diario
青紙について考える 7月05日
日本で一般的に見るほとんどの額縁の裏には
「青紙」(緑だけど!)と呼ばれる紙が全面に貼られています。
いわば仕上げのお化粧のようなもので
むき出しの木地やベニヤ板を綺麗に保護する目的と思われます。
KANESEIでも青紙の水貼りテープを使っています。
(下の写真はKANESEI額縁ではなく他社製品です)
イタリアでの額縁修業先であるマッシモ氏の工房では
木地に水性木工用塗料(ステイン等)を塗って仕上げていましたので
青紙を貼るのは日本独自の製法だと思っていたのですが
先日修復でお預かりしたイギリスの100~140年程前の額縁にも
紙が貼りこまれていました。
とはいえ額縁本体ではなく ライナーに貼ってあり
その目的は不明ですが 恐らくこれもお化粧でしょう。
元の色が分からないほど汚れ酸化した紙と接着剤で
見るも無残な状態になっていました。
ホコリとカビ 湿気の温床でもあり
納められていた作品に良い環境のはずがありません。
修復にあたり この酸化した紙と接着剤を取り除く必要があります。
削り取れる部分はすべて削り 必要最低限の水を含ませてはふき取り
最終的には 大量の埃の山と化した紙でした。
乾燥した古い木地に水分を与えるのは
大変危険な行為で細心の注意が必要です。
紙を剥がし取るだけでも費やされる作業量は少なくありません。
良かれと思って施された紙も 100年後には害でしかない・・・。
青紙の必要性と危険性を 一概に天秤にはかけられません。
日本国内で展覧会に出品したり売買の時の評価として
青紙で仕上げられていることは現状では必要なことと言えるでしょう。
すでに日本での「額縁の仕様」として定着しているからです。
でも長い目で見ると また納められている作品への影響を考えると
果たしてこの青紙の存在はどうなのだろう?
シンプルに木地のまま仕上げても良いのではないか?
今すぐに青紙を使わない仕上げにするのは
難しいかもしれませんが たとえば全面に貼らず
必要最低限に減らしたり ライナーには絶対に貼らない など
徐々に改善できればと思っています。
青紙についての一考察でした。