diario
額縁の作り方 10 4月26日
久しぶりの「額縁の作り方」です。
前回から続いて3回目 装飾技法について。
1回目に線刻 2回目は盛り上げ技法をご覧頂きましたが
今回は「グラッフィート」技法をご紹介します。
グラッフィート(graffito)とはイタリア語で
引っ掻き傷 錨などを指しますが 同時に
掻き絵 陰影線も意味します。
今回ご紹介する技法は 下の写真にあるように
下層に金 上層に絵具をぬり 絵具層を掻き取って
金箔層を出し コントラストで表現する方法です。
(写真の作品は「atlier LAPIS」の筒井先生製作の見本板で
7㎝×7㎝ほどの大きさです。)
石膏地をつくり 箔下トノコを塗って全面に金箔を貼り磨きます。
ここまでの作業はいつもと同じ。
つぎに金箔の全面に濃色のテンペラ絵具を塗り
箔の面をすべて覆い隠してしまいます。
絵具が乾いたら下絵を転写して いよいよ「掻き絵」作業開始です。
線を掻く道具は わたしは竹串を使います。
柔らかすぎるとテンペラ絵具層が綺麗に掻けず
固すぎると金箔層に傷をつけてしまう恐れがありますが
今のところ 竹串が一番良い様に思っています。
仕上げには必ずニスを塗って絵具層を保護してください。
全面に金箔を貼る必要があるので 中々贅沢な技法ですが
細い線をシャープに表現したい場合に向いています。
わたしもフィレンツェの修復学校を修了するときに作った
スペイン・ゴシック風額縁の装飾にこの技法を使いました。
http://www.kanesei.net/2009/09/11.html
ちなみに この「graffito」(グラッフィート・伊)という単語は
英語の「graphic」(グラフィック)につながります。
また 「grafica」(グラフィカ・伊)はグラフィックアートや印刷美術 筆跡
「grafico」(グラフィコ・伊)は図表 図式 表グラフを表します。
すべてギリシア語の「graphico’s」から派生した
ラテン語「graphicus」を基にした単語だとか。
ギリシア語からラテン語 そしてイタリア語と英語へ。
技法の歴史と言語の歴史の関係・・・面白いですね。