Buonarroti
Galleria degli Uffizi,Firenze(画像はwikipedia より)
「聖家族」には作品の外周に合わせた円形の額縁がついています。
もちろん特注の これ以上ないフルオーダーメイド額縁。
円形の額縁は材料的にも技術的にも とても贅沢なものです。
ルネッサンス時代 富豪のパトロンや注文主がいて
街の至る所に技術が確かな職人が居た時代のもの。
最高の材料と技法を駆使することに迷いが感じられません。
さて・・・今回わたしが模写したテンペラは 丸い板に描きました。
フラ・アンジェリコの「ボスコ・アイ・フラーティの祭壇画」から
http://it.wikipedia.org/wiki/Pala_di_Bosco_ai_Frati (wikipedia イタリア)
聖母子の右側に立つ天使です。
額縁職人なら 当然合わせて丸い額縁をつくるか?
なかなか難しい問題。
今回は●に■を合わせることにしました。
正方形も安定感のある形ですので 良いでしょう・・・。
丸い木地はあと4枚作りましたので
今度は左側に立つ天使や花など描いてみようと思います。
こちらの絵と 先日ご紹介しました「最後の審判から部分」は
3月4日(火)から3月31日(月)まで 帝国ホテル本館地下1階にある
「絵画堂」併設のウィンドウで展示しております。
お近くにお越しの際は どうぞお立ち寄りくださいませ。
絵画堂 : http://www.imperial-arcade.co.jp/shop/art/kaigado.html
この子は誰? 3月06日
黄金背景のテンペラで小さな絵を模写するのは日常の楽しみで
額縁制作とは違った充実感があります。
先日完成したのは ベルリンにあるフラ・アンジェリコの作品
「最後の審判」から部分です。
http://it.wikipedia.org/wiki/Trittico_del_Giudizio_universale (wikipedia イタリア)
花輪を被り天使と手をつないで踊る 天国に召された人。
もはや翼の有無しか天使との区別はつきません。
女性か男性か・・・?
そんなことはもう天国では関係がないのかもしれません。
ただ「命」または「心」として天国に迎え入れられた人です。
大急ぎで登場 3月03日
先日 友人のブログで
「ひな人形は雨水の日(今年は2月19日)に飾る」と知って
http://www.nakatado.com/blog/2014/02/post-1511.html
大急ぎで我が家のひな人形を出しました。
なにせ年に一度 数週間しか会えない(?)お人形ですから
出来るだけ長い期間 飾りたいと思います。
本当は金屏風があれば良いのだけれど 金の額縁で代用・・・
ピアノの上はわたしの好きなものだけ並べていますが
ひな人形が登場する期間だけ 可愛らしい色がひろがります。
幼い頃は 三人官女や五人囃子がいる賑やかな段飾りや
衣装がひらひらと何重にも重なったお人形に憧れたこともありますが
大人になった今は 木目込みの凛とした立ち姿
穏やかで素直な表情のこのお人形ふたりで良かったと思っています。
ちなみに ひな人形をしまうのは「啓蟄の日」なのだそうです。
今年の啓蟄の日は3月6日ですって Aちゃん!
わたしはきっと 啓蟄の日を過ぎても出したままと思われます・・・。