diario
La nostalgia in Italia 2011 Roma -Una cornice di Morandi- 5月31日
イタリアの郷愁 2011 ローマ -モランディの額縁-
システィーナ礼拝堂でミケランジェロのフレスコ画を仰ぎ観て
苦悩するラオコーン象の実物を目の当たりにした後では
衝撃(?)が強すぎて心も脳も徐々に鈍くなりがちです。
ヴァチカン美術館にある近現代美術コレクションの部屋は
見学ルートの終わり近くにあるからか 素通りされることが多いようでした。
それぞれの目当てを考えれば それも仕方がないことかもしれません。
でもわたしにとっては 人ごみから離れて静かな空間で鑑賞できるチャンス。
気持もゆったりとしたものに入れ替えられました。
そんな部屋でジョルジョ・モランディ(1890~1964)の作品に会いました。
6号程度の小品で モランディらしいグレートーンの静物画です。
大好きなモランディの作品に会えた喜びにくわえ
付けられていた額縁もまた素敵でワクワクしました。
こちらの美術館でもフラッシュを使わなければ
写真撮影が可能なようでしたので 額縁の写真をパチリ。
額縁には彫刻が施され 外側から白・ミントグリーン・黒に彩色され
イタリアの額縁らしくアンティーク風の汚し加工がされていました。
ライナーに合板のような木材が使われていることに少々驚きつつも
配色 汚しも作品とのバランスが絶妙で見惚れました。
こうした心躍る出合いは印象に強く残って
今後の額縁制作にも良い影響を与えてくれそうです。
赤い薬缶に詰まっているのは 5月28日
KANESEI作業部屋で活躍中の
真っ赤なホーローの薬缶。
数年前のアイルランド旅行で買い 日本に持ち帰りました。
赤いホーローの薬缶なんて 日本でも沢山売っているのに
小さなスーツケースに新聞紙で包んだ薬缶を詰め込んで
帰国したのには 大した理由はありません。
アイルランド製では無いかもしれませんが
それも大して問題ではないのです。
アイルランドの片田舎 町はずれにあった雑貨店は
蛍光灯も薄暗く 日用品の石鹸や玩具 不思議な飾り置物
保存食の瓶詰 日曜大工道具などあらゆるものが並び
その雑然とした棚に この真っ赤な薬缶がありました。
街やお店 店主の女性の雰囲気 そしてアイルランドの旅
すべてひっくるめた思い出が この薬缶に詰まっています。
物語ができるような・・・そんな思い出です。
額縁の作り方 11 5月24日
本日の「作り方」は金箔を使った額縁の装飾技法についてご紹介します。
これもとても古くからある技法「刻印」です。
いつも通り 石膏地に箔下トノコを塗って
水押し技法によって金箔を貼ります。
メノウで磨いた後 まだ石膏地に水分が残って
少しの柔軟性があるときに 刻印を打ちます。
石膏地に水分がありすぎると 刻印のエッジが
もったりとしてしまい 乾きすぎているとひび割れてしまう。
作業できる時間に限りがある技法ですので
朝一番に箔を貼って 午前中に磨き 昼食は後回しで
とにかく刻印を打ち終わるまで ひたすら作業を続けます。
革細工などで用いる模様のある刻印も使えますが
今日ご覧いただいている作品は 点で打っています。
(写真の作品は「atlier LAPIS」の筒井先生製作の見本板で
7㎝×7㎝ほどの大きさです。)
面を点で埋めていく 根気のいる作業ですが
金の濃淡(点を売った面は明るく 打たない面は暗く)で
表現でき 細かなデザインも入れられるのが特徴です。
La nostalgia in Italia 2011 Roma -L’albeli della strada- 5月21日
イタリアの郷愁 2011 ローマ -街路樹-
ローマのパラティーノの丘からサン・グレゴリオ通りへ
下るゆるやかな散策道にあった街路樹は
イタリア料理でかかせないオリーブでした。
黒く熟した実がたわわになっていますが
摘んだり拾ったりする人はいないらしく
落ちた実で 道がまだら模様になっています。
おりしも(?)11月はオリーブの収穫時期真っ只中。
見向きもされない完熟オリーブでしたが
イタリア人にとっては オリーブオイルや
塩漬けにされたオリーブが身近にあるので
わざわざ街中で積む必要もない・・・ということかもしれません。
これが日本だったら わたしは大喜びで拾ったことでしょう!
オリーブは松とともに常緑樹です。
ローマの暖かで明るいイメージは これら常緑樹が
もたらす雰囲気も大きいかもしれません。
甘い香りの楽しみ 5月17日
我が家の年季の入った無水鍋で煮込むのは
広島の田舎から送られてきた無農薬夏蜜柑の皮。
刻んでもみ洗いして ぐつぐつ砂糖と煮込むこと3時間で
マーマレードの出来上がりです。
夏蜜柑5つで8本の空き瓶が一杯になりました。
これは毎年この時期の楽しい仕事。
わたしが幼い頃 学校から帰宅してドアを開けると
母が煮るマーマレードの甘い香りがして
なんだかとても幸せな気分になったものでした。
今年は母に代わってわたしが初挑戦。
田舎の蜜柑畑を管理してくれている叔父叔母に感謝です。
明日の朝ごはんはマーマレードを塗ったイングリッシュマフィン。
はたして今年の出来はどうでしょうか。
楽しみなような不安なような・・・。
100年前に作られた額縁修復 5月14日
先日 Tokyo Conservation でお受けした額縁の修復が
ようやく終わりました。
明治から今も続く老舗店製作の額縁で
この額縁に納められている作品もまた大正の巨匠の傑作です。
おそらくこの額縁も大正初期に作られたと思われます。
こうした歴史的にも芸術的にも貴重な作品と額縁を
間近で見ることができるのは 修復に携わる者の
特権と言えますが また反対に大きな責任でもあります。
さてこの額縁ですが・・・実は少し不思議な額縁でした。
一般的に日本の古い額縁によく見られる構造は
木地に胡粉による下地が塗られているのですが
この額縁は木地に繊維状の物(紙?)が張り重ねてあり
まるで張り子のようになっています。
経年劣化で木地と繊維状物質の間に浮き上がりが出来てしまい
簡単に破れて穴が開きそうな不安定な状態。
今のうちに補強・接着しておかなければなりません。
なかなか難しい修復でした。
写真2枚は木地と繊維状物質が浮いて破れてしまった部分。
上写真の白い部分が充填中 下が補彩後です。
La nostalgia in Italia 2011 Roma -Sant’Ignazio- 5月10日
イタリアの郷愁 2011 ローマ -サン・イグナツィオ教会-
ローマの中心地 コルソ通りから西へパンテオンに延びる
セミナリオ通りにある サン・イグナツィオ教会です。
たまたま通りがかり 立派なファサードに惹かれて立ち寄りました。
日本のガイドブックにはあまり載っていない教会ですが
中に入ってみて驚きの迫力でした。
壁から天井までおおうフレスコ画はだまし絵になっていて
まるでこの教会の真上が天国に繋がっているかのようです。
どこまでが実在でどこからが虚構か・・・しばし悩みます。
円蓋の中に見える柱も窓も すべて絵。
この教会は1650年に完成とのこと。
当時の人々がこの教会に足を踏み入れ
天井を見上げた時の驚きはいかばかりだったか。
天国を目の当たりにしたと感じたはずです。
アンドレア・ポッツォというイエズス会修道士が描いたとか。
教会に修道士が描く・・・ 信仰の深さと純粋さの表現と言えるでしょうか。
正面祭壇も「バロック芸術そのもの」のような
ねじれた柱と天井の形。
ダイナミックでドラマチックです。
思いがけなくローマンバロックを体感できました。
Chiesa di Sant’Ignazio :
http://it.wikipedia.org/wiki/Chiesa_di_Sant’Ignazio_di_Loyola_in_Campo_Marzio
KANESEIの福の神 5月07日
KANESEI作業部屋の自慢 モッコウバラが
今年も美しい花をたくさん咲かせました。
先日まで咲いていた山吹の濃い黄色とはまた違う
軽やかな黄色の花が満開になっています。
生憎な天気が続いた今年の連休の数日間
わたしは有難いことに作業で大忙しでした。
思えば昨年の今頃 モッコウバラが満開の時も
今と同様に大忙しの日々が続いていたのでした。
モッコウバラの花はKANESEIの福の神かもしれません。
息切れしつつも窓から見えるモッコウバラに慰められ
今日もまた額縁制作に励んでいます。
テープで遊ぶ 5月03日
年がら年中 額縁のことばかりを
考えて過ごしている訳ではありませんが
やはり「額縁」「フレーム」には
耳も目も敏感になっています。
最近 模様やカラフルな色を印刷した
マスキングテープが沢山売られていますが
額縁模様のテープを見つけてしまっては
買わずにおられません。
テープに使われている紙は和紙だというのも発見のひとつ。
半透明なので 書いた文字や絵の上に
この額縁テープを貼っても可愛い仕上がりになりました。
なかなか楽しい「テープ遊び」です。