diario
花水木 10月28日
わたしがイタリアから帰国してまだ1~2年 KANESEIとして
額縁を作り始めたばかりの頃に 新進の写真作家さんから
モノクロ写真用の額縁をご注文いただきました。
納める写真は 室内にあるシンプルなテーブルの角に
ガラス瓶に活けられたハナミズキが置かれている風景作品でした。
この作品を見たとき 構図のバランスの絶妙な具合に魅入りました。
あまりに繊細で今にも高い音を立てて壊れてしまいそうな
でも時間はピタリと止まっている・・・というような際どい雰囲気。
そして不思議な暖かみもわずかに感じられる印象です。
額装が完成して納品してもずっと心に残っていました。
数年後のある日 郵便でこの「ハナミズキ」の写真が
作家さんから贈られて来た時は驚き喜びました。
添えられていたお手紙には 言葉少なく
わたしに持っていて欲しいと思うので送る とのこと。
写真は大切にマットに挟まれていたので
さっそく額縁を作りました。
シンプル過ぎず凝らず 緊張感のある額縁を・・・と
細めの枠に銀箔をほどこし 腐食させました。
いまこの「ハナミズキ」の写真は 私の作業部屋に
大切に飾っています。