diario
赤富士の影を追う 7月28日
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わたしが日ごろ大変お世話になっている
絵画修復スタジオTokyoConservation の研究
「戦時下に描かれた絵 『弾痕光華門外』」が
先月の修復学会で発表されました。
今日はその内容を少しご紹介したいと思います。
タイトルにある「光華門」とは中国の南京にあった城門で
日中戦争中の1937年12月に激しい戦闘があった場所です。
作品『弾痕光華門外』は従軍画家として同行した作家によるもので
作者不詳ではありますが 当時の記録として
大変貴重な作品と言えるでしょう。
この作品の調査をする段階で撮影した赤外線写真には
不思議な影が映っていました。(心霊ではありません。)
さらに詳しく分析するためにX線撮影した写真には はっきりと富士山の姿が。
どうやらこのキャンバスに光華門風景を描く前
富士山の風景が描かれていたようなのです。
いったい誰が なぜ?
詳しくは「毎日jp」掲載「歴史・迷宮解:南京・光華門の弾痕描いた戦争画
/上 下層に朝日の富士山」
http://mainichi.jp/enta/art/news/20110727ddm014040159000c.html
そしてTokyo Conservation の研究発表「戦時下に描かれた絵画
『弾痕光華門外』 画家たちの描いた激戦のモチーフを知る」
http://www.tokyoconservation.com/research/pdf/kokamon.pdf
以上を併せてぜひご覧ください。
*写真資料は TokyoConservationのサイト よりお借りしました。
http://www.tokyoconservation.com/main.html
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Ricordo di Firenze 「フィレンツェの思い出」 7月25日
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古い写真葉書が好きで
いつの間にかいくつか集まってきました。
先日出かけた骨董市で手に入れたのは
「Ricordo di Firenze」フィレンツェの思い出
というタイトルで20枚綴りの
冊子になった葉書集でした。
撮影年月日も発売年も不明ですが
写っている人物の服装や馬車が移動手段として使われている
様子(自動車は写っていません)などから考えてみると
19世紀終わりから20世紀初め頃の撮影のようです。
ドゥオーモはもちろん シニョーリア広場やロッジア
沢山の教会 ミケランジェロ広場など観光名所に加えて
20枚目の最後の一枚には町はずれの
庶民的な通りが撮影されていました。
こうした風景を眺めて記憶をたどるのも楽しい時間です。
いつかこの葉書集を持ってフィレンツェに行き
過去と現在の変化を見比べられたら・・・と思います。
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ミケランジェロとベッカフーミ 7月21日
ルネッサンスの巨匠 ミケランジェロの代表作のひとつ
「聖家族」は円形のパネルに描かれています。
ミケランジェロ作品と確認されているタブローは3点のみで
この「聖家族」は制作当時のままの額装だそうです。
円形の作品(額縁も含めて)はルネッサンス時代に流行したとか。
「聖家族」の額縁モチーフは植物やペルラートと呼ばれる
丸をつなげた幾何学模様の他に 目を引くのはやはり
窓から乗り出しているような人物彫刻でしょうか。
この額縁のデザインはミケランジェロ本人によるそうですが
こうした頭部彫刻の入った額縁は他であまり
見かけないように思います。
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以前 「四角い額縁だけど 一度だけ頭部モチーフの
入った額縁を見たことがある」とのお話を伺いました。
ミケランジェロと同時代にシエナを拠点に活動していた
ドメニコ・ベッカフーミ(1486~1551)の作品につけられていたそうです。
彼はおそらくミケランジェロの「聖家族」を目にする機会があったのでしょう。
そしてなじみの(?)額縁職人に頭部彫刻の入った
額縁を発注したのではないでしょうか。
ベッカフーミの額縁は残念ながら見たことはありませんが
ミケランジェロの「聖家族」額縁同様 凝った額縁だろうと思っています。
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それにしても 全面に彫刻が入り金で覆われた
大変な迫力のあるこの額縁がピタリと納まる作品「聖家族」は
さすがとしか言いようがありません!
Tondo Doni 1506~1508 Michelangelo Buonarroti
Galleria degli Uffizi,Firenze,Italia
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少しの違いでも 7月18日
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額縁を彩色するのは 作業のかなり後半です。
木枠を作って石膏を塗り磨き 装飾を入れて箔を貼り・・・
そして彩色です。
ご依頼主の方とデザインをご相談する時点で
色はお伝えしていますが(ベージュとか渋い緑色など)
微妙な色の加減は実際に塗る時点で決定します。
それまでの作業時間中 額装する作品と額縁を並べて
カラーチャートで考えたり ただぼんやり眺めてみたり
そうした時間を過ごしています。
下の写真は先日完成してお届けした額縁2点です。
どちらも「ベージュ色」ですが
左の額縁は赤味のあるベージュ
右の額縁は緑を感じるベージュに仕上げています。
並べても大きな違いはありませんが
この少しの違いで 絵に合わせた時の表情が
ガラリと変わります。
額縁は「作品に一歩下がってそっと寄り添うもの」ですが
存在の意味や大きさは少なからず在るものなのです。
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森の家 7月14日
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たまに通りかかる道に
物語に登場するような佇まいの家があります。
傾いた木戸には赤いポスト
森のような生垣に囲まれた敷地内は
外から窺い知ることはできません。
どんな人が住んでいるのだろう?
おばあさん? それともうら若い美女でしょうか。
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少しずつ違う街 7月11日
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なんども繰り返してみる夢があります。
その夢の中では 長い休暇を終えて留学先の
フィレンツェへ戻るのですが いつも決まって夜です。
よく知っている街なのに 道も建物も何もかもが
現実の記憶と少しずつ違います。
そして夜のにぎやかな街路を
友人やマッシモ夫妻を探してさ迷い歩きます。
夢占いはよく知りませんが
なにかを暗示しているのか・・・気になります。
睡眠中にみる「夢」と
将来の希望の「夢」が
同じ言葉で表現されるのも不思議ですね。
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空の道 7月07日
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このままずっと歩いていけば
空を進めそうな気がしました。
水平線がかすんで 空と雲の境が曖昧な風景は
清々しいというより やさしい気持ちにさせてくれます。
直線それぞれ 7月04日
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先日ご覧いただいた線刻模様をいれた額縁は
その後 ベージュに彩色して
艶消しの金箔で仕上げました。
フリーハンドで入れましたので
ふらついていたり 間隔も揃っていませんが
定規で引いた美しい直線の並列とは
一味違う趣があると思っています。
* 「works」内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。
どうぞご覧ください。
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