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チェンニーノ・チェンニーニ「絵画術の書」 10月30日
この本は古典技法を勉強した方々にとっては有名すぎる本で
「いまさら・・・」と思われるかもしれませんが
とても面白い本なので こちらでもご紹介いたします。
タイトルがまるで秘密の魔法をこっそり教えるような雰囲気ですが
1300年代後半にイタリアで活動していた画家が
弟子に技法を伝える形で書き残した書物です。
おそらく絵画技法を具体的に綴った最も古い本の一つかと思います。
なにせ当時は今のようにお店で道具や材料を調達できませんから
技法はもちろんのこと 筆や顔料の作り方から載っています。
特徴的なのが その文章でしょうか。
傍にいる弟子に口伝するように 例えば壁画技法の冒頭では
「大いなる三位一体の名において お前に彩色を手がけさせるとしよう。
それについてお前が習得してゆかねばならぬ方法を教えることにする。」
といった調子なのです。
厳しいけれど手とリ足とリ丁寧に根気良く教えてくれる
生真面目な先生の姿が目に浮かぶようです。
「コップにきれいな水を8分目入れたまえ」
「指2本分の巾で」など 分量や長さは曖昧ですが
ルネッサンス夜明け前の時代 どんな道具を使っていたか
どのように材料を調達していたか
それらの創意工夫を目の当たりに出来て
当時の画家(職人)のバイタリティに感嘆する思いです。
古典技法に限らず現代に絵を描く方が読まれても
とても興味深い内容だと思います。
ぜひご一読ください。
データ : 「絵画術の書」
著者 チェンニーノ・チェンニーニ
辻 茂 編訳 石原靖男 望月一史 訳
(株)岩波書店
1991年2月25日 第1版発行