diario
道具の美 11月29日
古典技法の絵画制作や額縁制作では
作家自らが道具類を作ることもあります。
手に入れ難い道具が多いということもありますが
それ以上に 自作した道具の使い心地の良さ
何より「道具作りが好き」というタイプの人が
多いように感じます。
わたしの黄金背景テンペラ画の先生である
有森正先生が作られたメノウ棒(箔を磨く道具)は
道具でありながらも 実用一辺倒ではなく
芸術品のように美しく 味や趣があります。
制作に対する情熱は作品だけではなく
道具類にも及んでいます。
道具類からも作家の個性が感じられる
使う道具までが美しい・・・
わたしの目標です。
有森正先生のHP : http://www.arimori-sei.jp/index.html
有森正個展 東日本橋で開催中(12月8日まで)
http://www11.ocn.ne.jp/~kanekoag/kaneko/2010/101122/arimori1122.html
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晩秋 葉の色 空の色 11月25日
散策で立ち寄った公園には
思いがけず美しい色が沢山ありました。
紅葉 一枚一枚の色
静かな冷たい池に写る空の色
東京の真ん中 晩秋の風景です。
紅葉も見ごろ。 お出かけ下さい。
文京区 新江戸川橋公園
http://www.city.bunkyo.lg.jp/sosiki_busyo_kouen_annai_kuritukouen_kouen_shinedogawa.html
天使の助数詞 11月22日
鳥は いちわ にわ
人は ひとり ふたり
天使は・・・?
天使の助数詞は何でしょうか。
ひとり ふたり なのでしょうね。
Angel of the Annunciation. 1437.
Tempera on panel. Galleria Nazionale dell’Umbria, Perugia, Italy.
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Raphael 8383 11月18日
今年もまた例年のように
12月の出品にむけて絵を描いています。
黄金背景の卵黄テンペラです。
テンペラにはRaphael社製の水彩細筆の
8383番を何年も愛用しています。
今日 新しい8383番の筆を下ろしました。
でもなにか 持った具合が違います。
数年前から使っている同じ8383番筆と比べたら
筆の軸がすこし細くなり 5ミリ短くなっていました。
慣れてしまえば問題は無いわけですが
たとえ直径1~2mmでも軸の太さが変わると
慣れ親しんだ8383がまったく知らない8383に
なってしまったような寂しさも有りました。
でも・・・これも時代の変化なのでしょう。
できるだけ価格を変えずに消費者へ届けるために
Raphael社が工夫してくれたのだと思っています。
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命をもらって作る 11月15日
わたしが作る額縁は木材をベースにしています。
以前は容易に入手できた種類の木材も
環境破壊の原因になることから輸入禁止になり
在庫の木材がなくなり次第 廃盤にする
予定のデザインもあります。
作る身としては残念だと思う面もありますが
樹木の命をもらって作っているのだという事実も
また強く感じます。
命ある樹木から削りだしている額縁は
せめてその木が生きたであろう長い年月と
同じだけの時間を いいえ できればもっと長く
美しい状態で使命を全うできるように作るのが
額縁職人としてのわたしの使命・・・と思っています。
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潮風とワイエス 11月11日
港の端に古い木造倉庫がありました。
長い時間を潮風にさらされて白くなって
木目が美しく浮かび上がっています。
アメリカの画家 アンドリュー・ワイエスが描いた
古い農家や草原の絵肌を思い出させました。
ノスタルジックな 静かな風景です。
乾いた木には まだ暖かな午後の空気の温もりがありました。
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output & input 11月08日
本や映画の世界へ逃げ込んで または旅に出て
現実や日常から離れてみること・・・
頻繁では困りますが たまには必要です。
製作はアウトプットであり 現実逃避はインプット
バランスも大切。
わたしにとって少し特別な食事も現実逃避です。
優雅で静かな場所で親しい人と
穏やかな時間を持って 美味しいものを食べる。
そしてまた 現実の世界に戻るスイッチを入れます。
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職人が代われば 11月04日
画家の先生によっては 先生オリジナルの
額縁デザインをお持ちなことがあります。
その場合ほとんどがいつも決まった職人が作りますので
デザイン同様に仕上がりの雰囲気も変わりません。
ですが 色々な理由で違う職人が作る場合も。
手が変われば雰囲気も仕上がりも変わります。
見本と同じように作っているつもりでも
使う金箔の色味 材料の細かな違いから
職人の呼吸のスピード 腕のストロークなどで
必ず「その職人のクセ」が出てくるものです。
そうした時 いかに見本額縁の雰囲気に
近いものに仕上げるか というのが
職人の腕の見せどころと言えるでしょうか。
言うは易し・・・
謙虚な心が大切。
得がたい経験をさせて頂くことが出来ました。
* 「works」ページ内「classical」にこちらの額縁と色違いを2点
参考品としてアップいたしました。どうぞご覧下さい。
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ソフィアの夜明け 11月01日
先日観た映画「ソフィアの夜明け」をご紹介します。
久しぶりに渋谷の小さな映画館で観た映画は
ここ何年かで観た映画の中でも指折りの
印象深い作品でした。
ブルガリアの若手監督カメン・カレフの長編第一作である
「ソフィアの夜明け」です。
ブルガリアの首都ソフィアを舞台に
若者達(とは言え主人公は38歳ですが)の
苦悩と希望をたんたんと語るストーリーです。
グールド演奏のバッハ・コンチェルト974のアダージョが
とても大切な場面(下の写真)で使われていました。
観終わった直後は不思議な既視感が強く
時間が経つとともに悲しさ 激しさ
窒息しそうな記憶 さまざま思い出し また
自分が引きずって切り離せない「青さ」のようなものを
感じさせられました。
数日経った今日も 思い出しては考えさせられる作品。
「リアルでビターな青春映画」との宣伝文句ですが
もっと重く深く でも儚い「青春の名残」のような印象です。
上映期間はまだしばらくありそうですので
もう一度だけ観に行こうかと考えています。
「ソフィアの夜明け」 第22回東京国際映画祭3冠受賞
渋谷 シアター・イメージフォーラム他全国順次公開