diario
額縁の記憶 8月30日
古い写真を整理していたら 旅の途中で寄った
美術館で撮影した写真がでてきました。
額縁の写真です。
以前にもお話しましたが フラッシュを使わなければ
撮影を許される美術館もあります。
そんなときはすかさず でもひっそりと
額縁の写真を撮り貯めています。
ですが不精なわたし どの美術館のどの作品の額縁か
記録を残しておかなかったので
今はもう 旅の思い出写真の役割になってしまいました。
美術館それぞれに所蔵作品カタログがあるのですから
所蔵額縁カタログも作って頂けたらとても嬉しいのですけれど。
めぐり逢う朝 8月26日
こちらの「diario」では わたしの印象に残った本なども
ご紹介していますが 今日は映画のお話を。
「めぐり逢う朝」という作品をご存知でしょうか。
1991年フランス製作で 主演はジェラール・ドパルデューと
ギョーム・ドパルデュー親子 他3人という
登場人物も少なく 静かに深く進んでいく内容です。
「17世紀の音楽家マラン・マレと、その師サント・コロンブの
葛藤と愛を描いた人間ドラマ。全篇に二人の代表曲が流れ
また撮影は、当時と同じ光源を使って行われた。」(紹介文より)
1993年の日本での公開当時 学生だったわたしは
師と弟子の葛藤や 死者への想いなどということより
師の娘と弟子の恋に焦点をあてて観た記憶がありますが
それから20年近く経ち 改めてこの作品を観てみると
人生の終りに差し掛かったそれぞれの時期に 何を思うのか
どうのように自分の生を終えたいか というようなことを
わたしなりに理解し考える年齢になったのだ と思います。
生死 芸術と世俗に対する考えなど
観る年齢によって 感想が大きく変わる内容と言えるでしょうか。
「言葉で語れぬことを語るのが音楽であり 死者への贈り物である」
というセリフは師であるサント・コロンブが弟子に残した言葉です。
17世紀フランスに実在した作曲家・演奏家2人の音楽と
バロック時代を再現したような光と影
印象に深く残り 何度も観たい映画のひとつです。
データ : 映画「めぐり遭う朝」
原作・脚本 パスカル・キニャール
監督 アラン・コルノー
撮影 イヴ・アンジェロ
音楽 ジョルディ・サヴァール
出演 ジャン・ピエール・マリエル (Sainte Colombe)
ジェラール・ドパルデュー (Marin Marais)
アンヌ・ブロシェ (Madeleine)
ギョーム・ドパルデュー (Marin Marais Jeune)
カロリーヌ・シホール (Madame De Sainte Colombe)
模様違いのfrido 8月23日
成城学園前のアンティークショップ attic にいらっしゃる
お客様からご注文いただいて作った額縁は
模様違いの frido です。
銀の艶消しでハガキサイズ 形は frido-1 と同じ。
でも既にお持ちの frido-1 と模様も同じではつまらない・・・
ということで 模様を変えてみることになりました。
月桂樹の葉とリボンがモチーフになっています。
孔雀の羽のような模様で銀の艶消し frido-1
箔の色を金に変えての frido-2
そして今回の模様違いで frido-3
だんだんと展開されていくのも楽しいものです。
attic : http://www.attic-antiques.net/
* 「works」ページ内「classical」にこちらの額縁をアップいたしました。
どうぞご覧下さい。
The Illustrated Book of BIRDS 8月19日
先日 親友のお父様の思い出の品として本を頂きました。
「The Illustrated Book of BIRDS」 鳥の図鑑です。
美しいイラストによる鳥の図版がメインですが
鳥の生態や分布図 野生の鳥の保護についてなども。
全文英語ですので なかなか読破はできませんが
写真とは違うイラストによる鳥の絵を眺めたり
冬になると我が家に訪れる鳥の種類を調べたり
ということでも活躍してくれそうです。
「どれでも好きな本を」とおっしゃって頂き
沢山の画集の中から選び取った本が鳥の図鑑とは
わたし自身でも意外でした。
この本をお持ちだった親友のお父様が
書店から大切に持ち帰られた様子を想像します。
ご生前の頃には 楽しく興味深く読んでいらしたのだろうか。
お父様の思い出と共にこの本を大切にしようと思います。
データ : 「The Illustrated Book of BIRDS」
著者 Dr.Jiri Felix
図版 Kvetoslav Hisek
Octopus Books Limited
1978年発行 (英語版)
緑白赤 8月16日
真っ赤なさくらんぼがのったタルトは
ピスタチオの緑色と 粉砂糖の白で
イタリアの国旗を思わせます。
イタリアの料理は季節ごと 地方ごとに特色があり
ご存知のようにとても美味しい料理です。
日本料理とどちらが美味しいか?などというのは
比べるよしも無く 愚問ですね。
でもケーキ類だけは・・・
わたしは日本のケーキが好きです。
自分の生い立ちを実感させられます。
家族の思い出に 8月12日
外国の映画を観ていると 家族の写真を
大切に飾っている様子をよく見かけます。
日本はまた違う文化ですので 頻繁に家族の写真を
眺めたりすることはあまり無いようですが
家族や先祖を大切に思う気持ちは同じです。
7月12日にご覧頂いた pink-acanthus-1 の額縁は
家族の写真をいくつか入れて インテリアとしても
日本の家庭で違和感無く楽しめるように・・・と作ったものです。
ご依頼主の曽祖父母から祖父母 ご両親
そしてご自身と奥様の写真まで 四代に渡る
ご家族の歴史を見ることが出来る額装が完成しました。
写真のトーンを統一し 人物のサイズも細かく調整して
単なる写真の寄せ集めではない額装を目指しました。
KANESEI は最後の仕上げとして額装させて頂きましたが
このご家族のお気持ちを聞き 1からすべてをまとめて
プロデュースなさったのは 有限会社ウィルウィンドさんです。
ウィルウィンドさんでは 「想いを次の世代へ繋げる」ことの
お手伝いをしています。
写真や文章 映像といった様々な形で 次ぎの世代へ
歴史と想いをつなげていく・・・
ご興味ある方はぜひ ウィルウィンドさんのHPをご覧下さい。
有限会社ウィルウィンド :
http://www.willwind.co.jp/index.html
また ブログでもKANESEIをご紹介いただきました。
willwind代表の徒然日記 :
http://plaza.rakuten.co.jp/vacancesvacances/diary/201008110000/
行く末は誰にもわからない 8月09日
古いものが好きなわたしにとって
壊れたり傷んだ美術品を修復する仕事は
とても興味深い作業です。
この作品はどこでどのような時間を過ごし
今に至るのでしょうか。
完成して作家の手を離れた瞬間から
その作品は独自の運命を辿りはじめます。
屋根裏部屋に長いあいだ捨て置かれたがゆえに
奇跡的に保存されていたような作品がある一方で
大切にされていても事故で損なわれてしまうことも。
人と同じように美術作品の行く末は 誰にもわかりません。
でもせめて わたしが修復させていただく作品には
少しでも長く 美しい姿でいて欲しいと思っています。
欠けた彫刻の一部を復元して戻し
色や艶をあわせて現存部分と違和感無くつなげる作業。
それぞれの時間を過ごし わたしの手元に
修復されるために辿り着いた作品には
お疲れ様でしたという気持ちと共に
応援と感謝を込めての作業を。
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もうひとつの空 8月05日
著名な故人の日記は出版されていて 読む機会がありますが
日記には心の奥にある「思い」をさらけ出しているはずです。
他者に読まれることを想定しない日記が出版されるのを
ご本人は草葉の陰でどう思っておられるのか。
でも読まれる目的ではないからこそ書かれているような
様々な「思い」を拝読するわたしにとっては
気持ちを律する機会であり
慰められ 心強く励まされるのです。
ふと不安になった時には 38歳という若さで夭折した
画家有元利夫の日記を読み返すことにしています。
イタリア留学中にも何度も助けられた本です。
データ : 「もうひとつの空 -日記と素描-」
著者 有元利夫
株式会社 新潮社
1986年2月22日 第1刷発行
いにしえから響く音 8月02日
推古天皇の飛鳥時代には 命の源である水を尊び
水滴のかたちが祭神具に用いられ
貴人のお守りにもなったとか。
推古鈴の音は邪悪なものを祓い
幸運を招く霊力があるそうです。
以前読んだ白洲正子の本で 彼女が身につけていたという
法隆寺伝来の推古鈴の写真を見ました。
正子の鈴はどんな音がするのでしょう。
先日 水谷醒洋氏作の推古鈴をいただきました。
現代の匠の手による推古鈴からは 澄んだ音が響きます。
いにしえの飛鳥時代から聞こえてくる音・・・。